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「から」

仕事ができないから
貧乏だから
コミュニケーションが苦手だから
顔が不細工だから
勉強が苦手だから

あの子は振り向いてくれないんだ
私は人よりも劣ってるんだ
お前はいつまでもそんななんだ

いろんな「から」に
正当性を注ぐ

部下なんだから我慢するべきだ
食わしてやってるんだから口出しするな
お兄ちゃんなんだから我慢しなさい
あいつ変な奴だから無視しようぜ

心の器からあふれた熱湯は
ほか誰かの器へと流されて行く

じゃあ、最後に「から」を受け止めている人はどうなるんだろう

きっとその人は誰かに我慢をさせるような人ではないから
冷え切った「から」をひとりで受け止めて
ひとりで空に消えていくのだろう

海が羨ましい
雨を受け止め
空に返して
川に注ぎ
魚を泳がせ
何も言わない

彼がいつか人生を終えたときに
「頑張ったね」と抱きしめてくれる
そんな誰かがいてほしい

彼の我慢を受け止めるでもなく
受け流すでもなく
どこまでもからのままで

あなたはあなただから
あなたなんだねと

いつか彼のからに入ったひびが
暖かい優しさで満たされますように

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