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ありがとう、柚木沙弥郎さん

ありがとう、柚木沙弥郎さん

昨日の新聞で、柚木沙弥郎氏が1月31日に亡くなられたと知った。
101歳。
noteには何度も柚木沙弥郎展について書いているが、自分の中ではなんとなく仙人のような存在になっていて、この先もまだ現役で作品を生み出していかれるのだろうなと思っていた。
でも考えてみれば101歳。
101歳!

作品はもちろん好きなのだけれど、生きていることそのものを楽しんでいる姿に惹かれていたのだと思う。
それがそのま

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ちょっと手紙を書いてみたくなった - 『少女たちのお手紙文化 1890-1940』展

ちょっと手紙を書いてみたくなった - 『少女たちのお手紙文化 1890-1940』展

郵便料金、今年の秋にまた値上げするらしい。
年賀状書くのをやめて久しいし、事務的な送付以外に日常の通信手段で郵便を使うことは殆どなくなっているので「また値上げか〜」と嘆くのもおこがましいが。

昔、パソコンもスマートフォンもなかった頃は、それなりに手紙書いていたなあ。どの切手を貼ろうか迷うのも、レターセットやシールを集めては友だちと交換するのも楽しかった。

町田市民文学館ことばらんどで「少女たち

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磯野家に倣って掃除用具を - 長谷川町子記念館

磯野家に倣って掃除用具を - 長谷川町子記念館

古い和風家屋に引っ越して2週間とちょっと。
以前のマンション暮らしと比べると諸々不便だが、大げさだけれど「生活している」実感がある。

せっかくだから昭和の暮らしにどっぷりつかってみましょう〜、とはたき作りワークショップに参加。
場所は長谷川町子記念館。

「サザエさん」には掃除シーンがしばしば登場する。
落ち葉を掃いたり雑巾がけをしたり、年末には磯野家総出で畳を上げたり障子の張り替えをしたりの大

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展覧会場だけどショップにいるような感覚に - 鹿児島睦まいにち展

展覧会場だけどショップにいるような感覚に - 鹿児島睦まいにち展

PLAY! MUSEUMで「鹿児島睦 まいにち」展。

陶芸、テキスタイルやパッケージ、様々な活動をしている鹿児島睦。私はどうしても「今をときめく」という枕詞をつけておしゃれなアート作家と感じてしまう。
初めて陶芸作品を見た時、フィンランドの陶芸家ビルガー・カイピアイネンに似てるなー、北欧の影響受けている人なのかな?と思った。
動物や人物の描き方が中川いさみやモーリス・センダック、レイモン・ペイネ

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ボンボニエールより、切れっ端の方がいい

ボンボニエールより、切れっ端の方がいい

港区立郷土歴史館で『ある図案画家の仕事 -宮中の染織デザイン-』展。

ある図案家とは、中山冝一(1884-1970)。
富山県立工芸学校図案絵画科第一期生、卒業後図案科として活動。高島屋から委嘱を受けて、宮中の室内装飾、歴代皇后衣装の図案など染織品のデザインを手掛けた。
その実物や、図案帖『国華』が見られる展示。
(写真は全てフライヤーより)

まず中山冝一という人物を今回初めて知った。
「図案

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赤羽末吉が見た内蒙古

赤羽末吉が見た内蒙古

noteをやっててよかったなと思うのは、他の人から教えてもらって自分が知らない世界が開けること。
先日のmakilinさんの映画に続いて、今度は内田Sさんの記事である写真展を知り、ギリギリすべり込み。

半蔵門のJCII Photo Salonでの『写された外地』という写真展。
このサロンがある日本カメラ博物館、初めて知った。すぐ近くの半蔵門ギャラリーには行ったことがあるのに、こちらは全然気づいて

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  心の自由は生きる希望 -柚木沙弥郎と土方久功

心の自由は生きる希望 -柚木沙弥郎と土方久功

柚木沙弥郎、ちょうど100歳だからということもあるかもしれないが、私が知っている範囲でも都内や近郊だけで今年既に展覧会4つ。
何度も行っているのに、やっぱり柚木沙弥郎展と言われると見に行きたくなるのは好きだから。
今月もたて続けに二つ。
(展示物の写真はポスター、フライヤー、リーフレットより)

一つ目は、

民藝の展示をよく開催している日本橋高島屋でのこの展覧会、会場はデパートの中なのでそんなに

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お弁当もふろくも魅惑のことば - お弁当のふろく展

お弁当もふろくも魅惑のことば - お弁当のふろく展

お弁当という言葉、いい響き。ふろくという言葉にも、ワクワク感がある。
その二つが一緒になったら魅力も倍増だ。

gallery cadoccoで「美子さんのお弁当ふろく」展。

作者の田中美子さんが1973年から2年間、息子の幼稚園のお弁当につけていたお品書きとメッセージの紙製おまけ157点が展示されている。
汽車だったり家だったり巻物だったり様々な形で、それぞれきれいに彩色され、しかも凝った仕掛

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おそろしげなるよろづの虫、私も愛でる

おそろしげなるよろづの虫、私も愛でる

昆虫マニアではないけれど、虫はだいたい好きだ。
8階の我が家のベランダに、たまに訪問客があるとうれしくなる。

サントリー美術館で「虫めづる日本の人々」展。

虫の音がリーリーコロコロ流れる薄暗い展示室。
展覧会タイトルには「日本の人々」とあり、南宋や元、明代の作品もあったが画や工芸品はほぼ日本の物。
でも虫や草木を愛でてその名前に精通することの大切さは、もともとは論語で孔子が弟子の陽貨に説いたこ

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かわいい大行進 - だけじゃなかった、太田じろうの世界展

かわいい大行進 - だけじゃなかった、太田じろうの世界展

「太田じろうの世界展」。
生誕100年を記念しての原画展は、都内2ヶ所で時期は少しずれるが同時開催。

集英社の「こばと幼稚園」に連載されていた『こりすのぽっこちゃん』、当時読んでいたわけではないのに、なぜかうっすらと記憶にあった。
ポスターやフライヤーの惹句「見て‼︎ このかわいらしさ!」そのまんま。原画見ると「なに⁉︎ このかわいらしさ!」と素直に感動。
表情もしぐさも動きもファッションや小物

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あわてんぼうでさびしがりのあの犬の晩年は、喫茶店のマスター

あわてんぼうでさびしがりのあの犬の晩年は、喫茶店のマスター

父が『少年倶楽部』ののらくろが好きで、家の本棚には講談社版の漫画があった。
私にとって白黒の動物キャラクターといえばミッキーマウスやスヌーピーより先にのらくろ。
旧仮名遣いが読みにくくて、意味がわからない会話もたくさんあったが「営倉」や「酒保」という言葉は『のらくろ』で知った。
主人公のらくろ以外で好きだったのは、穏やかでおっとりとしたモール大尉。

1970年にTVアニメが始まり楽しみに見ていた

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「好き」のパワーはいつの時代にも - 推し活展

「好き」のパワーはいつの時代にも - 推し活展

早稲田大学の演劇博物館で「推し活」展。

ショッキングピンクにハートをまぶしたネオンイエローのタイトル文字。
ポップなポスターだけれど、会場は早稲田大学キャンパス内の

坪内逍遙発案、16世紀イギリスのフォーチュン座劇場を模したクラシックな建物。正式名称は早稲田大学坪内博士記念演劇博物館。
右手前には泣く子も黙る村上春樹ライブラリー。外まで人が並んでいたがエンパクは空いていた。

(展示は撮影禁止

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だじゃれもおしゃれも猫まみれ

だじゃれもおしゃれも猫まみれ

太田記念美術館で「江戸にゃんこ - 浮世絵ネコづくし」展。

先月前期を見に行き、後期は全作品展示替えというので再訪。

去年「Life with ネコ」展を港区歴史郷土館でやっていた時に特別講座の講師をしていたのが、この太田記念美術館の日野原氏だった。

動物とかおじさんとか、太田記念美術館、楽しい切り口の企画やってくれるなぁ。
昔は浮かれた気持ちで入っちゃいけないようなちょっとお堅い感じの美術

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乙女心補給 - 森本美由紀の作品

乙女心補給 - 森本美由紀の作品

ぼんやりしていると、いつの間にかどんどんおじさん、いやおじいさん化が進んでいる。
年寄りになるとおじいさんなんだかおばあさんなんだか、パッと見わからなくなる性別が曖昧な感じは嫌いではないが。
今のポール・マッカートニーのおばあちゃんぽい雰囲気はなかなかいい。

おじいさん寄りになりつつある私だが、たまには乙女心も補給しないとね。
ということで、弥生美術館の『伝説のファッション・イラストレーター 森

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