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異色探偵物語『隻眼の少女』by麻耶雄嵩

正直に言うと、表紙のイラストが綺麗でテーマが惹かれるミステリーものだったからつい手を伸ばして買ったこの本。

あとで調べたら、あの深キョンのドラマの貴族探偵の作家さんだった。

実は無知なので、全然知らなかったんですよねごめんなさい…。

簡単なあらすじを紹介すると、自殺願望のある男性が温泉地に死に場所を求めて温泉地で殺人事件に巻き込まれると、そこに居合わせた片目が義眼の美しい少女(探偵)に出会い事件を解決に導くというもの。

若干金田一シリーズの、犬神家の一族を思わせる様な感じだった。オマージュかなぁと思ったくらいに。

この少女探偵は、白拍子みたいな恰好をしている名物探偵で、母も同じ容姿同じ装束そして同じ名前で後を継ぐみたいな設定でそこは面白い。

そして、自殺願望のある大学生の子のキャラがほどほどに薄く、そして目立たないところでワトソン的な存在感もいい。

温泉地をつかさどる、神の一族というテーマの設定もよかった。

文章もとても読みやすいし、すらすら読めた。

だがしかし。

犯人の殺人の理由が、え…?それ?マジでそれ?と思った。

ネタバレになるから犯人と殺害理由は控えよう。

もしかしたら、ミステリー小説や火曜サスペンス劇場や、人間ドラマをたくさん読んできた私の、目が肥えすぎてしまっているのか…殺人には必ずしも理由が深くなければならないという思い込みが刷り込まれているせいもある。

でもやっぱり共感したいじゃん、犯人の気持ちに!

サイコパス的理由はそれはそれで理解できるじゃん!だってサイコホラーで殺害理由にぞっとするのも楽しいじゃん!

文章も読みやすかったし、トリックもちゃんと考えられてるしだったのに、本当に犯人の心理描写が限りなく残念だった…本当に。

もともとこの方の作風が、意図的な落差を忍び込ませる作風らしく、ミステリー小説の構造自体に疑問を投げかける作風らしい。

でも私にとっては、なんだろう。

スープがお湯のラーメン、くらい味気なさを感じてしまったごめんなさい。

きっと合う人は合うと思うけど、ちょっと残念だったなぁ…

設定とか世界観とか文章の読みやすさはとてもよくできていただけに、残念な印象が残ってしまった…

なかなか好みの作家を探し当てるには、無数の本があるなぁといういい例でした。

懲りずにまた、気になった作家を探しに行こうと思います!


推してくれたら喜びます('ω')