珈琲の木 ~小さな母と3人の子供~ #1
今日、僕の中で大きな節目を迎えた。
この瞬間、目に見えるもの、聴こえる音、話す言葉、全てが今までにない初めての感覚である。
週に二、三回は通っている新宿の喫茶店で、グラスに水滴を纏うアイスコーヒーと向き合い、空気中の水分が温度の低下により液体に変わる現象をじっと見ている。背景には、喫茶店の象徴とも言えるような赤いソファと小汚いテーブル、ガラス細工で施された髪の長い女性と高貴な紳士が手を触れ合う絵が描かれた天井があり、そのレトロな雰囲気がより一層にグラスの表面に滴り落ちる水滴