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富山・魚津で「ワーケーション」なるものを

はじめに。――能登半島地震をうけて

2024年1月1日に起こった能登半島地震。多くの方が亡くなり、今もたくさんの方が被災され、避難生活を余儀なくされています。一刻でも早く復興が進み、被災された方々にとって少しでも心休まる暮らしが戻ってくることを祈っています。

この投稿では、2023年12月10日から6泊7日で訪れた富山県魚津市のあれこれを綴っています。魚津は富山湾に面していながらも、今回の地震では幸いにも大きな被害はなく、すでに日常生活に戻られている方がほとんどだといいます。

一方で、旅行予約の多くがキャンセルとなり、観光収益の落ち込みに苦戦しているそうです。

1月中に富山で過ごしたあれこれを投稿しようと思っていたものの、今回の震災で魚津の状況がわからず、公開を控えていました。ですが、滞在時のホストファミリーから現在の様子を伺い、UPしよう! と思いました。

魚津で、見て、食べて、体験して、ステキだ!と感じたものたちが、富山に行きたいという方、富山を応援したいという方、魚津のワーケーション、興味ある! という方の参考になれば幸いです。

哀愁ただよふ〈魚津漁業協同組合〉前にて。

好条件すぎるワーケーションプラン「魚津市」にあり

「富山県で、助成が出るワーケーションプランがあるみたいよ」と、夫がメッセンジャーでURLを共有してきたのは2023年9月頃。

私が「移住ってどう思う?」「東京以外にも拠点を持てたらなあ」「●●県でワーケーションの助成やってるんだって」などなど、ことあるごとに呟く私の影響を受けてか、東京生まれの夫も、案外地方での暮らしは自分ごとなのかも……? と、思い始めたのかもしれない。

そのワーケーションプランは、6泊7日の滞在で、宿泊施設は1棟貸し。コワーキングスペースも用意されていて、地元の保育園に子どもが預けられるうえに、申請が通れば対象経費の半分を県が助成してくれるというのだ。

夫も、私も、基本的には在宅仕事。それに数年前から「いつかは富山で寒ブリをたらふく食べたい!」と話していたので、場所もナイス!

「私が申請など全部やるから、申し込んでみる?」と提案すると、夫も乗り気に。すんなり夫婦間で話が通った。

ということで、林家初となる「ワーケーション」が実現に至ったのである。

せっかくだから「5つのテーマ」を設けてみる

場所を「魚津市」に定め、各方面に問い合わせ・申請。ホストファミリーとのzoom面談もあった。

助成金の申請はすんなり通り、東京⇔富山の交通費、レンタカー代、宿泊費、保育料、コワーキングスペース代などの50%の助成が認められた。
あらかじめ、経費計算をして申請書を書くのは少し面倒だったけれど、手続きの煩雑さはそこまで感じず。

さて。我が家にとって初となるワーケーション。今後、林家が他エリアに移住or拠点を構えるかに大きく関わる体験となるので、今回のテーマをざっくり定めることにする。

  1. 東京を拠点としない暮らしが我が家に向くのかを検証

  2. 子どもが違う環境(他地域での暮らしや、新しい保育園など)に馴染めるかの検証

  3. 富山ならではの経験がしたい

  4. 寒ブリをはじめ、富山グルメを堪能したい

  5. ワーケーションのメリット・デメリットを検証

富山ではこの5つを検証&楽しむのだ! もろもろ準備を進め、12月10日、富山県魚津市に向かった。

「新幹線乗るの怖い~!!」とホームを走って逃げ出ようとする娘と、「乗り遅れる…!!」とあせる親。

NHK富山の撮影からスタート

実はホストファミリーから、「実は今、NHK富山の密着取材を受けていて。林さん家族の到着時を撮影させてほしいんです」と事前に連絡をいただいていた。ホストファミリーって、一体何者……? と思いつつ「映りこむ程度なら」とOKを出すことに。

当日、宿泊拠点となる「渚泊 魚津丸(以降、渚泊)」に到着すると、ホストファミリーとNHKのディレクター兼カメラさんがスタンバっているのだった。

「はじめまして」の挨拶やら、渚泊への入館やら、マカロン型のクッションにダイブする娘の姿やら、感嘆の声を上げ、館内の扉という扉をすべて覗いて回る夫婦の様子やらがすべてカメラに収められた。

マカロン型クッションにダイビング・ボディープレスをキメる。というか、滞在拠点がめちゃキレイ。

また、到着日のホストファミリー宅での歓迎会、翌日の子どもの保育園初登園、コワーキングスペースでの仕事風景など、「我々が密着されてる……?」と思うほどにたっぷり撮っていただき。想定外だったけれど、TV撮影に遭遇することなど滅多にないので、いい思い出に。

ホストファミリーの〈ココママ〉って?

ところで、NHKから取材を受けているというホストファミリーは何者なのか。

彼女らは、魚津市へ移住してきたフリーランスのママ達を中心とした地域活性サークル〈cocomama(ココママ)〉のメンバーで、ホストファミリー業務は市からの受託で行っているのだとか。

聞けば、マカロン専門店オーナー、カフェ経営者、フォトグラファーを生業とするメンバーが、富山で企業した女性たちの支援につながるマルシェを定期的に開催したり、地域の人口減少を考える催しや、婚活イベントなどを開催しているとか。そのバイタリティにただただ驚く。

ココママ代表・大島さんが経営するマカロン専門店の外観。ゾウガメ(オブジェ)にどんな意味があるのかは聞けていない。

そんな彼女たちの活動を紹介したいと、主にココママ代表の大島さんがNHKの密着取材を受けているのだった。

大島さん宅での歓迎会にはココママメンバーも集合。とにかく皆さんフレンドリー。はじめまして、でしたっけ……? ってくらいの親近感。見ていると、彼女たち同士の信頼関係の築き方もすごい。

ああ、もしかしたらここは自分の居場所になりえるのかも……。不思議とそう思える安心感がココママにはあるのだった。それってすごいことではなかろうか。

TVで我々は「東京から来た40代夫婦と3歳の娘さん」とご紹介いただきました。

「オシャレ一棟貸」に泊まる

10メートル先は富山湾、という一棟貸しの宿泊拠点「渚泊 魚津丸」。期待高まるオシャレな外観。

すぐ側にある〈魚津漁協共同組合〉の所有棟で、研修で使ったり、Airbnbでの予約者も泊まったりするのだそう。最大宿泊者数は16名。そこに林家3名が宿泊。広すぎる~。

富山湾側は全面ガラス張りの「渚泊 魚津丸」。3階建てに見えるけど、じつは2階建て。

キッチンには冷蔵庫、電子レンジ、トースター、炊飯器のほか、鍋や包丁などの調理器具、器類、カトラリーなども揃っているので自炊が可能。

お風呂場にはシャワーが3基、洗濯機・洗剤類も完備、トイレも3か所。

風呂場や脱衣所もとにかく広い。

近年完成したばかりという、木材をふんだんに使った館内はとってもキレイ。ケッペキな夫も「めっちゃいいじゃん」とご満悦。Wi-Fiもスムーズに使えるのはポイント高し!

マカロン型のクッションがえらく気に入った娘。クッションを積み重ね、椅子からダイブするなどハードに遊ぶ。散歩に出かけてもずーっと「フワフワの丸いので遊びたい」と言い続けるのだった。

かわいい子には旅をさせたほうが、やっぱいい

今回一番の難関だろうと思っていた子どもの保育園。でも、やっぱり子どもってすごい。あっという間に馴染むのだった。

お寺が運営している「川原保育園」が預け先。ドキドキしながら園に向かう私。どこに連れて行かれるのかよくわかっていない娘。

園に到着するやいなや、娘はいつもと違う遊び場やおもちゃに興味深々。先生も、子どもたちも、めちゃくちゃウェルカムな雰囲気。娘は子どもたちに手を引かれながら教室へ。「バイバイ」をいう暇もなかったほど。

先生からざっと説明を受け「あとは任せてください!」の雰囲気が頼もしい。さらにその日のお昼すぎに園から電話があって、登園後からランチまでの様子が報告された。先生、親のドキドキな気持ち、めちゃくちゃわかってる!

夕方お迎えに行くと「明日は(何するの)?」と質問してくる娘。「明日もここの保育園だよ」と答えると「やったー!」と喜ぶのだった。

皆の前で人生初?の自己紹介シーン。普段通う保育園へは「踏切を通って行く」と紹介したらしい。「そこ⁉」と驚くとともに、子どもの視点ってやっぱりおもしろいと感じた。(画像提供:川原保育園)

いろんなことに身構えがちな大人と違って、あれこれ考えたり、空気を読んだりせず、純粋にその時を楽しめる子どもたちがとても眩しい。

「もし登園を嫌がったら…」という想定案を夫婦で考えていたけれど、結局、月~金曜の5日間フルで登園し、彼女も楽しんでいた。

園での様子を毎日写真に撮っていただいていたようで、最終日にはそれらをCD-Rに焼いてプレゼントしてくださるという……!! 忙殺に忙殺を重ねる保育園の先生方からこんなサプライズがあるとは(泣)。川原保育園でよかった~。

最終日にいただいたものたち。

親が思っているより、子どもは強い。順応力あるし、そして学んでいる。彼女にとって大冒険の5日間だったと思うけれど、おかげでひと回り大きくなったような気もする。「かわいい子には旅をさせろ」ってほんとかも。もっといろいろ冒険させてもいいのかも。

三味線の音も心地いい「コワーキングスペース」

コワーキングスペースを有する〈村木公民館〉。神殿か。

ワーケーションがテーマですから、お仕事ができるスペースもちゃんと用意されてある本プラン。もともとは小学校だった校舎が、会議室、学童スペース、コワーキングスペースなどを含む公民館として活用されていて、その一室を利用させてもらった。

Wi-Fiも問題なし。オンライン会議が多めの夫も不自由なかった様子。あてがわれた2階の部屋からは立山連峰も望めるのだ。

地域の方にしっかり利用されている施設らしく、午前中には三味線&民謡クラブのご年配の歌声が、午後には学童利用の子どもたちの声が、遠くから微かに聞こえてきて、なんだか心地いい。

通常なら有料利用とのことだが、本プランなら5日間利用して、無料。ありがとうございます。

教室を2つに区切ったコワーキングスペース。

ちょっと後悔&もっと食べたい「富山グルメ」

“天然のいけす”といわれる富山湾ですから、魚介を堪能せず帰るわけにはいかないんですよ。ところが、実はそんなに食べられなかったんだよなあ……。

他県で自宅のように暮らせるか?というテーマもあったので、今回は自炊多めにしたのだが、それが失敗だったんだよなあ……。

スーパーで野菜やら富山のかまぼこやらいろいろ買っても、到底一日で食べきれるはずがなく。結局翌日に持ち越して。そうすると2日連続同じものが食卓に並んで。あ~あ。

二回目の自炊飯はブリの塩焼き(身が崩れた…)と紅ズワイの身。これはこれで美味しかったのだけれど。水色の蒲鉾って普段の食卓には無い色なんで、異様さが際立っていい感じ。
サイダー味。


(うそ)

1か月くらい滞在するのだったら大いに自炊したい。でも1週間程度なら外食中心が満たされると思う。とても勉強になった。

でもやっぱり、文化の異なるエリアのスーパーは楽しい。魚市場も楽しい。東京とは品揃えと迫力が違う。魚たちの顔も違って見える。

ゲンゲに久しぶりに再会できたのも嬉しかった。富山で出会ったグルメは以下リンクで紹介しています。

魚津は清らかな水のまち

鴨川

魚津市内を散策していると、家々の玄関脇などに水場があったりして、常時水がじゃぶじゃぶ流れているのだった。市内には「鴨川」が流れているし、片貝川の伏流水という「てんこ水」もあったりで、そこかしこに水資源が。そのせいか、まち全体が清らかな印象。

てんこ水の湧水地

アーケード通りには、魚津のイメージキャラクター「ミラたん」が、それぞれの業態に合わせたアイテムを持ってウインドウを飾っていて、なかなか芸が細かい。

漆器屋さんには漆器を持つ?ミラたんのイラストが。

お店のシャッターや通りには、パブリックアートと言っていいのか分からないけれど、イラストや絵が点々と。通りの地面に描かれた海洋生物もちょっと可愛い。

まちの風景も「シンプル」という言葉がなんとなく合う気がする魚津。通りの広さも、お店のあり方も、人の距離感も、いろいろ丁度よくて、ホストファミリーが「住みやすい」というの、わかる気がする。

まちの情報は以下リンクでご紹介しています。

福祉とアートの「自主取材」

今、力を入れている仕事のジャンルに「福祉」や「アート」があって。せっかくなら富山でしか出会えない福祉、アート、人に会いたいと思っていた。

調べると、高岡市にめちゃくちゃユニークな活動をしているNPOを発見。代表の方にアポを取って会いに行った。その話はまた別の投稿にて

ユニークな活動を行うNPOのひとつの取り組みにガチャガチャがあってですね。

そして、偶然なのか必然なのか、ココママメンバーが歓迎会に持参したお酒が「福祉」や「アート」をテーマにした一本で、ドンピシャすぎてびっくりする。

後日、そのお酒を醸造する〈魚津酒造〉の杜氏さんにお話を伺うことができ、その情報を〈マガジンハウス〉が運営する、福祉をたずねるクリエイティブマガジン〈こここ〉で紹介しています。

富山の余韻にひたりたい「お土産」

今回購入した「富山みやげ」を別投稿にまとめる予定。
投稿したらこちらにもリンクを貼るので~。

ビーバー大好き。

ワーケーションはあり?なし? テーマの検証結果

まだまだ書きたいことはあるけど、すでに5000文字強……。いい加減長い。
ひとまずは5つのテーマに対して、どんな答えが出たかも書いておかねば。

1.東京を拠点としない暮らしが我が家に向くのかを検証
宿泊拠点が快適で、Wi‐Fiが問題なければ、案外どこでも暮らしていけるような気がした。

……や、私は地方出身ってこともあり、地方の暮らしというものは大まかにわかるので、割とどこでも暮らしていけると思っているんだけれど、問題は地方で暮らしたことがない、江戸っ子の夫なのである。

でも様子を見ていると、宿泊拠点のキレイさ&Wi‐Fiの問題さえクリアすれば、2拠点生活なら案外いけるのでは? なかなか楽しそうな夫の様子を見ていて、そう感じた。

2.子どもが違う環境(他地域での暮らしや、新しい保育園など)に馴染めるかの検証
全く問題なし! 子どもはすごい。大人の心配など、無用なのだ。むしろ、もっと旅をさせたい。

3.富山ならではの経験がしたい
魚津に限らずあちらこちらを周ったり、富山でしか会えない人と話したり、この場所ならではのいろいろに出会えた。

ライターという仕事柄、興味の幅は広く持っている方だと思うし、アポとって会いに行くのは朝飯前。それらをワーケーションでも生かせたのは、今回の出来事のなかでも満足度の高い部分かなあ。

4.寒ブリをはじめ、富山グルメを堪能したい
食はもっと楽しみたかった……。胃腸炎にさえならなければ……。地元のラーメン屋とか、とんかつやとか、地元の方々が行くようなお店にもっと行きたかった。「自炊はほどほどに」というのは今回の教訓にしたい。

5.ワーケーションのメリット・デメリットを検証
帰宅してから、あれやこれやと考えた。初めての富山、楽しかったし、美味しかったし、得るものも多かったなあ。でも考えてみるとアレだなあ……と、いろいろな思いが拮抗するのだった。

まずは結論、メリット、デメリットを挙げておくことにする。

【結論】
なんだかんだで、
旅は旅、仕事は仕事、としたい。
(我が家に限って言えば)

【メリット】

  • 非日常のなかで、仕事の効率が上がる気もする

  • いつもと違う食が楽しめる

  • 他地域の文化、歴史を知ることができる

  • ご縁、つながりが広がる

【デメリット】※あくまで個人的な感想です

  • お金はどうしてもかかる

  • 仕事を休む日を設けなければならない(つまり、所得減の可能性あり)

  • 自治体の助成金を活用すると、SNSなどへの投稿を求められる

  • アンケートが多い


まず【結論】について。
これは滞在期間にもよるのだけれど……。
たとえば、1か月以上滞在するならワーケーションはありだと思う。平日はしっかり仕事して、週末には観光を楽しむ。それを4回ほど繰り返すことができるのだから。

一方で1週間ほどの滞在の場合、平日はしっかり仕事をするならば、観光はほとんどできない(週末はワーケーション先と自宅の移動に費やすことになるので)。観光もしたいなら、会社員の場合は平日に有給をとったり、フリーランスの場合はNO仕事デーを設ける必要がある。

休んだ分だけ所得が減る、旅費がかかる、ということで、経済的に余裕がないとなかなか難しい。

結局のところ、旅は旅、仕事は仕事、とメリハリを持たせた方が我が家には合っているだろうな、という結論に至った。


【メリット】については、やっぱり普段の暮らしから離れることは、新鮮さがあって楽しい。仕事をする環境が違えば、背筋がピシっと伸びる感じもするし、効率も上がる気がする。その土地の食など異文化に触れるのも好奇心がくすぐられるし、この機会がなかったら出会うことのなかった方々とのコミュニケーションもやっぱりうれしい。ワーケーションだとしても、旅らしい醍醐味はそれなりに味わえる。その点は大きなメリット。

【デメリット】については、やっぱりお金は出ていくのみ。助成金が用意されている自治体も増えているけれど、現地の魅力についてのSNS投稿など、見返り的なものは求められる(そりゃそうだ)。普段からSNSなどで発信をすることを厭わない方にすれば何の苦でもないかもしれないけれど、SNSが大の苦手(投稿だけでなく、見るのも苦手)な私にはハードルが高い。高すぎる(今回は夫にSNS投稿してもらった)。

あと、アンケートが多いのがな……。結構時間かかるじゃないですか。各方面から、紙ベース、オンラインベース、ワードベース、エクセルベース……何回同じこと書いただろう。とはいえ、アンケートを書くのはいいのです。でも、せめて、ひとつに集約してほしい!


なにはともあれ、行く前からワクワワして、行ったら楽しくて、美味しくて、元気がでて、ああ行けてよかったわ、また行きたいな、ワーケーション。

と思う一方で、なんだか、どこかで、格差社会も感じずにはいられないワーケーション。

いろんな思いが拮抗するけれど、メリットもデメリットも自分事として腹落ちできたので、結果的にはすばらしい経験になったと思える。心から。

また行きたいな、魚津。
必ず行きます、魚津。


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