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オススメ映画を紹介するよ! 今泉力哉監督最新作、「からかい上手の高木さん」編

今泉力哉監督の作品を知ってから初めて、新作の映画が公開されました。ご存知「からかい上手の高木さん」。主演が永野芽郁さん(この後敬称略)ということもあり、絶対映画館で見るぞと意気込み、ドラマシリーズから前のめりで見ていました。やっと鑑賞してきたので、感想を簡単にまとめてみます。個人的には、今泉監督の新作を映画館で見られた喜びでいっぱいです。

からかい上手の高木さん(ドラマ版)

まずはドラマシリーズから。Netflixで鑑賞しました。いや、コレはもう、高木さん役の月島琉衣、西片役の黒川想矢を見つけてキャスティングした時点で大成功だったのではないでしょうか。いつもニコニコしてからかう高木さんと、からかわれて口篭ったり慌てたりする西片のコンビは、歳をとった自分にも、忘れてしまった(そして実は存在すらしていなかった)青春時代を想起させ、共感性羞恥で悶々とさせるには最高の2人でした。高木さんは普段笑顔を絶やさないから、後半見せるふとした寂しげな表情が更に効果的です。もう西片はおそらく全方向から「ずっとそうしてろ!」って突っ込まれていること間違いない可愛さ。ほとんど2人しか登場しないし、毎回からかってからかわれての繰り返しなんだけど、ずっと見てられる30分でしたね。第5回「バレンタイン」では、突如として群像劇にシフト。真野と中井、浜口と北条らのわちゃわちゃが長回しで描写されたり、今泉節が炸裂したのも楽しかったです。

小豆島の美しい海や静かな街並みが効果的で、ドラマを見れば聖地巡礼したくなること請け合い。最終回のフェリーでの別れのシーンも素晴らしかったです。ドラマ視聴者にとっては完結でもあり、映画への期待が否が応でも高まるラストでした。

からかい上手の高木さん

とある島の中学校。隣の席になった女の子・高木さんにいつもからかわれている男の子・西片は、どうにかしてからかい返そうとさまざまな策を練るも、彼女に見破られて失敗ばかりしていた。そんな2人の関係はずっと続くと思っていたが、高木さんがある理由から引っ越すことになり、心に秘めた互いへの思いを伝えることなく2人は離ればなれになってしまう。それから10年が過ぎたある日、母校で体育教師として奮闘する西片の前に、高木さんが教育実習生として現れる。

映画.com

ドラマシリーズが良かっただけに、不安になるのが10年後のキャスティング。永野芽郁に関しては、個人的に好きなんで問題ないです(?)。西片役は高橋文哉。コレがまたピッタリの西片でした。ドラマシリーズの黒川想矢の演技に寄せているのだとは思いますが、例の慌てっぷりとかモゴモゴするとことか、全く違和感ありませんでした。勿論生徒と接する場面では、相応の落ち着きも見せ、10年という時の流れを上手く表現していました。でも高木さんの前では中学生になっちゃうんだけどね。

映画の前半は高木さんの帰還と中井&真野の結婚式など、わりと普通の恋愛映画のように話が進んでいきますが、たぶん今泉監督のやりたかったのは中盤以降、西片クラスの大関さん町田くんのエピソードが動き始めてからのような気がします。これまで今泉監督の映画で言及されてきた、「思いを伝えることの大切さ」というモチーフがここでも繰り返されます。思いを伝えたことで気まずくなってしまった大関さん、あらためて「ゴメン」と伝えた町田くん。静寂の中で会話をした2人が、歩きながらザワザワした教室にに入っていくシーンは素敵でした。

そして思いを伝え合った生徒に後押しされたかのように、ラストで高木さんと西片が教室で思いを伝え合います。かつて中学時代の2人が座っていた席で。今泉監督がここぞという場面で使う固定カメラ長回しでの撮影でした。ここがね、もう。ネタバレ防止として内容は書きませんが、とにかく息ができません。2人の真摯な言葉のやり取りを聞くことしかできませんでした。永野芽郁、高橋文哉の演技に信頼を寄せ、言葉の力を信じた今泉監督が作り出したこの映画屈指の名場面でした。「街の上で」の青&イハの長回しは楽しくワクワクしながら見ていましたが、「高木さん」のこのシーンの緊張感もハンパなかったです。

お祭りの花火、結婚式のプール、「100%片想い」、美術室、音楽室、堤防・・・。普通の恋愛映画にありそうな、恋の鞘当てや振った振られたみたいな大きな事件はありません(前田旺志郎演じる浜口は振られていました)。小豆島の美しい景色を背景にした名シーンはたくさんあります。そして映し出された全てが愛おしくなる映画です。

配役について少しだけ。大関さんを演じるのは白鳥玉季。今泉作品「mellow」で天才っぷりを発揮していました。「流浪の月」では広瀬すずの子ども時代を演じました。末恐ろしい子です。町田くん役の齋藤潤は「カラオケ行こ!」の主役の子だったんですね。今後活躍しそうですね。教頭先生役の江口洋介はドラマシリーズから唯一連続しての登場。年齢的には校長やっていてもいいかもしれません。西片にいつも良いこと言ってくれます。今泉組では常連の志田彩良の出番が少なかったのがちょっと残念。それだけ高木さんと西片、大関さんと町田くんにフォーカスした映画だってことですが。

最後に 漫画原作の映像化について

実は原作未読です。アニメも見ていません。なので語る資格はないのかもしれません。ただ、昨今の「原作の改編は一切認めまない」というスタンスから、実写版「からかい上手の高木さん」を敬遠している人がいるとすれば、それはもったいないです。ドラマシリーズから丁寧に高木さんと西片の物語を紡ぎ、世界観を保ちながらもうひとつのストーリーが作られています。決して「高木さん」の名前を借りて別の恋愛映画を作ったのではなく、「高木さん」でなくてはできなかった物語だと思います。原作をリスペクトしつつ、今泉監督が伝えたかったこともしっかりと表現されている。今回パンフを購入して、監督やプロデューサー、原作者の思いも感じるとこができました。多くの人に、これまで以上に「からかい上手の高木さん」が愛されることを願っています。

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