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そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第3章 ラスン救済編 13】

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ーフィールド ラスン周辺区域ー



カラカラカラ…
【魔族の二人組が二輪式魔動走行機マギノチャリス[通称 チャリ]に乗っている!】

マギノチャリス



「よぉ、ルーボ。お前人間って食ったことあるかぁ?」

【魔王ゼジル直属:戦闘部隊[デモニックアーミー]4番隊 精鋭 バミラ】



「えぇ?」

「何ですいきなり?あるワケねぇでしょう」

魔王ゼジル直属:戦闘部隊[デモニックアーミー]4番隊 隊員 ルーボ


「はん…!だよなぁ」

「なんでも、めちゃくちゃ肉質が硬くてまずいらしいぜ。俺様も食べたことねぇから実際は知らねぇけどなぁ」


「ほぇ〜。でも何で、んなことを聞くんです?」


「人間でも、それなりの使い手を食えば身体に蓄積出来るマギアのキャパが増えるって眉唾モンの話があんだよ」

「マギアの許容量が増えれば、練れる魔力量もそれに応じて増える。結果、繰り出す魔法の規模も威力も格段にパワーアップする」

「これがマジなら、手っ取り早く強くなるのに案外悪くねぇ手段だとは思わねぇか?」


「はぁ…そうですかねぇ。俺は断然、抵抗の方が勝ちますけど」

「あ、もしかして最近バミラさんの言ってる人間の若い男がどうのこうのってそれが理由で?」


「あー、ちげぇちげぇ。そいつはまた別件だ。とらえ次第本部に転送しろってお達しでよ」

「こっちは、単純な俺様の興味本位ってやつだ。お前ならどう考えるかと思ってな」


「人間なんざゲテモノでしょう?自分の血肉になるとか、考えたくもねぇ」


「はん…!俺様だって、そりゃあ同意だがな」

「ただ、もしも力が確定で与えられるとして、絶対に人間を食わなきゃいけない場面に出くわしたとしたら、お前なら食うか?」


「えぇ〜?何その質問?」

「食わねぇでしょう。どのくらい強くなるかにもよるけど」


「もうめっちゃだ。めっちゃくちゃ強くなる。隊長クラス」


「隊長クラスに……か…」


「じゃあ一部でいいぜ。どの部位がいい?」


「一部なら、まぁ………そうですねぇ。ちなみにバミラさんは?」


「俺様は腕だ、圧倒的にな!まぁ本当に隊長クラスに強くなるなら全部いってやるがな」

「腕なら見た目も悪かねぇし、骨付き肉みてぇなもんだろ」

「どうだ?脂も乗って何なら美味そうまである、何気に最適解じゃねぇか?」


「腕ぇ〜?肉質硬くて不味い話が本当なら多分ハズレ部位っすよ?」


「んじゃあ、利き腕じゃねぇ方の腕」


「右か左かでそんな変わらんでしょう。筋肉付きにくいとこのがいいですって」


「……いちゃもんばっかでウゼェな、じゃあお前は何処だよ」

「お前は何処なら平らげられんだよ」


「……これ食い切るの前提の質問だったんですか?」


「そりゃそうだろ一部なら、そうじゃなきゃ能力は上がらねぇこととする。今決めた。お前がごちゃごちゃウルセェから」

「腕以上に納得出来ねぇ答えなら殺すからな」


「ダルっ。ワケわかんねぇ質問ふっかけといて勝手にムカついてるしこの人」


「はん…!ほらほら言ってみろよ。腕は俺様がもう取ったから選べねぇぜ?」


「いらねぇですって。別にそんな早い者勝ちみたいな人気の位置についてねぇっすよ?腕」


「黙れ。黙って早く答えろ。ぶち殺すぞ」


「う〜ん……強いて言うなら…耳?」


「は〜ん?耳だぁ〜?」


「えぇ、サイズ的にもいいし、他の部位に比べたらまだ柔らかくて食べやすそうだ」


「………耳」

「右か?左か?」


「そこ…重要っすか?」


「指定しないんならどっちもいけよ」


「じゃあ右耳」


「はん…!なら俺様は左耳だ」


「な…!ずりぃっすよ!俺の最適解を!」


「るせぇ。だったら最初から取られねぇように両耳って言っとけや」


「じゃあ俺が両耳いったらバミラさんも両腕いってくださいよ。そうじゃなきゃフェアじゃねぇです」


「……腕やっぱりやーめた!目ぇ!」


「目ぇ!?きんもっ!」


「ウゼェ!あんなもん丸呑みしたら仕舞いだろうが!」


「いやいやグロいし一番抵抗ある!無い!目だけは無いわ!引く!」

「認めてくださいよ!耳が一番だったんでしょう!?変な意地張らねぇでください!」


「ウゼェウゼェウゼェ!!」











ーフィールド ラスン周辺区域の近くの草陰ー


カサ…
【二人組の傭兵が草陰に隠れて様子を窺っている!】


「……いたぞ、前方おおよそ1.5kmにバミラとルーボと思われる魔族二体」

「人間から奪ったのか、魔動走行機マギノチャリスに乗っている」

「上半身裸で青みがかった髪に、屈強そうな肉体、後方で横柄そうな振る舞いをしている方がバミラだ」

「もう一方は銀髪で小柄、ボロボロの羽、魔動走行機の前方を担当している方がルーボ」

「特徴はどちらも合致している。間違いない。討伐要請のあった魔族だ」


「うむ、会話はどうだ?聞き取れるか?」


「聞き取れるが、我々人間には到底理解し難い、下卑た話題を展開している。虫酸が走るから聞かない方がいい」

「何にせよ、これと言ってこちらの益になるような情報は話していないようだ」


「そうか……しかし魔族で仲良く白昼堂々二人乗りとは、大胆不敵かつ能天気な野郎共だ」

「こんな離れた位置から狙われているとも知らずにな」


「どうする?能力強化によって五感を研ぎ澄ませている俺が、ここから遠距離で魔法を放っても良いが…」


「いや、この距離じゃおそらく魔法の威力は落ちるだろう。仕留めきれなかったら面倒だ」

「ここは一旦、強力な麻酔を仕込んだ俺の銃で奴らを狙撃し眠らせる。Bランクの魔物ですら昏睡する薬品だ」

「それから奴らに近づき、ゆっくりと息の根を止めよう。討伐の証拠に角でも持ち帰ればそれで依頼は達成だ」

スチャ…!
【傭兵Aは銃を装備した!】


「しかし、これでマギアの結晶が手に入るとは、なんという僥倖」


「へへ…!あぁ、実に簡単なお仕事だった───」

「はん…!そいつはいいなぁ、割のいい仕事なら俺様にも紹介してくれよ」


「出来れば残業のねぇ仕事がいいですねぇ〜」


「「……っ!?」」


【バミラとルーボは傭兵の背後にまわった!】


「……な!?」


【傭兵Bは前方と後方の様子を交互に窺った!】

魔動走行機マギノチャリスは平原に横たわっている!】


「い、一体いつの間に!?」


「ははは…っ!"い、一体いつの間に!?”ですって、リアルでそんなん言う人本当にいるんですね」


「全くだ、涙が出るぜ。嘆かわしいほどに雑魚キャラのセリフじゃねぇか」


(こ、こいつら…!今まさに俺が狙いを澄ましてたんだぞ!?背後に回る隙なんかなかったはずだ……!)

(いやそれより……この距離をどうやって詰めた!?何故気付く事が出来る…!?)


「く、う……うおォォォ…っ!!」

【混乱した傭兵Bの攻撃!】


「ばっ…!早まるな!よせっ!!」


「ルーボ、一人でいいや


「へい」

「転移魔法 エクスパルスゲート」


【ルーボはエクスパルスゲートを唱えた!】

ヴン…!
【傭兵Bはこの場から姿を消した!】


「……っ!」


「あ〜らら〜、一人になっちまいましたねぇ」

「どうです?イリュ〜ジョ〜ン♪」


「くそっ!錯乱して突っ込みやがって馬鹿が…!」


「残ったお前には質問がある。二点ほどな!」

「きっちり答えりゃあ、悪いようにはしなくもなくもねぇぜ?」

「はん…!まずはその銃を捨てな」


「…………」

カラン…
【傭兵Aは銃を捨てた!】


「まず一つ、お前らで狙われるのがかれこれ7回目になるんだが、他にも仲間はいるのか?」


「…………仲間は…いない。俺は元々単独でお前らを撃破しにきた」

「今飛ばされたやつも、先刻知り合ったばかりの赤の他人だ。そこには何の繋がりも無い」


「なるほどなぁ、となると俺たちを対象にした討伐依頼が複数出回ってるって考えが自然だな」


「偶然にしちゃあ流石に頻発しすぎですしねぇ〜」


「んじゃあ、お次の質問」

「コイツは誰からの差し金だ?」


「…………」


「はん…!沈黙は回答の意思なしとみなすぜ?」


「………それは…言えない…」

「依頼主の個人情報にはこちらとしても守秘義務がある。簡単に口を割っては傭兵たるものの名折れだ」


ガッ!
【バミラの攻撃!】


【傭兵Aは14のダメージを受けた!】

「………っ!」


「てめーの矜持なんざどうでもいい。勘違いすんな」

「俺様達は魔族だ。ゴミみてぇな人間界のルールなんか同じ人間との間だけでやれや」

「もう一度だけ言う、答えろ」


「………い…言えん…っ!」


「……へぇ、そうかいそうかい。んじゃあ質問を変えよう」

「お前、目…………いや」

「利き腕はどっちだ?」


「は……?」









「あ”っ……!あ”ぁぁぁ………っ!!」


【傭兵Aは左腕を失った!】


「うぇ〜……マジで食うんすか?やめといた方がいいですって」

「お腹壊しますよ。絶対」


「黙れ、俺様はやると言ったらやる男だ、見とけ」

「………………んあっ!」


グチャァ…!
【バミラは腕にかぶりついた!】


「…………んん!?」

「おえっ…!まっず!!」


【バミラは傭兵の腕を投げ捨てた!】


「ソッコー捨てた…あ〜あ〜言わんこっちゃねぇ」


「ちっ!ドス卜レートにマジィじゃねぇか!ざけんな!」

「何食わせてくれてんだこのクソ傭兵が!」


「とてつもない逆ギレだな…」

「ほらバミラさん、やると言ったらやる男なんでしょ?平らげて下さいよ!」

「はいはいはいっ!目指せ隊長クラス!」


「ニヤニヤしてんじゃねぇ…殺すぞルーボ」


(な、な、何なんだコイツらは…!!?)

(計り知れない異常性、人間を殺めることに対して何の感情も持ち合わせていない……!奴らの中では魔族こそが至高で絶対である事が如実にその行動へと表れている!)

(俺を殺すことなど…奴らにとっては羽虫を潰すほどに造作もないことなのだろう……!)


「急務の討伐依頼か……村を襲う二体の魔族を討伐……」

「報酬は…ほぉ!二体だけでマギアの結晶、推定60〜80万Rか!これはいい!」

「この依頼が成れば、しばらくは仕事がなくても食いつなげるな!」


(これが……『魔族』…!!)

(俺の考えが甘かった……っ!)


「さ〜て、これで少しは答える気になったか──」


「ひ、ひぃ…!来るなぁっ!!」


【傭兵は隠し持っていた小銃を装備した!】

パァン…!
【傭兵Aの攻撃!】


「………!」

【バミラの頬を銃弾がかすめた!】

【バミラに4のダメージ!】


「あ、はぁ…はぁ……っ!」


「うっあ〜……やっちまいましたねぇ」

「俺…しーらね」


ポタポタ……
【バミラは自分の傷口に手を当てた!】


「……あ”ぁ〜?」


【バミラの攻撃!】


「……や…め………っ!」

「─────────っ!!」



─────────────
───────
──





ーフィールド ラスン周辺区域ー


カラカラカラ……
【魔族の二人組が二輪式魔動走行機マギノチャリスに乗っている!】




ポーーン…ポーーン…
【バミラは???を弄んでいる!】

「よぉルーボ、お前人間食った事あるかぁ?」


「……あるワケねぇでしょう」


「はん…!俺様は、あるぜ」


「……知ってますよ」

「大人の階段登った。みてぇなマウント、うざ…」


「なんか言ったかコラ…!」


「いんや〜別に?」

「それより結局、口を割らせなくて良かったんで?」


「あぁ、何となく目星は付いてる。ここ最近で俺様達に恨みを持つような連中なんざ知れてんだろ」

「あいつら…随分舐めた真似してくれんじゃねぇのよ…!」


ピキ…
【バミラの怒りが50上がった!】


「まぁ十中八九そうでしょうね」

「つーかバミラさん、そろそろ村までの運転変わってくれねぇですか?俺ばっかり前で疲れましたよ」


ジィ〜…
【バミラは???を見つめている!】

「……よぉルーボ」


「へい?」


「やっぱ、目ぇは無理だわ…」


「いや、だから言ったでしょう」

「話逸らそうとしねぇで下さいよ。運転」


「はん…!わ〜ったよ」


【バミラは???を投げ捨てた!】


〜To be continued〜


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