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クリスマスは家族で過ごそう

子供の頃、私はクリスマスにどこか寂しさを感じていた。

クリスマスが近づくと、街にはどこからきたのかわからないほど大きなクリスマスツリーが出現し、リボンや鈴や松ぼっくりがついたリースが至る所に飾られる。
年末の慌ただしい空気の中、キラキラした装飾とプレゼントに溢れた街の雰囲気は、人をなんとなく浮ついた気分にさせるものだ。
けれど昔の私には、クリスマスがくるのが憂鬱な時期があった。

当時、父は単身赴任のため離れた場所で生活をしており、クリスマスでも家にはいなかった。

私には姉と兄がいるのだが、幾分年長の二人は恋人や友人と過ごすために出掛けてしまい、小学生の私は毎年母と二人、スーパーで売っているチキンやケーキを食べてクリスマスを過ごしていた。

ご馳走で埋めたテーブルを母と二人きりで囲み、ホームアローン2やクリスマス向けのアニメ映画を見るのは、子供心に白々しさを感じた。
母は家にいない姉や兄の分まで食べ物を買う癖があり、リボンのついたローストチキンは冷蔵庫に入れられたまま、翌日の私の食事になった。

そんなクリスマスを何年か過ごし、私も思春期と言われる年齢になった。
その年頃の子供なら誰もがそうだと思うが、私はクリスマスをできるだけ友達か彼氏と過ごしたいと思うようになった。

彼氏はいつもいなかったので、同じく彼氏のいない友人を集めて、なんとかクリスマスを家で過ごさなくて済むようにした。
母と二人でチキンやケーキを食べるのはもう嫌になっていた。

だから、ある年のクリスマス、友人と遊びに行くために家を出る時、私は母に「もうチキンとかケーキは買わなくていい」と言った。クリスマスとか興味ないから、別になにもしなくていいと。
本当に興味がないのなら、家で母と一緒にいつも通りの食事をすればよかったのに。
私がそう言った時、母がどんな反応を示したのか私はどうしても思い出すことができない。

時は流れ大学生になった私は、相変わらず彼氏もおらず、一人で過ごすくらいならアルバイトでもしていた方がマシだと思うようになった。
そして実際に、私は仕事をして過ごすようになった。その頃には母ももう、特別にクリスマスの準備をすることはなかった。


更に時は流れ現在。私は結婚して母親になった。
そんな今の私はクリスマスをどのように過ごしているかというと、友人夫婦を家に招きクリスマスパーティをするというのが2年続いている。
チキンもケーキも必ず用意するし、プレゼントも交換する。
子供時代、なんとなく寂しく感じていた「クリスマスらしいこと」も、今では毎年恒例の楽しみなことになった。

今は赤ん坊の我が子にも、来年からは毎年クリスマスプレゼントを準備しなければならないだろう。
子供がもっと成長すれば、要求するのはプレゼントだけで、そのうち友達や恋人と過ごしたがるようになるかもしれない。
そうなった時に寂しさを感じずに済むように、私は既に夫と二人きりのクリスマスの過ごし方を考えている。
それは、夫婦二人でレストランを予約してディナーを楽しむというものだ。
もしくはもう少し気楽に、ケンタッキーを持ち帰って夫と食べながら、のんびり子供の帰りを待つのもいいかもしれない。

子供の頃クリスマスに寂しさを感じたのは、きっと母の寂しさが私に伝染したからだと今では思う。
夫や上の子供たちが不在で、末娘と二人きりで過ごすことが母には寂しかったのだろう。

そんな母もここ数年のクリスマスは、単身赴任を終えて帰宅した父と、兄や姉、その子供たちと過ごすのが恒例になっている。
ケーキやプレゼントを準備して、孫たちに囲まれてクリスマスを過ごす母はそれなりに楽しそうだ。
県をまたがなければいけない距離に暮らしているので私は実家に帰らないが、そんな母の様子に私はどこかホッとしている。

けれど当時のクリスマスのことを思い出している今、私はあの頃のクリスマスに戻れたらと思う。そうできるのなら、私は母と二人でチキンにケーキを食べるのに。

日本ではクリスマスを恋人同士で過ごすイメージがあるが、海外では家族で過ごすのが普通なのだそう。大人になった今だからそう思うのかもしれないが、私もクリスマスこそ家族で過ごしたいと思う。家族で、というより大切な人と。


この記事を読んでくださったあなたは、今年のクリスマス誰と一緒に過ごしたいですか。
誰とも過ごさない、という方もいいですね。一人きりのクリスマスもロマンティックです。私なら街に出て、若いカップルの幸せそうな姿を楽しみながら、その日ばかりは特別になんでも好きなものを食べたいです。


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