見出し画像

【技術革新】高すぎ!壊れやすい!水素輸送の2大課題を解決する新素材が誕生!

この記事は「高耐久性の酸化イリジウム代替卑金属合金アノードを開発」を多くの方に知っていただくため、専門的な内容をできるだけ身近な言葉で説明しています。正しい内容が知りたい方は、元のプレスリリースをチェックしてね。

挿入画像の出典:PDF

「水素で未来の社会が変わる!」

こんな話を聞いたことありますよね?水素は、石油や石炭と違って使っても二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギー。だから、地球温暖化対策の切り札として世界中から注目を集めているんです。でも「運ぶのが難しい」という大きな課題がありました。

今回、筑波大学や名古屋大学などの研究チームが、この課題を解決する画期的な研究成果を発表しました。早速、どんな発見があったのか見ていきましょう!

なぜ水素は未来のエネルギーとして注目されるのか?

みなさんは「カーボンニュートラル」という言葉を聞いたことがありますか?これは、二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることを意味します。この目標を達成するため、水素エネルギーの活用が必要なんです。

とくに日本では、水素を使った社会(水素社会)の実現を目指していて、水素で動く自動車なども開発されています。でも、ガソリンと違って水素は気体。そのため、運ぶのがとても大変なんです。

水素を液体にして運ぶ?新しい輸送方法

そこで考え出されたのが、水素をメチルシクロヘキサン(MCH)という液体に変える方法です。MCHは常温・常圧で液体なので、運びやすいんです。しかも、水素と比べると体積当たり500倍以上の水素を含むことができます!

これまでの方法の問題点は?

でも、このMCHを作るのも簡単じゃないんです。これまでは、

  1. まず水から水素を作る

  2. その水素をトルエンという物質に付け加える

という2段階の工程が必要でした。これを「一気に」できないかと考えたのが、Direct MCH®法(有機ハイドライド電解合成法)という新しい方法です。この方法なら、水とトルエンから直接MCHを作ることができるんです!

模式図

画期的な新方法、でもそこにも課題が

Direct MCH®法は画期的な方法でしたが、大きな問題がありました。それは、電極として使う「酸化イリジウム」という高価な貴金属が、使っているうちにダメになってしまうこと。

具体的には、トルエンが変化して「安息香酸」という物質になり、それが原因で電極の表面にプラスチックのような物質(ポリマー)ができてしまうんです。このポリマーが電極の表面を覆ってしまうことで、電極が使えなくなります。

9つの金属を組み合わせた新素材の登場

そこで研究チームは、9つの金属(Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Nb、Mo)を組み合わせた新しい合金を開発しました。この合金は「高エントロピー合金」と呼ばれ、とても安定した性質を持っています。

新素材のすごいところは?

この新しい合金には、驚くべき特徴があります。

  • 従来の酸化イリジウムが数時間で使えなくなるのに対し、40時間以上も安定して使える

  • 値段も酸化イリジウムの約50分の1以下

  • 酸に強い(強酸性の環境でも使える)

なぜ長持ちするの?

研究チームは、なぜこの新素材が長持ちするのか、そのメカニズムも解明しました。

新しい合金の中でも、とくに「ニオブ(Nb)」という金属が重要な役割を果たしています。この金属は表面に保護膜を作り、トルエンが電極表面にくっつくのを遅らせる働きがあります。その結果、安息香酸になりにくく長持ちするんです。

この研究が実現すると何が変わる?

この研究成果が実用化されると

  • 水素の輸送コストが下がる

  • 環境にやさしい水素の利用が広がる

  • 日本の水素社会実現に近づく

などの変化が期待できます。

おわりに

水素は目に見えない気体ですが、この研究によって、暮らしの中で水素を使うことがぐっと身近になるかもしれません。環境にやさしい未来に向けて、また一歩前進したと言えそうです。

日本の「研究最前線」を読んだ後は、日本の「今」がわかる記事をまとめた、マガジンも見てみてね!

もっと水素の研究が知りたい人は、この記事も参考になるよ!


いいなと思ったら応援しよう!

ちょっといい情報
いただいたサポートは日本の「研究最前線」を製作するために使わせていただきます🙇‍♂️