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忘れていく 【詩】

忘れていく
嫌でも忘れていく
忘れたくなくても
覚えていたくても
どうしようもなく忘れてしまう
きっとそれが生きる事で
今生きている事なんだとも思う

忘れてしまっても
なかった事にはならなくて
誰かの記憶にこっそり登場してたり
どこかで誰かと笑ってくれていたり
愚痴られていたり

私の中にもひっそりと息を潜めていて
時々こっそり顔を出す

暖かかった時間
冷たかった時間
痛かった時間
面白かった時間
寂しかった時間

思い出す時
はっとする時
多分、言葉と心の間に
記憶は息づいている

息継ぎする間もなく
次の瞬間には過去になる

馬鹿だな
忘れないようにした痛みも
すっかり忘れて
繰り返していく

でもきっとこれでいい
古傷を眺めて
転ばないようにしていても
私のことだ
次は頭をぶつけてしまうだろうから

馬鹿な私のまま
転んで擦りむいて
たくさん泣いて
誰かに助けてもらって
また立ち上がって
走って家に帰って
お母さんに怒られて
お風呂に入って
美味しいご飯を食べて笑って
幸せな気持ちを抱えたまま
全て忘れて眠りに落ちる
きっとそんなことを死ぬまで繰り返していく

また朝が来る
ぬるい記憶を携えたまま

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