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オススメ映画を紹介するよ! 伊坂幸太郎のセカイ編

伊坂幸太郎はデビュー当時からよく読んでいました。最近こそ読書量の減少により追い続けていられなくなっていますが、好きな作家さんです。洒落た会話と気の利いた警句のようなセリフ、張り巡らされた伏線と時には大胆な仕掛け。ミステリの範疇にはとどまらない活躍ですよね。映画かも多数されているので、そのいくつかを紹介します。

ブレット・トレイン

いつも事件に巻き込まれてしまう世界一運の悪い殺し屋レディバグ。そんな彼が請けた新たなミッションは、東京発の超高速列車でブリーフケースを盗んで次の駅で降りるという簡単な仕事のはずだった。盗みは成功したものの、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われ、降りるタイミングを完全に見失ってしまう。列車はレディバグを乗せたまま、世界最大の犯罪組織のボス、ホワイト・デスが待ち受ける終着点・京都へ向かって加速していく。

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原作は「マリアビートル」。東北新幹線を舞台に様々な殺し屋たちが、警句じみたセリフを呟きながら暗闘する伊坂幸太郎らしいスタイリッシュなストーリー、だったと思います。まさかのハリウッド映画化を果たした「ブレット・トレイン」の舞台はキッチュな偽ジャパン偽トーキョー。これまで洋画に見られたインチキ日本観をあえてぶっ込んでくるのは好感が持てます。概ね原作を踏襲した物語ですが、後半は結構無茶苦茶(褒め言葉)。ハリウッド映画化された意味はその辺りにあるのだと思います。

日本からは真田広之が主要キャストで堂々の参戦。映画館で鑑賞したのですが、日本仕様で真田広之のセリフには字幕がなかったような。聞き取りづらいところもあったので全部字幕ありでも良かったかな。他に「THE BOYS」でお馴染みの福原かれんがチョイ役で登場。アクションもできる人なのでもっと活躍してほしかったな。

アヒルと鴨のコインロッカー

大学入学のため仙台に引越してきた椎名は、隣人の河崎から奇妙な計画を持ちかけられる。同じアパートで暮らす引きこもりの留学生ドルジに広辞苑を贈るため、書店を襲撃しようというのだ。椎名は誘いを断りきれず本屋襲撃を手伝うハメになるが、この計画の裏には河崎とドルジ、そしてドルジの彼女で河崎の元恋人・琴美をめぐる切ない物語が隠されていた。

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伊坂幸太郎作品って、洒落たセリフや緻密な伏線が特徴ですが、時として大仕掛けをサラッと入れてくるのも魅力です。本作もまさにそんな感じ(ほぼネタバレ)で、映像化無理でしょって思っていました。結果から言うと、そこは逃げることはせず、無難にクリアしていました。ドンデン返し的に使うのではなく、中盤でネタは明かされます。またそこまでの、「いったいどんな話なんだ?」というわけのわからなさも魅力です。

監督は中村義洋。この後紹介する「フィッシュストーリー」「ポテチ」でも(日本版「ゴールデンスランバー」も)、仙台を舞台に伊坂幸太郎作品を映画化しています。また、濱田岳を主要キャストとして起用しているのも共通していて、相性の良さが感じられます。

前半の割とお気楽な感じから、後半瑛太のパートになると話は重くなっていきます。かと言ってラストの印象は爽やかで悪くないです。ボブ・ディランの「風に吹かれて」脳内リピートすること間違い無しです。

フィッシュストーリー

1975年、早すぎたパンクバンド「逆鱗」は世間に理解されぬまま、最後に「FISH STORY」という曲を残して解散した。1982年、2009年と時は流れて2012年、彗星激突の危機に見舞われた地球を救った陰には、「FISH STORY」の存在があった……。

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この映画も冒頭から「何を見せられているんだ」ってなります。彗星衝突まで後わずかな東京のレコード屋でスタートしますが、濱田岳が主役のパートや、「逆鱗」がメインのパートなどが順に登場し、どうストーリーが収束するのか全く予想がつきません。中でも多部ちゃんこと多部未華子が高校生役のシージャックパートがコメディタッチで面白いです。っていうかやっぱり多部ちゃん可愛いです。彗星衝突からどうやって救われるのか、それは如何にも小説的であり映画的ご都合主義ではありますが、そんなこともあっていいかもと思わせてくれます。

因みに冒頭のレコード屋、先日偶然見た「月の満ち欠け」でも重要な舞台となっていました。雰囲気もいい行ってみたいロケ地でしたね。

アイネクライネナハトムジーク

仙台駅前で街頭アンケートを集めていた会社員の佐藤は、ふとしたきっかけでアンケートに応えてくれた女性・紗季と出会い、付き合うようになる。そして10年後、佐藤は意を決して紗季にプロポーズするが……。佐藤と紗季を中心に、美人の同級生・由美と結婚し幸せな家庭を築いている佐藤の親友・一真や、妻子に逃げられて途方にくれる佐藤の上司・藤間、由美の友人で声しか知らない男に恋する美容師の美奈子など周囲の人々を交えながら、不器用でも愛すべき人々のめぐり合いの連鎖を10年の歳月にわたって描き出す。

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伊坂幸太郎原作にして、今泉力哉の監督作品。正直2人の個性は合うのかなあ?という疑問もありましたが、楽しめる群像劇となっていました。主役はまたしても多部ちゃんこと多部未華子と、今は亡き三浦春馬。あんまり彼の作品見たことがなかったので新鮮でした。恒松祐里、祷キララなど若手の注目株や、貫地谷しほり、矢本悠馬、藤原季節など、出演時間は短いものの重要な役どころで多くの役者さんを見られるのも群像劇のいいところ。仙台が舞台ということで、サンドウィッチマンがボクシングのセコンドとして出てくるのも一興です。あまり内容について触れていませんが、自分の初見時のツイートでは、

人と人とのつながりや、後押し、ちょっと勇気を出すこと、その大切さ。

自分のTwitter

と書いていました。そのあたりが伊坂幸太郎と今泉力哉の共通点なのでしょう。

ポテチ

同じ年、同じ日、同じ街で生まれたプロ野球のスター選手・尾崎と、空き巣を生業とする凡人の今村が運命に翻ろうされながらも、家族や恋人を巻き込んで目に見えない強い絆によってつながれていく姿を描く。

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主演はまたしても濱田岳。伊坂幸太郎作品に登場しがちな巻き込まれ型の登場人物として、濱田岳ははまり役なのかもしれません。原作は「フィッシュストーリー」に収録された短編小説。映画のサイズも1時間ちょっとの短めサイズ。でもだからこそまとまっていると思います。東日本大震災直後の夏に撮影されたとか。

御多分に洩れず冒頭からわけのわからない会話だったり、つながりの見えないシーンが連続します。空き巣とプロ野球選手がいったいどう繋がるというのか。勿論ラストに向けて全ての伏線が回収されていきます。最近伏線回収するのが映画やドラマで流行っていますが、伊坂幸太郎作品の伏線回収は昔から神レベル。ポテチというタイトルすらわかってみれば泣けるアイテムです。

濱田岳の彼女役として若き木村文乃がいい感じで登場するし、もっと若い松岡茉優も今じゃ考えられない役です。さらに今は亡き竹内結子も通行人で顔を見せています。

ゴールデンスランバー

強盗から人気アイドル歌手を救い、一躍国民的ヒーローになった誠実な宅配ドライバーのゴヌは、久々に連絡があった旧友ムヨルと再会するが、その時、目の前で爆弾テロが発生。次期大統領候補が暗殺されてしまう。さらにムヨルが「お前を暗殺犯に仕立てるのが組織の狙いだ」との言葉を残して自爆。ムヨルの言葉通り、ゴヌは暗殺犯として警察から追われる身となるが……。

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最後はコチラ。韓国映画です。本家「ゴールデンスランバー」は堺雅人主演で既に映画化されていて、どこかで見た記憶があります。韓国版は概ね原作や日本版を踏襲しているものの、登場人物や終盤の展開が改変されているそうです。権力と敵対してしまった一個人の無力さと、それを乗り越えるのはやっぱり人との繋がりなんだという伊坂幸太郎のメッセージはしっかり残っていたと思います。

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