オススメ映画を紹介するよ! 伊坂幸太郎のセカイ編
伊坂幸太郎はデビュー当時からよく読んでいました。最近こそ読書量の減少により追い続けていられなくなっていますが、好きな作家さんです。洒落た会話と気の利いた警句のようなセリフ、張り巡らされた伏線と時には大胆な仕掛け。ミステリの範疇にはとどまらない活躍ですよね。映画かも多数されているので、そのいくつかを紹介します。
ブレット・トレイン
原作は「マリアビートル」。東北新幹線を舞台に様々な殺し屋たちが、警句じみたセリフを呟きながら暗闘する伊坂幸太郎らしいスタイリッシュなストーリー、だったと思います。まさかのハリウッド映画化を果たした「ブレット・トレイン」の舞台はキッチュな偽ジャパン偽トーキョー。これまで洋画に見られたインチキ日本観をあえてぶっ込んでくるのは好感が持てます。概ね原作を踏襲した物語ですが、後半は結構無茶苦茶(褒め言葉)。ハリウッド映画化された意味はその辺りにあるのだと思います。
日本からは真田広之が主要キャストで堂々の参戦。映画館で鑑賞したのですが、日本仕様で真田広之のセリフには字幕がなかったような。聞き取りづらいところもあったので全部字幕ありでも良かったかな。他に「THE BOYS」でお馴染みの福原かれんがチョイ役で登場。アクションもできる人なのでもっと活躍してほしかったな。
アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂幸太郎作品って、洒落たセリフや緻密な伏線が特徴ですが、時として大仕掛けをサラッと入れてくるのも魅力です。本作もまさにそんな感じ(ほぼネタバレ)で、映像化無理でしょって思っていました。結果から言うと、そこは逃げることはせず、無難にクリアしていました。ドンデン返し的に使うのではなく、中盤でネタは明かされます。またそこまでの、「いったいどんな話なんだ?」というわけのわからなさも魅力です。
監督は中村義洋。この後紹介する「フィッシュストーリー」「ポテチ」でも(日本版「ゴールデンスランバー」も)、仙台を舞台に伊坂幸太郎作品を映画化しています。また、濱田岳を主要キャストとして起用しているのも共通していて、相性の良さが感じられます。
前半の割とお気楽な感じから、後半瑛太のパートになると話は重くなっていきます。かと言ってラストの印象は爽やかで悪くないです。ボブ・ディランの「風に吹かれて」脳内リピートすること間違い無しです。
フィッシュストーリー
この映画も冒頭から「何を見せられているんだ」ってなります。彗星衝突まで後わずかな東京のレコード屋でスタートしますが、濱田岳が主役のパートや、「逆鱗」がメインのパートなどが順に登場し、どうストーリーが収束するのか全く予想がつきません。中でも多部ちゃんこと多部未華子が高校生役のシージャックパートがコメディタッチで面白いです。っていうかやっぱり多部ちゃん可愛いです。彗星衝突からどうやって救われるのか、それは如何にも小説的であり映画的ご都合主義ではありますが、そんなこともあっていいかもと思わせてくれます。
因みに冒頭のレコード屋、先日偶然見た「月の満ち欠け」でも重要な舞台となっていました。雰囲気もいい行ってみたいロケ地でしたね。
アイネクライネナハトムジーク
伊坂幸太郎原作にして、今泉力哉の監督作品。正直2人の個性は合うのかなあ?という疑問もありましたが、楽しめる群像劇となっていました。主役はまたしても多部ちゃんこと多部未華子と、今は亡き三浦春馬。あんまり彼の作品見たことがなかったので新鮮でした。恒松祐里、祷キララなど若手の注目株や、貫地谷しほり、矢本悠馬、藤原季節など、出演時間は短いものの重要な役どころで多くの役者さんを見られるのも群像劇のいいところ。仙台が舞台ということで、サンドウィッチマンがボクシングのセコンドとして出てくるのも一興です。あまり内容について触れていませんが、自分の初見時のツイートでは、
と書いていました。そのあたりが伊坂幸太郎と今泉力哉の共通点なのでしょう。
ポテチ
主演はまたしても濱田岳。伊坂幸太郎作品に登場しがちな巻き込まれ型の登場人物として、濱田岳ははまり役なのかもしれません。原作は「フィッシュストーリー」に収録された短編小説。映画のサイズも1時間ちょっとの短めサイズ。でもだからこそまとまっていると思います。東日本大震災直後の夏に撮影されたとか。
御多分に洩れず冒頭からわけのわからない会話だったり、つながりの見えないシーンが連続します。空き巣とプロ野球選手がいったいどう繋がるというのか。勿論ラストに向けて全ての伏線が回収されていきます。最近伏線回収するのが映画やドラマで流行っていますが、伊坂幸太郎作品の伏線回収は昔から神レベル。ポテチというタイトルすらわかってみれば泣けるアイテムです。
濱田岳の彼女役として若き木村文乃がいい感じで登場するし、もっと若い松岡茉優も今じゃ考えられない役です。さらに今は亡き竹内結子も通行人で顔を見せています。
ゴールデンスランバー
最後はコチラ。韓国映画です。本家「ゴールデンスランバー」は堺雅人主演で既に映画化されていて、どこかで見た記憶があります。韓国版は概ね原作や日本版を踏襲しているものの、登場人物や終盤の展開が改変されているそうです。権力と敵対してしまった一個人の無力さと、それを乗り越えるのはやっぱり人との繋がりなんだという伊坂幸太郎のメッセージはしっかり残っていたと思います。
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