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ダミアン・ハーストの作品を理解するために必須な知識とは?[ダミアン・ハーストとキリスト教①]

ダミアン・ハーストは一般的に、「生と死」をテーマに作品を作っている作家として知られています。

それを代表しているのが最も知られている作品である『生者における死の物理的不可能性』でしょう。
ガラスの展示ケースの中に吊るされ、ホルムアルデヒドで保存されたイタチザメの作品です。
ネットや現代アートの入門書などでこの作品の写真を見たことがある方は多いかと思います。

この春、日本に来ている桜の作品を含め、「生と死」をテーマにした作品は、違う文化に暮らすわたしたち日本人にもとても分かりやすいテーマですね。

では逆に、文化の違う日本人にはなかなかぴんとこないテーマとはなんでしょうか。
わたしはそれは「宗教」、特に「キリスト教」をテーマにした作品かなと思います。

熱心なカトリックの母親に育てられたハーストは、キリスト教をテーマにした作品を多数制作しています。
それらは、とても美しくありながら、どこか皮肉めいていて、宗教に対するハーストの複雑な心境を表しているようです。

たとえば、わたしがいまパソコンのデスクトップ画像にしているハーストの作品は、ホルムアルデヒド漬けの白いハトの作品なのですが、この作品も「生と死」そして「宗教」をテーマにした作品です。

聖書において、ハトは平和の象徴であり、特に白いハトは神が降臨するときの姿ともいわれ、また精霊を意味することもあります。
ノアが洪水が終わったことを確かめるために箱舟からハトを放った逸話は有名ですね。

この白いハトの作品を見ていると、敬虔な気持ちになると同時に、どこか不安な居心地の悪い気持ちになります。
なぜなら、この白いハトは、たいへん美しくありながら、ホルムアルデヒド漬けにされ吊るされているため、とても不自由だからです。

わたしはここに、ハーストの宗教に対する愛憎ともいうべき、複雑な心境を感じます。

今回はここまでで!
次回の[ダミアン・ハーストとキリスト教②]もお読みくださったら嬉しいです。

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