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レクター 広木大地さん「トライ・アンド・エラーが大きな成功を呼び込む」 | CTOに会う

こんにちは。SOLMUアドバイザーの村野です。
経営陣とエンジニア間の認識のずれを解消するにはどうすればいいのでしょうか。「エンジニアリング組織論への招待」(技術評論社)の著者で、さまざまな企業の技術組織アドバイザリーを務めている「プロCTO(最高技術責任者)」、レクターの広木大地取締役のロングインタビュー<後編>です。
▼前編はこちら

■「グレーゾーン」設けない

――広木さんは明快でクリアなコミュニケーションを重要視していくのが大事と主張しています。

ゼロサムの社会だと、なあなあにしようとする。白黒はっきりさせない。これって結構、明確な判断を避けたがる。今回の件がOKだったのか、そうじゃないのか、目標を達成したのか、そうじゃないのか。判断がはっきりしていて、それが共有されているのが透明化ということだ。
ソフトウエアは解釈の余地の幅がものすごく少ない言語を書く。業務とか会社のルールとか、機械が解釈できるくらいはっきりとした言葉で書く。共同でたくさんの人でメンテナンスしながら決めていく。
機械を動かすための命令を明晰な言葉で書くという作業。今まであいまいだった業務的な知見をはっきりとさせなきゃいけない。グレーゾーンをなくし、機械に代行させ、人間ではないものによって意思決定や業務を成立させるのがソフトウエア。ハードウエアの付随物として一回投資したら動き続けるものではない。
ハードウエアをちょっと柔らかくしたものがソフトウエアではない。「ウエットウエア」、脳みその中身をちょっと固くしたものがソフトウエアだ。脳みその中にある、あいまいな表現をいかにクリアで透明なものにしていくか。そうすると現代では最もコモディティなリソースである計算機にその作業を転換できる。
なぜエンジニアが求められているのかというと、一番コモディティなリソース、「AWS」などのクラウドコンピューティングサービスを使えば一瞬でたくさんのサーバーやコンピューターリソースを調達できる。人手不足の中でいきなり100人連れてくるのは難しいが、100台のサーバーを立てるのに10分かからない。そこに指示が出せる人って、バイト100人を仕切るバイトリーダーと同じ価値がある。
指示が出せるエンジニア一人で何十人の部下を持つのと変わらない能力がある。1人も部下を持っていなくてコンピュータに向き合っているだけなのに「なんでこんなに給料高いのか」と思われているかもしれないが、一番調達しやすいリソースに指示し、ちゃんとした成果を挙げる人に成果を払うのは当たり前ではないか。

日本でソフトウエアを作ろうとしたらグレーゾーンを排除していかないと完成しない。何が起きているか分からないから作りっぱなしで機械の付属物のようにしてしまう。業務ナレッジ(知識)という一番コアなノウハウを伝承するという重要なことが人頼みになってしまう。
ソフトウエアやプログラミングは形として残る。ソクラテスやプラトンの言葉を現在の人間が本で読み取ると解釈は人によって異なる。だが、今、書かれたソフトウエアは解釈の余地がなく、100年後も動作させるのは可能だ。一度作ったものが未来永劫、解釈のぶれなく残り続ける。企業や社会の中にあるナレッジはソフトウエアによる伝承がされてくる時代になってくる。
最近、(月面探査宇宙船)アポロのプログラムが公開された。シミュレーターで動かすのも可能だ。言葉や映像より雄弁に宇宙船がどのように動作したのか、ちゃんと再現できる。
人は分けたら増えるものを手にした。モノからコトやサービスといった社会になった。この社会のなかでどんなビジネス、経営をしていくのか。ルールが変わっているのに気づいてアクションしていかなければ、生き残れない時代になっている。

■失敗恐れず挑戦を


――「テクノロジーが大事だ」というのは多くの経営者が思っています。それがグレーゾーンをなくすことや知見をはっきりさせてコミュニケーションをしていくことと関係しているという実感までは持ちにくい。ちょっとした実感の積み重ねが大事で、「そういうことをしたらいいことがあった」という体験の積み重ねでしょう。壁になるのは「失敗を恐れる風土」ですか。

たとえばAという策とBという策がある。「失敗確率の低いほうを選ぶのが常識です」というのは理屈があるように思われる。でも失敗確率が高くても成功したときに実入りがいいならやってみる価値がある。
「失敗しないの?」と事前に確認するのは無意味だ。失敗するかもしれないし成功するかもしれない。失敗することを恐れるようになっていると、失敗しないことを選ぶインセンティブが高くて「失敗するかどうかわからないけど、とりあえずやってみよう」というのは非常識に聞こえる。
いろんなことに挑戦する会社は「失敗するかもしれないからやってみよう」というのが当たり前。この価値観の違いというか思考の流れの違いって結構根深い。
新規事業をやってうまくいかなかったら、初期のプランを変えればいいし。会社の損失が1000万円くらいだったら、そのくらいでやめられたらよかったねという話。
もうちょっとうまくいく方法があるのなら、それをやったらいいだけなんですけど、日本の企業は失敗しないように失敗しないようにって。入念に準備して10億円つぎ込んで始めてどーんとプレスリリース出したのはいいけれど、その時はだれもお客さんいませんでした。社内でも「一体なんのためにやったんだけっけ」「これ失敗するよねー」って空気になる。最初に考えた人は異動でいなくてとか。
一回も失敗しなかった人は成功しそうなことしかしなかった人。成功しそうなことって予想可能で、予想可能なことは当然ながら周りの人も思いつく。じゃんけんでグー出しそうなライバルしかないゲームって簡単じゃないですか。そこにグー出しているようなもの。そういうときにチョキやパーを出していくのがいい。
「みんながグー出しそうだ」と思うところに何年もかけて巨大なグーを出して負ける。小さい会社がパーを準備してたら負けちゃう。まだグー出しているならいいのだが、最悪なにも出さなかったり、グーとチェキが混ざったような手を出したりする。みんなが満足するようにしたり、失敗しないようにしたりする結果だ。

■いい学びから手数を出す

――広木さん自身も失敗の経験から学んでいますね。

ミクシイ時代にいろいろ新規事業を手掛け、10も20も事業を主導した。それまで数を打つ主義じゃなかった会社だったので、たくさんチャレンジをするという習慣をつけなきゃと思って。失敗しても、「失敗するよね」という感じでやっていくしかない。そうするとゼロイチで成功するか、失敗するか、いっぱい考えるスタッフが増えた。
元からあった力というかエリアを特定しないで成功するか失敗するか、お客さんに価値を与えられるか、そうじゃないかというピュアな部分だけにエネルギーが割かれる。非常にいいものが出てくるし、当時いろいろやっていたので残っているものもある。
これも自分のなかで「やってみよう」と思ってもこびりついていて、それってどうしてこうなのという部分出てくる。いかにして止めずに再現性の高いものに近づけるか。
僕の中でも成功や失敗体験があって。いっぱい打つんだけど、本当にスカだけ打ち続けてもしょうがない。そこそこいい学びをしながら、いっぱい手を打てると正解に近づける。
「失敗から何を学びますか」というのは技術でも一緒。障害が起きた時に「なぜ障害起こしたの」と言っても仕方なくて、次に起きないために何を学ぶのかについてフォーカスしたほうがいい。
最初にかける言葉は「失敗してもいいんだよ」といいながら「本当は何を学ぶのか」。二段階的に相手に理解してもらう。このトライ・アンド・エラーが大きな成功を呼び込む。

広木大地氏
レクター取締役。1983年生まれ。筑波大学大学院を卒業後、2008年に新卒第1期として株式会社ミクシィに入社。技術戦略から組織構築などに携わる。同社メディア開発部長、開発部部長、サービス本部長執行役員を務めた後、15年に退社。株式会社レクターを創業し、技術と経営をつなぐ技術組織のアドバイザリーとして多数の会社を経営支援している。
著書「エンジニアリング組織論への招待~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタング」は第6回ブクログ大賞・ビジネス書部門大賞を受賞。


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