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$8 V3320 VCF - DIY Eurorack Modular Synthesizer

背景

自作モジュラーシンセの69作品目。

VCFには色々な種類があるが、最も簡単に安定したVCFを作るには、シンセサイザーに特化した半導体を使うのが良い。
これらの半導体はThonkで豊富な種類を扱っており、ワールドワイドで入手可能だ。しかし日本への送料は高額であり、最近の不安定な為替の影響も大きく受ける。

例えば、最も有名なVCO ICのひとつであるAS3340については、Thonkの販売価格が6.6€(1030円)に対し、日本の秋月電子では380円(2.44€)となっており、日本での販売価格は異常に安いのだ。

日本でシンセサイザーをDIYするには、日本で販売しているICを使用するのが、最も安価な手段であるといえる。

さて、日本で簡単に手に入るVCF専用ICは、私の知る限り以下の通りだ。
1.V2044
2.V3320
3.SSI2140
4.SSI2144
このうち、1,2は秋月電子で、3,4は電氣美術研究會から買うことができる。
V2044は過去のプロジェクトで既に作成した経緯がある。

よって、今回はV3320を使用したプロジェクトを企画した。

制作物のスペック

ユーロラック規格 3U 8HPサイズ
電源:25mA ( +12V ) , 25mA ( -12V )

V3320を使用したローパスフィルタ(LPF)専用のVCF。
レゾナンスを上げると自己発振する。サイン波のオシレータとしても使用可能。
Resonanceを非常に大きくすると、波形がサチュレーションして歪むので倍音が追加される。正弦波でKickを作る場合に、attack感が強くできる。

Freqency pot:カットオフ周波数の調整
Volume pot:Audio inの音量の調整。
Resonance pot:レゾナンス量の調整。大きくすると自己発振する。

Resonance attn pot:Resonance CVのアッテネータ。
Frequency attn pot:Frequency CVのアッテネータ。
微調整することでV/octをサポートする。
Resonance CV in:レゾナンスCV入力
Frequency CV in:カットオフ周波数CVの入力

Audio in:音声入力
Audio out:音声出力

製作費

総額約 $8
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フロントパネル $1.2
TL074 $0.4
V3320 VCF IC $3(420円)
可変抵抗 $0.3 * 5pcs
半固定抵抗 $0.1 * 2pcs
他(汎用部品は下記リンク先参照)

ハードウェア

基本的な回路はV3320のデータシートに記載があるので、それを流用している。データシートの回路図は15Vとなっているが、12Vでも動作する様だ。(フィルタの周波数特性に違いがあるかもしれないが、未検証)
また、Frequency入力やResonance入力は、過去に作成したV2044 VCFの回路を流用している。

VR5はカットオフ周波数の調整用の半固定抵抗。VR1をゼロに、Frequency CV入力が0Vの状態で、フィルターが閉じきる(音が聞こえない)ように調整すればよい。

VR6はV3320出力のオフセット調整用の半固定抵抗。V3320のOUT4pinの出力はオフセットされているため、VR6でオフセット電圧をリセットしてやる。
詳細はEddy Bergmanで解説があるので、そちらを参照すべし。

今回の回路設計に際しては、前述のEddy Bergman、electric druidで詳細な解説をしており、私も大いに参考にさせてもらった。

考察

3320 VCFと、2044 VCFの比較をしてみる。

1.コスト
2044 VCFが優れる。2044 ICの値段が安いためだ。

2.組み立て難易度
2044 VCFが優れる。フィルタ回路に必要な部品数が少ないため、組み立てしやすい。
V3320はSMDパッケージのため、はんだ付け初心者には組み立てが難しい。

3.耐ノイズ性能
3320 VCFが優れる。2044は扱えるオーディオ電圧範囲が小さく、入力時に大幅に減衰させ、出力時に大幅に増幅している。この増幅の過程で電源ノイズも増幅してしまうため、電源由来のノイズが音声に現れてしまう。

以上。
全体的にV2044が優れるので、初心者の人は2044 VCFを作成することをお勧めする。

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V3320 VCFのBOMと、回路図のPDF、追加の写真はPatreonにアップロードしている。

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