私が英語で表現するときに大切にしていること

外国語で文章を書くとき、話をするとき、誰しも一瞬身構えてしまうものだと思います。母語でも自分から何かを発するというのは結構なエネルギーが必要ですが、慣れていない中で外国語でそれを行うのは倍以上のエネルギーが必要になります。
よく英語で何かをアウトプットする際に、「自分の言いたいこと/書きたいことが表現できない」という声や、「●●って英語で何て表現するの?」と聞くことがあります。
リスニングやリーディングのような受動的な学習と異なり、「英文を書く」、「英語で話す」というアウトプットは、学校のような環境や仕事で強いられでもしない限り、なかなか自発的に鍛えていくことは難しいです。
文法や単語力などいろいろなハードルはありますが、今回は英語学習歴20年越える私が、英語でアウトプットする際に大切にしていることについて書いていきます。

今自分が持っているもの

外国語でアウトプットをするうえで、目標にするのは母語と同じようなレベルのものが書けるようになることだと思います。私もそれを目指してずっと勉強しています。しかしそれとは別の視点で、アウトプットするときに大事にしていることがあります。それが以下の言葉です。

新しい単語を覚えることはもちろん大事だけど、あなたが知っている単語やフレーズの中で精いっぱい表現してみなさい。

この言葉は十数年前海外に住んでいた時、フランス語授業の先生にかけていただいた言葉です。当時、学校で外国語授業としてフランス語の授業があり、私も第二外国語としてその授業を受けていました。私はこの言葉を聞いたとき、とても驚きました。単語をどんどん覚えていくことが文章力を鍛えることだと思っていたからです。しかし先生は私の固定観念をひっくり返し、自分が今までの過程で学んできた単語、文法力、いわゆる今自分が持っている武器でどれだけ表現できるか、使いこなせるかが語学学習では大事なのだと教えてくれました。

一歩ずつ少しずつ

新しい単語を覚えたり、言い回しを覚えることは言葉を使いこなすうえでとても大切です。それで表現の幅が広がるのは間違いありませんし、より洗練された文章や会話を発することができます。しかし、それは母語と同じことを同じように外国語で表現しようと無理をしていることになります。
母語と同じレベルを最終目標として掲げることは全く悪いことではありませんが、最初から母語と同じレベルの文章、単語を発しようとするのはとても難しいことです。いきなり高いハードルを超えようとしても、超えるだけの力がなければそのハードルの前でうずくまってしまい、せっかくの「学びたい気持ち」がポキッと折れてしまいます。いきなり高いハードルを飛ぼうとするのではなく、今の自分が持っているもので精いっぱい伝えてみる、やれることをやることが回りまわって語学力の向上に繋がっていくのです。
自分が知りうる限りで表現することは、難しいですし言いたいことが言えないもどかしさもどこか感じてしまいます。しかしそれはある意味、今の自分の能力を客観的に見つめることに繋がり、その中でどれだけ表現できるかを考える柔軟な対応力が求められるということになります。そして自分が今持っているもので表現していくと、それがどんどん磨かれて研ぎ澄まされていき、揺るがない土台となっていきます。その土台はまわりまわって自分がさらに上へ登っていくための階段の一段となってくれるんだなと今は思います。

先生からこの言葉をいただいてから月日はずいぶん経ちました。私もいろいろ右往左往してぐるぐる回りながらも英語の勉強は続けていますが、この先生の言葉は今も私の中で大切な言葉になっています。
長年語学学習をしていると、自分のレベルが不安になってきたり、もっともっと新しい言葉を学ばないと、表現しないとと焦りが出てくることがあります。私もそんな一人ですが、そんな時は先生のこの言葉を思い出します。
今は外国語を学ぶツールも随分多様化してきており、新しい情報を取り入れやすくなってきています。でも少しだけ立ち止まって、自分が今持っているものを、培ってきたものを改めて見直してみることもおすすめです。

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