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#14 フリーランス始めました


ちょっとせつない、会社員としての最終日

泣いても笑っても、これが最後だ。これでぜんぶ終わるんだ。

いざ終わるとなれば、ちょっと淋しかったり、名残り惜しかったりもする。
人間ってやっぱり勝手だよな。どこまで無いものねだりなんだろう。
でもこれは、悩みに悩んで、迷いに迷った末に、自分で決断したことだ。私にとっては前向きな選択だったとも言える。そんな決断に、後悔があるはずもない。

8年勤めた会社の最終日。
お世話になった直属の上司に電話で挨拶をし、休職前の職場のメンバーのみんなや、その前の現場でお世話になった人たちへ退職の挨拶メールを送った。

私の休職をおそらく知らないであろう、昔の現場でいっしょだった人たちからは丁寧な返信を頂いた。
休職前の職場でいっしょだったメンバーからは、ひとりだけ返信があった。それはあたりさわりのない無難な内容だったけれど、それでも嬉しかった。だけど、10人ほどに送って返信がたったひとりとは、やっぱり淋しいものがあった。

メンタル不調で休職したうえでの退職だから、相手もどんなテンションで接したらいいのかわからないんだろうな。
自分の言ったことで、何か変な影響でも与えてしまったら嫌だって思うだろうし。

うん、そういう気持ちは理解できる。だから、仕方ないと思う。
私ももし立場が逆だったとしたら、たぶんそう思ってただろう。

だけど現実は、休職する前の元気だったときよりも、いまのほうがずっとずっと元気なんだけどな。だから、変に気を遣ってもらう必要もないんだけどな。
でも、そんなことも私からは言いづらいし、言ったところでやっぱり気を遣われるんだろうし。

複雑な想いが交錯する。あぁもう、面倒くさいな!

きっとみんな忙しいんだろう。だけどちょっと淋しい。6年間も勤めてきた現場だったのにな。最後はこんなもんか。
現場を離れてすでに1年が経ってしまったいま、彼らにとって私はすでに「過去の人」なんだろうな。
離れていった人間、辞めていった人間って、こうしてあっさりと忘れられるもんなんだ。

とてもいい雰囲気の職場だった。本当にみんないい人たちばかりで、大好きだった。ずっと仲良くやってきたのにな。
会社を辞めても仲良くできたらいいなって、社交辞令とかじゃなくそう思ってたから、やっぱり淋しいな。

でも、連絡をとろうと思えばいつでもとれるわけだし、もうちょっと様子を見てみようと思う。でも、あんまり期待はしないでおこう。そうしよう。
仲良くしたいと思ってるのは私だけかもしれないしね。悲しいけど。

こんなかたちで職場を離れてしまったのが、いけなかったのかもしれない。
だけど、いまさらそんなこと言ったってどうにもならない。あのときはもう、そうするより他にどうしようもなかったのだから。

休職せずにもう少しだけ頑張って、無理なら普通に退職するか。
いったん復職して、しばらく頑張ってみて無理そうなら退職するか。

できることなら、そのどっちかにしたほうがよかったのかな。
だけど、無理だったんだよ。だから、仕方なく休職したんだよ。それができてれば、休職なんかするわけないんだよ。

あとほんの数か月、私が我慢できていれば、この先もずっといい関係が続いていたのかな。

体調を崩して長期間休んでるんだから、相手にすればどうしても気を遣うだろうし、接しにくくなるのは間違いないよね。
付き合うなら、やっぱり健康な子がいいに決まってるもんね。
一度でも病んでしまったら、できるだけ関わりたくない、接触したくないって思われてしまうんだろうか。敬遠されても仕方がないんだろうか。

だけど、メンタルを病むということは、決して特別なことじゃない。
誰にだってあり得ることなんだって、みんなわかってるのかな?

私だって、まさか自分がこんなふうになるなんて思ってもみなかったんだから。私みたいにポジティブ思考で前向きで明るい性格でも、こんなふうになっちゃったんだから。自分はタフなほうだって思ってた。どっちかっていうとメンタルも強いほうだと思う。でも、実際はそれほどでもなかった。こんなに簡単に、調子って崩れてしまうものなんだって思い知った。

っていうか、私の場合は発達障害の二次障害によるものであって、メンタルを病んだっていう感覚は私自身にはほとんどないんだけどね。まぁ、今回は身体を壊したわけじゃなかったから、身体じゃないならメンタルか。その程度の認識なのだ。

そうは言っても、1年も休職した末に退職したということは紛れもない事実なわけだ。第三者から見れば、印象がいいはずないか。


上司と電話で話して、
送りたい人にメールを送って、
他にやり残したことがないか、しっかり確認して。

会社員としての私の最終勤務が終わった。
これで終わった。私の最後の大仕事。終わってスッキリした。
朝から夜まで会社の用事してて、まるで久しぶりに勤務してるみたいだったな。

お疲れさまでした、私。
ちょっとせつない一日だったけど。今日はよくがんばった!!!

明日から完全フリーになると思うと、不安がまったくないと言えば嘘になる。だけど、やっと肩の荷が降りて文字どおり自由になったと感じる。清々しい気分だ。


退職後初のクリニックで、主治医が私に言ってくれたこと

しばらく私はちょっとモヤモヤしていた。
退職して1週間ほどが経ち、会社を辞めてから初めてクリニックへ。診察の際に、会社を退職したことを報告した後、私の胸にあるモヤモヤについて主治医に話してみた。すると、

「わかってくれる人はちゃんとわかってくれるし、そういう人とは続くものですよ。離れていく人は、残念ですがそこまでの関係性ではなかったということです。いろんな人がいますからね。合わない人のことをいろいろ考えていてもしょうがないですよ」

先生は、私が頭の片隅でぼんやりと考えていたことを、ハッキリと言葉にしてくれた。それは、私が誰かに言ってほしかったことだった。

あぁ、まさにそのとおりだよな。
自分でコントロールできないことを、いつまでも考えていてもしょうがない。それよりも、この先の人生で出会うであろう人たちとのことを考えたほうが賢明だ。

ただ、大好きだった職場のみんなに、ちゃんと挨拶がしたかったな。迷惑をかけてしまったお詫びと、これまでお世話になったお礼を、ちゃんと伝えたかった。最後の日にメールで伝えられただけマシだけれど、できれば会って話したかった。それがいちばんの心残り。

休職前は引き継ぎでバタバタだったし、とにかくしんどくて、とても挨拶ができる状態ではなかった。それに、会社に戻るとも辞めるともなんとも言えない宙ぶらりんな状態で、どんな挨拶をすればよかったのだろう。

きっとまた、いつかどこかで会えるよね。
私に変な気を遣う心配がなくなったら、前と同じように接してくれるだろうか。
「そのうちまた会える」って信じて、いまは大人しく待っていようと思う。


これでやっと前に進める!

これからは、もう何も遠慮することはない。自分の「得意」を活かして、自分の好きなこと、本当にやりたかったことを叶えるために、私は前に進むと決めた。

10代のころから、もの書きになるのが夢だった。
文章を書くのは好きだし得意だし楽しい。学校でも小学・中学・高校と、ずっと文章を褒められてきた。そしていつの頃からか、私はもの書きを志すようになっていた。

私には、「無」の状態がない。
ADHD特有の脳内多動のおかげなのか、想いや言葉は次から次へとあふれてくる。私の頭のなかにはいつもいつでもいろんな言葉が飛び交い、駆け巡っている。夜になっても脳内多動が止まらなくて、寝付けなくなることもしばしば。
それを忘れないよう書き留めるのも一苦労で、あちこちに書き散らした言葉たちをまとめるのは、ADHDの特性で片づけや整理整頓が大の苦手である私にはさらに骨が折れる作業ではあるのだが。

私のクリエイティビティな部分は、間違いなくADHDの特性が支えている。だから私は、ADHDの症状を無理に抑えようとは思わない。これがなくなると、私らしさもいっしょになくなってしまうような気がするからだ。


私の夢は、自分の書いたものや歌ったもの、自分の想いを作品にしてこの世に遺すこと。自分がこの世から去った後にも遺るものを作り上げること。
自分がこの世に生きた証を遺すことが、私の生きている意味なんだとずっと信じてきた。

その夢を、叶えるときがきた。

2023年7月、ついに念願の作家デビューを果たす。今月中の出版を目指して準備を進めているところだ。
出版するといってもKindleの電子書籍なんだけどね。しかし、これで私も立派な作家の仲間入りだ!
ここまで、あまりにも遠回りしすぎた道のりだったけれど、「40代までに作家になる!」という目標をついに実現することができて、とっても満足している。

でもまさか、発達障害をテーマにしたものを書くことになるとは思ってもみなかったんだけどね。
これもアスペルガーのおかげで、普通の人たちにはなかなかできない貴重な経験ができたからこそだと、私はそう思っている。

私にしか書けないこと、私だから書けることが、きっとたくさんあるはず。
私が書くことは、きっと他の誰にも書けない。AIにだって書けやしないだろう。たとえAIがどんなに発達しようとも。

私にできるやりかたで、生きづらさを抱えた人たちの心に寄り添いたい。私の持てる知識や経験と得意なことを存分に活かして、誰かの力になりたい。そんな想いを綴って、作品としてこの世に遺したい。

そしていつか、出版社からも本を出すんだ!
私はSNSやメディアで引っ張りだこの「もの書き」になる!
並行して音楽活動も続けて、ライヴや音源のリリースもするんだ!

夢は膨らむばかりだ。

発達障害をきっかけに、私の世界がどんどん広がっていく。
それが面白くて、楽しくてたまらない。

転んでも転んでも、私は起き上がる。
どんなにやらかしたって、立ち上がってみせる。
たまにヘコんでも、どこまでも前向きに、そして自分らしく。
明るく強くたくましく、アスペルガー人生を突き進むのだ。

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