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9ヵ月間に4回救急車のお世話になりました。

こんにちは、そのはです。
助けてください。

昨年6月から今年3月までの間に、我が家は4回も救急車のお世話になりました。

救急患者は、私の実の弟。
今年度で22歳になります。

彼は病名の付かない“発作”に苦しんでいます。もしかすると同じような境遇にある人、あるいは乗り越えた人の目に留まるかもしれないので、今回記事にしようと思いました。

2018/06

初めて弟が救急病棟に運ばれたのは昨年6月の頭、日中のことでした。ちょうど私はそのとき教育実習中で、すぐに連絡を受けとることはできませんでした。夕方16時過ぎ頃、「弟が病院に運ばれました」との連絡を目にし、頭が真っ白になったのを覚えています。

急いで帰宅すると、同じく仕事を切り上げて帰っていた母親が慌ただしく動いていました。母も気が動転しているようで、ああでもないこうでもないと言いながら病院へ向かう準備を進めてぃした。病院へは父が先に向かっているとのことで、そこに合流する形で家をあとにしました。

病院に着くと、救急病棟のベッドで点滴を刺され横になる弟の姿がありました。点滴以外には大きな措置がなかったのでひとまずは安心しましたが、少し朦朧とする弟を見ては私,母,父の3人で大丈夫かと声をかけていました。

しばらくすると看護師さんから説明があり、とりあえずは「熱中症および脱水症状」ということで対処をしていただいたそうです。その診断結果にはわりと納得がいきました。

2014/04

少し遡ってお話しします。

弟は最近、特に体力がなくて困っています。
これはいわゆる「不登校」「引きこもり」「ニート」のコンボによるものです。

弟は中学,高校と私と同じ学校に進学していました。私の2つ下ですから顔を合わせる機会もありましたし、なんなら部活まで一緒でしたから、兄弟仲としてはかなり良い方だと思います。そんな弟ですが、高校1年生の終盤から欠席が増え始め、高校2年生から全く登校しなくなってしまいました。

単に「高校が合わなかった」と捉えればそれまでなのですが、きちんとした原因は分かりません。コミュ力が高くはないからハブりやイジメがあったのではないか、兄と同じ道を進みすぎて自分の人生に疑問を抱いたのではないか、予習を進めすぎて(当時"公文"に通っていて、大学入学程度の数学に触れていました)学校教育が虚しくなったのではないか……。
想像すれば留まるところを知りません。が、想像したところで真実は不明です。彼の口から直接聞いたことはないですし、彼自身がよく分かっていない可能性も大いにあると思います。

私は、不登校そのものは問題だとは考えていません。敷かれたレールに乗って時間を消耗するよりは、学校をやめて好きなことに没頭する決断のほうが有意義なことさえあります。
問題なのは、家の中でさえほとんど動かず、家族と一切口を利かなくなったことです。

我が家は決して広くはなく、個人の部屋というものがありません。これは引きこもるにあたっては大変なデメリットです。物理的に引きこもることができないために、心理的に引きこもることを選んだのでしょうか。部屋の隅に敷いた布団の領域から出ることなく、できるだけ家族と交わらない時間帯を選んでご飯を食べたりトイレやお風呂に行ったり、それ以外の時間は布団の上でひたすらゲーム端末にしがみついていました。
これが後に彼自身を苦しめることになります。

そんな引きこもり生活が2年は続きます
母親は高校の元担任や外部のカウンセラーに相談をしていたようですが、結局行き着く結論は「時間が解決してくれる」というところです。
待つしかない。我々は不即不離の距離感で待ち続けました。
するとゆっくりゆっくりとではありますが、少しずつ会話らしきもの(首を振ったり単語が返ってきたり程度)もできるようになってきました。母が寄り添い続けたことが、彼の心の殻を少なからず薄めたのではないかと思います。

あるとき「高校卒業認定を取らないか」という話になりました。この先どんな未来を歩むかは分からないが、最終学歴が中学というレッテルはデメリットとして働くよ、と。多少前時代的かもしれない部分はありますが、なにかの、なにかのキッカケになればいいなという思いはあったでしょう。
意外にも、彼は頷いてくれました。

2016/04

そうして彼は通信制の高校へ通い始めました高2相当の学年からスタートし、週に1度のスクーリングもしっかり登校し、どうやら部活にも入って過ごしていたみたいです。
実のところ私は、彼の新しい学校生活をほとんど知りません。一旦まったく口を利かなくなってしまったこと、生活時間がずれていることから、本人と直接話す機会はごくわずかでした。母親づてに少し様子を聞いていた程度です。

彼は別に、特段「学校」というものが嫌いで嫌いで仕方ないということはなかったのかもしれません。一度通い始めたらなんとなく自分のペースを掴んで、波に乗れたようです。特段の難なく(と言えば過言かもしれませんが)無事に卒業することができました。
彼は20歳になりました。

さて、卒業後の生活スタイルはまた元に戻ってしまいました。適当な時間に起きて、適当な時間に食事をとり、適当な時間に寝る。起きている時間のほとんどは、ゲーム端末やタブレットに張り付いてほとんど動かない。以前と異なるといえば、多少はコミュニケーションが取れるようになったことです。YESかNOくらいの反応は見せてくれるようになりました。

2018/06

大きく話を戻します。

食っちゃ寝の引きこもりニート生活を続けていると、人はどうなるでしょうか。
考えられるのは2つ。

 ①めちゃくちゃ太る。
 ②めちゃくちゃ痩せる。

弟の場合は後者でした。
ほとんど歩かないので脚の筋肉は落ち、運動しないのでお腹が空かずに食べる量は徐々に減っていき、結果的に身長170cmを超えているにも関わらず体重は40kg台という痩せすぎ体型になり果てました。

当然、体力面にも問題を生じます。

母も再三「少しでもいいから毎日動け」と発破をかけていましたが、どうにも彼を動かすことは叶いません。せめて、ということで「月に1度は自身の携帯料金をコンビニまで振り込みに行く」というタスクは与えられていましたが、逆に言えばそれくらいしか動いていませんでした。過言ではありません。

その結果、階段での息切れはもちろん、自転車を漕げなくなるという実害が生じました。さすがにマズいと自覚した弟は、ときたま散歩に出掛けるようになりました。コンビニまでお菓子を買いに行ってみたり、近くの公園まで行ってみたり、周囲の住宅地を一周歩いてみたり。一切動かないのに比べたら大きな成長です。

6月7日。昼下がり。
今日は隣町の本屋さんまで歩いてみよう。そんなちょっとしたモチベーションがふと湧いたのでしょう。
その往路の途中で彼は倒れました。
体力が低下している中での外出、温暖な気候、自分の体力を過信しての水分補給の怠りが不幸しました。

道端に倒れていたそうです。
たまたま通りかかったご老人が大丈夫かと声を掛けると、辛うじて「立てない、歩けない」という意思表示ができたのだと。さらにそのご老人が道行く若者を呼び止めて、救急車を呼んでくれ!と指示をしてくれました。若者の対応も迅速で、すぐに救急車が来てくれたようです。

病院では先に述べた通り、「熱中症および脱水症状」ということで対処してくれました。体力が低下していたので、一般的な成人男性よりは熱中症になりやすいだろうということで納得しました。電解質の点滴を2本と、少し吐き気があるということだったので吐き気止めの処置をいただきました。医師および看護師さんからは、以降は水分補給をしっかり行うこと、そしては室内を涼しくして安静に過ごすこと、と指導されました。

倒れてから数時間後、なんとか彼は起き上がれるようになりました。しかしそれでも目眩が辛いようです。半分抱えるような形で車まで連れて行き、なんとか帰宅することができました。

普通の熱中症であれば、次の日(長くとも2日後)には回復するという認識でした。
ところがそうじゃない。
彼は次の日も、その次の日も、1週間が経っても「目眩がする」「手足に力が入らない」「食欲がない」と言ってほとんど寝たきりの状態でした。医者の指示通り、水分補給は欠かさない、部屋は涼しくして安静に過ごす、ということを徹底していましたが、一向に良くならない。

これはもはや熱中症や脱水症状とは関係のない別の病気なのでは??母のかかりつけ医に相談したところ、「自律神経失調症」というキーワードが登場しました。なるほど。

 自律神経失調症になると、特に原因が思い当たらないのに様々な症状が現れます。

慢性的な疲労、だるさ、めまい、偏頭痛、動悸、ほてり、不眠、便秘、 下痢、微熱、耳鳴り、手足のしびれ、口やのどの不快感、頻尿、残尿感

(中略)

自律神経失調症の原因
 症状が一人一人違うように、その原因もまた一人一人違います。 自律神経のバランスが乱れるのには、いろいろな原因が複雑にからみあっていると言われています。

★生活のリズムの乱れ
 夜更かし、夜型人間、夜間勤務や、子供の頃からの不規則な生活習慣など、人体のリズムを無視した社会環境やライフスタイルが自律神経失調症を引き起こします。

★過度なストレス
 仕事などの社会的ストレス、人間関係、精神的ストレス、環境の変化など、過剰なストレスが蓄積すると自律神経失調症になりやすいです。

★ストレスに弱い体質
 子供の頃からすぐ吐く、下痢しやすい、自家中毒、環境がかわると眠れないなど、生まれつき自律神経が過敏な人もいます。また思春期や更年期、身体が弱っているときは自律神経のバランスが乱れやすくなります。

★ストレスに弱い性格
 ノーと言えない、感情処理が下手、気持ちの切り替えができない、人の評価を気にしすぎる、人と信頼関係を結ぶのが苦手、依存心が強いなど、ストレスへの抵抗力が弱い傾向のある人も自律神経失調症に陥りやすいタイプといえます。

★環境の変化
 現代の生活は適応能力が衰えやすく、社会環境の変化、人間関係や仕事などの環境の変化などへの不適応や過剰適応から自律神経失調症になる場合もあります。

引用:自律神経失調症ってどんな病気なの?

自律神経失調症であると断言されたわけではありせん。しかし、長年の引きこもり生活ということで「生活リズムの乱れ」というのは頷けますし、コミュ弱ということで「ストレスに弱い」というのも納得できなくはありません。「熱中症で病院へ運ばれた」という事実がトリガーとなって、この症状が続いているのではないか…。

問題は、自律神経失調症は明確に区分されたひとつの病気ではないということ。なにか原因不明の症状が見られたとき、その原因は”ストレス”か”自律神経の乱れ”と結論付けられることが多く、医者としての”逃げの一手”とも言えるのが自律神経失調症です(筆者の偏見です)。
事実、明確な治療法という治療法はありません。
少なくとも、今回それらしい治療法は紹介されていません。処方される薬はあくまで症状を和らげるためのものであって根本解決ではないし、「生活習慣を改善してください」の一言で一蹴されてしまいます。

じゃあ生活習慣を改善すれば良いじゃない、と言うのは簡単ですが、実際は難しいです。というのも、今回のケースでの生活習慣の乱れのメインは「運動不足」だからです。運動不足を解消するには運動するほかないですが、「目眩がする」「手足に力が入らない」「動くと吐き気がする」と言われてしまっては、運動しようにも動けません。悪循環です。
それでもさすがに全く動かないわけにはいかないので、トイレに行くときなどはハイハイでも良いから少しでも動いてもらい(体を起こし過ぎると目眩がすると言って立てません)、布団の上にいるときもできるだけ体を起こすように言って聞かせたりしました。

病院へ運ばれる前から運動不足なのに、病院から帰ってきたあとは更に運動量が減ります。
するとどうなるでしょうか。
そう、症状は悪化していきました。
6月の後半に差しかかると、これまで「目眩」「脱力感」「食欲不振」「吐き気」だった症状に、「動悸」「動いてないのに息切れ」「急な手足の冷え」などが加わり始めます。1日に数回のペースでこれらの症状を訴えては、布団の上で唸りのたうち回るという日々を繰り返していました。

そして6月30日の夜。
苦痛な呻き声を上げて脱力・動悸・息苦しさを訴えていた弟は、過呼吸のような症状を見せたため、救急車を呼びました。
2度目の搬送です。

今回も前回と同様に電解質の点滴を刺すことで回復が見られたので、一応「脱水症状」ということで処理されました。水分は摂っていたのですが、上手く吸収されていなかったのかもしれません。

2018/07

その3日後の7月2日、同様の症状で3度目の救急搬送されます。

立て続けの搬送に、さすがに病院側も何か大きな病気が隠れているのでは?と少し詳しめの検査を施してくれました。しかし結果はシロ。血液検査にもレントゲンにも特に異常は見られず、なんなら脱水症状らしい検査結果も得られなかったとのこと。

ここで疑われたのは「心因性の何かが利いている」のではないか、ということ。運動をしなくちゃという強迫観念、それに追随しない自身の身体に対するいら立ち、病院に搬送されたというトラウマ、それらをひっくるめたストレス…。当の彼は肯定こそしませんが、不安感や焦りによって症状の度合いがバラついてくることには勘づき始めているようでした。

そこで心療内科に通ってみることにしました。(この時点でまともに歩けなくなっています。立とうとすると生まれたての小鹿のようになってしまい、歩行のみならず自立もできません。2,3人がかりで担いで運ばなければならないので、通院だけで一苦労です。)鬱症状は見られないとのことでしたが、やはり彼自身の気持ちと向き合いながらゆっくり時間をかけてリハビリをしていくしかないと言われました。

初めは週1程度の頻度で通院してみようというお話しでした。最初の数回は通院することができたのですが、回を重ねるごとに「行こうとすると発作的に強い症状が出る」ということが起こるようになりました(やはり心因性か…)。通えないのなら仕方がない、と家でリハビリを行うように指示されました。

まずは身体を起こせるようにする。
椅子に座っていられるようにする。
壁に手をついて立てるようにする。
杖をついて歩けるようにする。
筋肉は落ちているし、症状はいつ出るか分からないし、これらの課題をクリアするのは長い道のりです。

このとき私は大学生4年生ですから、両親に比べれば家にいられる時間は長いです。研究室の教授もこの事情には理解を示してくれたので、できる限り家で弟のリハビリに付き合うことにしました。

リハビリの指示を出されてすぐの頃は、10分布団の上で上体を起こしているだけでもしんどくなる、という状況でした。そこでヘタれないように鞭打っていると、少しずつ少しずつ起きられる時間が増えていきました。椅子にも30秒座ったら疲れてしまっていたのも、40分程度は座っていられるようになったり、補助があれば5分程度は立てるくらいになりました。そこまで持ってくるのに4ヶ月かかりました。

残念ながら12月になると、私も卒論が忙しくなりリハビリに協力できる時間は少なくなっていきました。すると弟のモチベーションも下がってしまったようで、まためっきり動かなくなってしまいました。

4ヶ月かけて培ったリハビリの成果は、2ヶ月ほどで無に帰しました。

両親も彼のリハビリを手伝おうとはしていましたが、私ほどまとまった時間を作って付きっきりになれるはずもなく、彼の体力はみるみる衰えていきました。卒論を終えてまた時間に余裕のできた3月には、彼の体力はすっかり元通り(布団の上で10分身体を起こしていられない)になっていました。さらに、私は4月から就職ですから、「それまでになんとか状況を良くしろ」「でないと両親の負担が増える」という暗黙の圧力によってか、また彼の症状は悪化の道を辿ることになります。

2019/03

3月7日。
久々に強い症状の発作が出て、4度目の救急搬送をされます。
今回は彼自身の「救急車を呼んで…」という指示によるものでした。

病院の方ではやはりこれといった検査結果は出ず、4度目ともなると「早くお引き取りください」という空気を醸し出された気がします。

このあたりで、「入院」というキーワードが頭をよぎります。
なぜこれまで入院が念頭になかったかというと、
 ❶検査結果がシロだから
 ❷病名らしい病名が付かないので科が不明
 ❸本人が望んでいない
 ❹本人に治す意志がない
ということが挙げられますが、❸が特に重要です。
日本の法律では、入院を望まない患者を無理やり入院させることは”監禁”にあたるので犯罪となります。

気になるのは❹で、実のところ、彼自身この症状を治したいというモチベーションは無いようです。
症状は辛くないのか?布団の上から動けない生活はうんざりしないのか?と尋ねても、喃語のような空返事しか返ってきません。別にどこか行きたいとも思わないし、何をしたいでもない。布団の上から動けなかったとしても、それは倒れる前の引きこもり生活と大差がないし、ずっとゲームをやっていれば大きな症状は現れないから、これで十分。
明言こそしませんが、彼の生活を見ているとそう思っているように感じられます。

ただ、彼自身が良かったとしても、それで迷惑を被るのはその周りの人たちです。今や我々家族は、「介護」を行っているに他なりません。
脱水症状が疑われないよう常に水筒3つ程度が彼の手の届く範囲にあるようにする、まともに動けないので排泄の手伝いをする、食事は彼のところまで持って行くし、調子が悪そうなときは食べさせたりもする。いつ症状が出るか分からないので、常に誰かが家にいるようにする(両親の共働きで成り立っていた家計としては、これがかなり痛い)。夜中や早朝に「息苦しい、動悸がする…」と言って起こされることもある。
半分は愚痴みたいなものですが、事実なので仕方ありません。これでは我々家族が参ってしまします。

なので今は入院を検討していますが、実は❶❷もネックになってきます。

❶によって、大きな病院では受け入れてもらえません。救急搬送された病院が良い例で、検査結果に大した異状がなければ「さっさと帰れ」となってしまうわけです。逆に、入院の必要性があれば救急病棟から入院病棟へ即座に移されるので、案内されないということは「お前は入院するような患者じゃないよ」と言われているも同然です。

❷も大変で、「自律神経失調症」を専門で扱っている、大きくない、でも入院を受け付けられる病院、なんてものは簡単に見つかりません。心因の占める割合が大きいとして精神科に押し込むこともできなくはないのですが、どうやら紹介された病院は病室が檻状になっているようで、両親の判断のもと却下されました。

2019/05

そんなこんなで現在に至ります。

彼は今、相変わらず布団1枚分のスペースで生活しています。
「熱中症」「脱水症状」「自律神経失調症」などのキーワードは出てきましたが、結局具体的な原因や対策も分からないまま時間が過ぎていきます。本人のモチベーションも無いし、時を重ねるごとに家族も疲弊してきています。
正直、どうすれば良いかが誰も分からなくなってきました。

なにかアドバイス等あればお願いします。
励みの言葉でも大喜びです。ありがたく家族で共有させていただきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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