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ソノノチ結成10周年イベント『100人のつながせのひび』レポート①

はじめに(ごあいさつ)

※展示会場の入り口に掲示したメンバーからの挨拶パネルより抜粋

最終日セレモニーの様子

中谷和代

振り返れば、なんでも人に言われたり勧められてやっていた私ですが、たったひとつ自分でやろうと決めたこと、それが表現をすることでした。
(中略)
何もないところから、新しい世界をつくり出すことができるかもしれない。そこから、舞台の脚本や演出をやってみたいと思うようになったのです。

それから約20年が経ちました。今の私は、新しい世界をつくるよりも、「日常をどのようにとらえるか」というところに関心があります。私にとっての美しいものや大切なものは、日々の何気ない瞬間にふと、見つかります。それらは決して主張せずそこにただあるだけなので、とてもかすかで、はかなくて、きっと目をこらしたり耳をすませないと感じることができないのです。忙しい毎日の中ではどんどん時間とともに流れて行って、すぐ見失いそうになってしまうものばかりです。じゃあ一度、立ち止まって眺めてみたらどうだろう?そうして立ち止まる機会をくれたのが2020年のコロナ禍であり、その中で生まれたランドスケープシアター(風景演劇)という作品群であり、今回の10周年イベントだったのです。
 
この数ヶ月は私にとって、そしてカンパニーにとって、とても大切な時間でした。家の中をひっくり返して過去の公演のチラシや記録データを探し、何があったのかを一生懸命思い返してみて初めて、それまで忘れていた気持ちや、当時の情熱の痕跡が浮かび上がってきたからです。特にこの数年は、舞台を発表する以外にも私たちの活動を伝えたり、ひらいたり、さらには一緒に考えたりする様々な取り組みをしていることもあり、書ききれないほどたくさんの思い出話や記憶をメンバーと共有しました。 

さて、会場のセンターに展示してあるのは、これまでソノノチの活動に関わってくださった方とクラウドファンディングで支援頂いた方100人からの手紙です。わざわざ便箋を用意して、文字を綴ってポストに入れて‥‥
きっとお手間をおかけしてしまったことと思います。LINEやメールのほうがもちろん効率はいいのですが、どうしても、お手紙が良かったんです。最近、手で文字を書いたり、手紙を送ること自体がとても少なくなったように感じます。便箋や封筒のデザインを選んだり、どんな色・模様の便箋で、何色のペンで、どんなことを書こうか考える。返ってくる手紙が楽しみでポストを一日に何度ものぞいたり、すみっこの方に小さなイラストが描いてあったり、産まれた赤ちゃんの写真が入ってたり、検索をすれば5秒でわかるけどその人のいる町の今日の天気を手紙で知ったりする、そんな感覚を、今回の企画は思い出させてくれました。一枚一枚違う封筒を眺め、文字の癖にその人の姿を感じたり、この手紙にかけてくださった時間に感謝することが、とても贅沢で嬉しかったです。忙しい合間を縫ってご協力頂いた皆さん、
本当にありがとうございました。
 
またイベントの開催にあたっては、10年間の活動に関わってくださった皆さま、クラウドファンディングにご支援いただいた皆さま、たくさんのお手紙や差し入れや応援を寄せてくださった皆さま、そしてこのプロジェクトを一緒に今日まで運んできたメンバーの皆さん。心から感謝しています。
 
そしてこれからも一緒に、旅を続けさせてください。

藤原美保

10年かぁ…。もう10年、やっと10年。いろんな思いがあります。
でも実は私はソノノチのメンバーになって9年目。2013年に東京から地元の京都に帰ってきて、いろんな劇団の作品を拝見しました。ちょうどソノノチの『3人の「さよならの絲(いと)」』が上演するとのことで、友達に誘われて観に行きました。暖かい世界観に心がゆるまった感覚が今も残っています。

その時の当日パンフレットの中に、「次回公演の出演者募集オーディション」のチラシが入っており、おっこれは受けてみようと思い参加し『8人の「さよならの絲(いと)」』に出演が決まりました。公演終了後に、和代さんから四条烏丸のファミレスに呼ばれまして、劇団員になりませんか?とお声をかけていただき、ソノノチメンバーとしての人生がスタートしました。

今、会場を見回して、今まで歩んできたものを改めて見ると、本当にいろんなことをやって来たんだなと実感します。日々起こることが新しく、時間をかけて身体にも馴染んでいったり、たまに持ちきれなくなったり、
毎日を駆け回っていたような気がします。

そして今まで続けてこれたのは、やっぱり応援してくれる皆さんがいてくださったからです。作品すごいよかったよって暖かいお声をかけていただいたり、誰かが見てくれるから、思いを届けてくださるからこそ、頑張ってこれたんだと思います。これまで一緒にクリエイションをしてきた沢山のメンバーの皆さんにも本当に感謝でいっぱいです。いっぱいいっぱい支えてもらったし、新しい発想やワクワクが生まれた瞬間は、言葉では言い表せないものが込み上げてきます。

今回も開催にあたっては本当にたくさんの方のお力によってこの日を迎えることができました。そして会場に足を運んでいただき、今この文章を読んでいただいているあなたさま、一緒にお祝いしていただき本当にありがとうございます。

皆さんにたくさんの感謝を込めて。はぐ。

渡邉裕史

10年前はKAIKAの人でした。その時は、ソノノチの人ではありませんでした。ただ、ソノノチの10年にはほぼ立ち会ってきました。

2013-2014年、ソノノチはKAIKAで公演をしていたので小屋の人として公演を見ていたり、トークゲストにKAIKAの人として呼んでいただきました。2015年も京都公演の現場にいて、愛知公演もお客さんで見に行きました。そして、2016年からはソノノチの制作をしています。この10年の間で関わりのない部分は、2015年の公演関連イベントだった秋の夜に星空を見に行く回くらい。(その時は、相当に寒くて凍傷の危機を感じたらしい)

この10年の出来事を思い返してみました。結婚、仕事が広がる、コロナ、戦争、効率性重視、オーバーツーリズム……京都の民間劇場が相次いで閉鎖になったりしたのもこの10年の間の出来事です。
できることが増えて、やりたいことも広がっていくほど、そこにかける「時間」や「お金」も大きくなって、クリエイションメンバーたちが効率性とは真逆にあるような形で「対話」を重ねながら産み出す「作品」は、産みの苦しみを味わいながら、なんとか世に出てくるんですが、それを届けたいとおもっても届け切らず、一瞬のうちに消えていく。その度に悔しい思いを味わって。

いつか問題がなくなるなんて幻想で、つねに何かと起こる問題にぶつかります。その度に、いったい何人の方にお世話になったんだろう。この10年、数えきれないくらいの方とのご縁をいただきました。作品を観に来ていただいた方、一緒にクリエイションに関わったメンバー、様々なお仕事やコミュニティで一緒になった方…直接的・間接的に、これまで数えきれないくらいのご縁に支えられて、ここまでやってこれました。ぐるっと巡りながら、ソノノチの10年と、みなさんの10年にも思いを馳せてみてください。そして、たった一人からはじまったソノノチがここまでになったということで、新たな挑戦をする方々の応援にもなれたら幸いです。

10年経って、また年明けからは次の挑戦に向けてもはじまっていきます。
ソノノチの旅路はこれからも続いていきます。

本日はお越しいただき、ありがとうございます。
ご縁いただいた全ての方に感謝を込めて。

ソノノチ結成10周年イベント『100人のつながせのひび』レポートまとめ


おかげさまでソノノチは結成10周年。まだまだやりたいことがたくさんあります。 ぜひサポート・応援をお願いします。 応援いただいた金額は、ソノノチの創作にまつわる活動に大切に使わせていただきます。