沼にハマったときに自分のデザインを客観的に見る方法
こんにちは、SOMPO Digital Labのプロダクトデザイナー林です。
デザイナーの皆さんは、「自分のデザインの落とし所がわからなくなってしまった」という経験はありませんか?デザイナーなら誰もが一度は直面する(と思っている)この状況、いわゆる「沼にハマる」という表現がぴったりくるかもしれません。
私がデザインの沼にハマっているときの頭の中を言語化すると、こんな感じです。「提案のために、A案、B案、C案といろいろな切り口でデザイン案を作り続けた結果、どの案が最も良いのか、どう着地させるのか自分でもわからなくなっちゃったな。周囲に相談するにも、もっと絞り込んで聞かないと困らせてしまうだろうし…うーん…ポチポチ…あれ、気づいたらまた別のデザイン案ができた…!このままでは延々と考え続けてしまいそう…」
この混沌としたプロセスは、納得のいくアウトプットにたどり着くためには重要なものだと思います。しかし、現実の業務では納期があり、自分のリソースも限られています。どこかで区切りをつけなければなりません。
そこで今回、効率的に落としどころを見つけるため、「デザインの沼から抜け出し、自分のデザインを客観的にみる」対処法について、これまでの経験から自分なりに編み出してみました。皆さんの新しい視点や解決策の参考になれば幸いです。
1.モノクロ加工してみる
デザイン作業では、つい色のバランスや配色に気を取られがちです。そこで、色の影響を排除してデザインを見直すために、モノクロ加工をしてみることをお勧めします。色という情報(ある意味ノイズ)を省くことで、形や構図、バランスを客観的に評価しやすくなります。
2.物理的に触ってみる
PCのアートボードは二次元の平面的な世界です。そこから離れて、三次元の中で実際にデザインに触れてみることも一つの方法です。
例えば、Figmaを使用している場合、Figmaスマホアプリのミラー機能を使って実機に画面を投影することができます。
私は、スマホで使うことを想定したサービスをデザインする際には、定期的にスマホ画面に投影して確認するようにしています。実際にデバイス越しに画面を触ってみることで、「このボタンは親指でタップしにくい位置にある」「このデザインだと、明るい場所で色が飛んで見えにくい」といった問題点や改善点が見つかります。動的なプロトタイプで触ることが最良ですが、画面単体でも多くの気づきを得ることができます。
3.実際の使用シーンの中に入れ込んでみる
上記でも書きましたが、アートボードの中で完結させることは少し危険です。例えば、バナーを制作する場合、まずは規定サイズのアートボードを作り、その中でデザインを考えはじめることが多いと思います。しかし実際には、バナーはサイトなど他の画面の中に埋め込まれる形で使用されます。実際の配置場所にデザインを入れてみることで、「近くにある要素と配色が似ていて目立たない」など、より具体的な使用シーンに即した気づきを得ることができます。
(ちなみに弊社はエンジニアブログも運用しており、上記はエンジニアブログで使用したバナーです。こちらも内部のナレッジ等定期的に共有してますので是非に〜)
4.Chat GPTに聞いてみる
Chat GPTでも画像がアップロードできるようになりました。業務で作成しているデザインをアップロードするには、AIの学習対象にならないようセキュリティ上の設定が必要ですが、ChatGPTを架空のデザイナーの先輩として置いてみることで、観点の整理ができるようになります。下記のような流れで、結論だけでなくプロセスと合わせて聞くと、これまでの自分の思考が言語化され、フラットに自分のデザインを見れるようになります。
5.プリントアウトしてみる
これまでの文章の中でも度々述べていますが、デジタル画面上でデザインを見続けると、細かな点に気を取られ、全体的な視点に気づきにくくなることがあります。行き詰まった際には、例え紙物のデザインでなくても、一度プリントアウトして自分のデザインを見てみるのも手です。紙に印刷することで、デジタルでは見落としていたバランスの問題に気づけることがあります。東芝さんのnoteでもアイコンのデザイン案を壁に貼ってブラッシュアップする様子が紹介されていました。
また、プリントアウトすることで誤字脱字にも気づきやすくなるというメリットもあります。デジタル機器の「透過光」より紙の「反射光」で確認した方が、脳科学的に間違いに気づきやすく、文字校正には適しているという諸説もあるようです。
6.世の中のABテストの結果を参考にする
ABテストとは、2つの異なるバージョン(AとB)を比較して、どちらがより効果的かを判断する手法で、各社がナレッジとして公開している場合があります。いくつかの選択肢で迷っている際には、そういったナレッジも判断材料の1つになるかもしれません。
もちろん、デザインにおいては「いつ」「どこで」「誰に」使ってもらうかなどのコンテクストが非常に重要です。そのため、他のプロダクトの結果がそのまま自分のプロダクトに適用できるとは限りませんが、似た事例を確認することで、論点の絞り込みには活用できるのではないでしょうか。
一部有料ですが、いろんなプロダクトのABテストの結果が見れる海外サイトもあります。
7.時間を置いてみる
シンプルすぎる解決策ですが、延々とやってしまうときこそ、一度その作業から離れることが大切だと痛感しています。1つのものをずっと作っていると、視点に偏りが生まれるものです。翌朝PCを開いた時に「いやいや、この案全然バランス取れてないな!」など、自分のデザイン案の問題点に気づいたことが何度もあるので、あえてこの手法を押したいです。急がば回れ、ですね。
最後に
デザイン作業における混沌のプロセスはもちろん不可欠なのですが、埒が明かないなというタイミングで、今回ご紹介した対策を思い出していただくことで何かヒントがあるかもしれません。今回の記事が、デザイナーの皆さんの効率的な検討に寄与できると、とても嬉しいです。私もまだまだ試行錯誤中ですので、より良い対処法があれば、ぜひ伺ってみたいと思っています。
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