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プロジェクトマネージャ試験を終えて

先月に情報系の国家資格であるプロジェクトマネージャ試験の合格証書をいただきました。今、感じていることや、プロジェクトマネージャ試験を受けてよかったことを記事にまとめたいと思います。

合格するとこんな合格証書がいただけます

1.合格証書をもらったときの感想

合格証書が送られてきたときの感想は、感無量でした。その理由は、7年前、経理と福祉しか経験のない素人が、情報部門へ行き、「用語が難しすぎて何言ってるか分からねぇ」と思いながら、日々の業務に耐えた過去に報いることができたと思うからです。努力を積み重ね、やっと、自分も情報技術をコントロールできる技量認定を受けたことが純粋に嬉しく思います。
現職では事務職員という一番下の役職なので、上のマネジメントの手間も増え、モチベーションを保つのが難しいことが時折あります。ただ、この資格に合格して、最下層のプロマネ公務員という異色の肩書を持って業務にあたることができるという新たなモチベーションの柱ができました。

2.プロジェクトマネージャ試験の構成

プロジェクトマネージャ試験はIPA(情報処理推進機構)が主催する国家試験のうちでは、最高ランクのITSSレベル4の試験で、高度試験と呼ばれるもののうちの一つです。試験体系はこちらに掲載されています。

試験内容は以下の構成になっています。

①午前Ⅰ

マークシート形式 50分 30問
応用情報技術者試験(ITSSレベル3相当)の試験問題が出題されます。
過去2年以内の、応用情報技術者試験の合格、高度試験の合格、午前1試験の通過で試験が免除されます。
100点満点で60点以上、もしくは、免除で午前Ⅱが採点されます。

②午前Ⅱ

マークシート形式 40分 30問
プロジェクトマネジメントやセキュリティに関する分野の試験問題が出題されます。
少しだけ専門的な問題が出ると思っています。
これ以降の試験は免除がありません。
100点満点で60点以上で午後Ⅰが採点されます。

③午後Ⅰ

記述式 90分 3問中2問回答
プロジェクトマネジメントなどの記述式の問題が出題されます。
実際のケーススタディなので、読んでいても面白いものがあります。
100点満点で60点以上で午後Ⅱが採点されます。

④午後Ⅱ

論述式 120分 2問中1問回答
テーマに沿って3,000字くらい論述して、A判定を取れば合格です。
体感は、題意に沿って論述していれば、合格できます。

3.プロジェクトマネージャ試験を受けてよかったこと

知識ものの多くは応用情報技術者試験のときに習得していますので、新たな知識を得たというよりは、意識すべき点をさらに意識するようになりました。

①目的や前提条件をさらに意識するようになった

例えば、試験問題にはこのような問題文がありました。

早急に顧客の不満を解消するためには, 2か月後のクリスマスギフト商戦までにAI ボットを運用開始することが必達である。 M社は, 短期間で導入するために, SaaS で提供されている AI ボットを導入すること, AI ボットの標準画面機能をパラメータ設定の変更によって自社に最適な画面機能とすること, 及び AI ボットの機能拡張は API を使って実現することを, 導入プロジェクトの方針とした。

令和4年度プロジェクトマネージャ試験午後Ⅰ問1

その後、3ページほど問題文が続くのですが、要はこの文章を読んで「2か月後に運用開始できなかったらアウト」「パラメータ設定の変更によって最適な画面にできる」ぐらいのことは方針として、読み取れます。
つまり、どんな設問がきても、2か月を超えていたらアウト、パラメータ設定で変更できなかったらアウトという内容を逸脱してはいけないことが、分かるのです。
実務においても同じで、決定した方針を違うことは原則行ってはいけません。ここを強く意識するようになりました。実際は方針と違うことをしている人、方針すら決めずに動こうとしている人はたくさんいらっしゃると思います。

②QCDをさらに意識するようになった

QCDとは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字を並べたものです。プロジェクトマネージャ試験勉強時に、品質、コスト、納期の記述は何回も目にします。必然と意識するようになります。公務員で仕事をしているとQCDのバランスを意識されている方は少ないと感じるのですが、このバランスは必須なのです。
先ほどの問題でも、簡単に書きますと「品質:パラメータ設定で変更できるもの」「納期:2か月」は分かりますので、「コスト:公務員のかけられる人件費の額と予算額」といった具合で当てはめることができます。QCDの意識は、管理職には必須と言えます。(管理職でなくとも、必要かとは思います)

③トレンドを学べる

例えば、試験問題にはこのような問題文がありました。

事業部門の幹部社員には、 現在のチーム作業のやり方で F 社の事業を支えてきたとの自負がある。 これによって, 幹部社員をはじめとした上長には支配型リーダーシップの意識が強く、 社員の意思をチーム作業に生かす姿勢が乏しい。 一方, 社員は,チームにおいて自分に割り当てられた作業は独力で遂行しなければならないとの意識が強い。 社員の多くは, システムは業務効率化の実現手段でしかなく,コストが安ければよいとの考えであり, DX の推進には消極的な姿勢である。
また,システムに対する要求事項を提示した後は、 日常の業務が多忙なこともあって,システム開発への関心が薄い。 しかし, 一部の社員は DX の推進に関心をもちこの環境の下で業務を行いつつも、 部門としての意識や姿勢を改革する必要があると考えている。

令和4年度プロジェクトマネージャ試験午後Ⅰ問3

この問題文をみて、「まさにうちの部署やん」と思いました。DX推進が求められる=今までの仕事のやり方は通用しないはず。という図式が成り立つのですが、過去の自分の仕事に固執するという状況はどこにでもあるようです。この内容が国家試験に出題されるのですから、一般的な話なのですね。
試験を受けると、こういったトレンドに触れることができるので、進むべき方向性がさらに意識させられます。
余談ですが、令和4年度秋期の応用情報技術者試験に、「パソコンを失くした後、1週間休暇を取得した後に、出勤時に紛失したことを報告した社員」が出題されました。当日Twitter界隈が大きくざわついていたのですが、そういう事故が起こりうるという警鐘なのだと思います。

4.試験状況と勉強法

私はプロジェクトマネージャ試験には2回目で合格しています。これまでの試験の経過と勉強法を振り返ってみます。

①1回目の試験(令和3年度)

私は応用情報技術者試験で300時間、ITサービスマネージャ試験で50時間勉強していますので、基礎固めは完了していました。(自信過剰)
1回目の試験は午前2対策のみ20時間勉強しました。

結果・・・。
午前Ⅰ:免除
午前Ⅱ:60点(ボーダーライン)
午後Ⅰ:60点(ボーダーライン)
午後Ⅱ:C判定で玉砕

流石に勉強時間が足りていませんでした。論文試験で、目的とQCDへの意識が甘かったと振り返ります。

②2回目の試験

さらに15時間午前Ⅱの勉強をした後に、午後Ⅱの論文試験の構想をしっかり練っていきました。

結果・・・。
午前Ⅰ:免除
午前Ⅱ:72点
午後Ⅰ:69点
午後Ⅱ:A判定で合格

実際には過去に経験したシステム導入について、目的や要件、QCDなどをしっかり頭の中で説明できるように整理していきました。
ちなみに合格論文を見て、書き方の体裁は確認していましたが書く練習はしていません(笑)

③勉強法

応用情報技術者試験の基礎固めがあれば、参考書を1~2周と午前2の過去問題で知識は定着します。(ちなみに技術者にとっては、私が3回不合格になった応用情報技術者試験は基礎固めだそうです。これはよく聞く話です。)
あとは、論文は過去の出題テーマを見てネタづくりに励めば大丈夫です。
知識習得や論文準備の中で「目的は何か」や「コストは?納期は?品質は?」などを考える訓練をしておけば、生きた知識が身につくと思います。

ちなみに参考書は以下のものを使っていました。

5.まとめ

どんな立場にいても、マネジメントの視点を持つことは、物事を円滑に進める上で有用です。試験を受けなくても、目的意識を持つこと、QCDのバランスを意識することで、大きくぶれない業務の進め方を身に付けることができるのではないかと思いました。
試験を受けると、限られた時間の中で、目的意識を持ち、行動を文字に落とし込むことを求められますので、力量を付けるという意味では有用であると思います。
最下層のプロマネ公務員は、これからも、持続可能なDX推進を頑張ります。

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