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解剖研修日記⑤

こんにちは!高槻・草津ボイストレーナーの安田結衣です。

いよいよ今日から解剖研修の中身に入ります。
この日記は5日間人体解剖を自らの手で行う中で、私が興味を持っていた事や学びをまとめたものです。
解剖研修についてのご理解があり、声と身体の繋がりついて真摯に学ばれたい方以外の閲覧はご遠慮ください。もし文章中に気になる点やご指摘があれば真摯に受け止める所存ですので、お手数をおかけしますがご指摘いただけると幸いです。

今日はアメリカ解剖研修初日。予想していたが全くと言って良いほど眠れずに朝を迎える。悔いの残らないようにしたい気持ちもあるが、明日からはもう少し緊張感が和らいでくれるといい。


今日のメインはメスなどの器具操作と皮膚・脂肪・筋膜などの重なりを確認する事なので、あらかじめ山本先生のセミナーで勉強していた点の中から特に興味のあるものをピックアップした。
・頭の位置によって喉頭の動きにどのような制限や動きやすさが加わるか
・8柱の御献体の胸鎖乳突筋や喉頭などの差
・舌骨上下筋群の動きやすい姿勢とは
・脂肪が皮膚に与える影響について

午前はオリエンテーションとして自己紹介などを軽くしたり、トッドの講義があった。
今回のメンバーは50人弱いた。身体の専門家が集まる場所でさえ、ボイストレーナーは異色なのだろうか。ヨガ・ピラティスのインストラクターや鍼灸師の方は沢山いたが、音楽家での参加は山本先生率いる私たち4人のみ。
他業種の方とお話しすると声についての悩みが意外と多くて驚いた。みんな同じように身体に興味があって来ている方たちだけれど、専門分野以外のことを学べるのは滅多にない良い機会だと思う。2Dの情報ではなく、生の身体を自らの手で確かめたいという人が多かった。
生の身体というのはホルマリン固定されていない、皮膚や筋肉の本来の動きが観れるということ。例えるなら歌歌いにとって注目されやすい横隔膜などを教科書的に観察するようなものではなく、身体全体の繋がりとして観れるのだ。
自らの積極性が問われる。学ぶも学ばないも自分次第。ラボに入る合図があり一気に緊張が走る。

今回解剖させていただたく御献体は8柱。未来の発展のため自らのご意思で身体の解剖にサインをいただいた方である。
そんな貴重で有り難い機会をいただいているのだと思うと、胸が熱い思いで詰まった。

そして自分のチームの興味に合わせた御献体を選ばせていただく事に。初めての解剖ということもあり、筋肉が大きく体格の良い男性に決まった。御献体のプライベートな情報は一切開示されていないので、感謝と尊敬を込めて勇者ケンタウロスにちなんだ「KEN」という名前で呼ぶ事になった。

代表のトッドから解剖器具の説明がある。今日の前半は皮膚という大きな内蔵(とトムは言っていた)を脂肪から切り離す作業をした。
ラボに入った頃から手の震えがあり、うまく器具を使えない自分に歯痒い思いをした。
KENの皮膚を7人に分かれて切り離すのだが、驚いた事に皮膚と脂肪の層は癒着が激しく、脂肪がとても多い。男性なのに脂肪が多いのは珍しいことらしく、何か疾患の影響で増えたものだと考える。
特に多い場所は右肩と胸。驚いたのは首の前にもびっしりと脂肪が集まっている事。
脂肪が多すぎるとその下の筋肉は動きが鈍くなる。胸は呼吸筋だし、首は発声の要。KENはどんな声をしていたのだろう。

脂肪の色には差があり、鮮やかな黄色をしたものからKENのように薄い黄色のものもある。血液が濃いほどうまく血液が供給できなかったと考えらているそうだ。

皮膚や脂肪や分けられる頃には、解剖器具にも少し慣れ、不安感も緩和されていた。

首の中で一番筋服が大きいのは胸鎖乳突筋である。発声の中では舌骨下筋群の一部として有名で、声に深みを持たせる効果がある。そのほかにも声の支えや首のコントロールにも影響があり、注目度の高い場所である。
KENには首をひねる動きに左右差が生まれていた。右側には少ししかひねる事ができなかった。
筋腹も右のほうが1.5倍ほど大きく感じる。右肋骨の挙上が少ないことや右腕脂肪の癒着を考えると
体制が右に傾いたまま努力して呼吸をしていたのではないかと予想した。
そうすると左首の皮膚の繊維の硬さも納得がいく。

胸鎖乳突筋も個人差が大きく、女性でも大きい方や小さい方長さもバラバラだった。
気になったのは喉頭の向きが少し真ん中よりずれている方。もう少し筋肉がはっきり分かれば可動域など見たい。

次は舌骨上下筋群と姿勢について
今回はKENの後頭部を色んな角度に動かして舌骨上筋群の張りがどう変わるかを見た。下顎をあげて首の前に張りを持たせると甲状舌骨筋や喉頭の動きがラップで固定されているように止まる。
逆に下顎を下げて首に近づけると皮膚に余裕が生まれる。
高音を出すときの姿勢で、あまり顎を上げさせるのは良くないとさせているのはこのためか。

飲み物が飲み込みづらい人は舌骨が上がりにくくなっているので、下顎を下げたままだと飲みやすくなる。高くにジャンプする反動をつけるためにしゃがむのも同じ。

舌骨下筋群については胸筋などの解剖が進めばぜひ見たい。


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