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好きな人と一緒に予備校に通うことに酔っていた高三の冬

"受験"と聞くと、思い出す淡い恋。高校三年生のわたしには正直、勉強なんかどうでもよくて、好きな人に振り向いてもらえさえすればそれが受験のゴールだとすら思っていました。

周りの友達がそわそわと受験を意識し、勉強を始めたのが高校三年生の夏前で「とりあえずやっとくか」くらいの気持ちでわたしも参考書を買ったり、NHKのラジオ英会話を聞いたりしていました。

夏期講習から通い始めた予備校は電車で三駅離れたところにあり、徒歩圏内に小学校~高校があったので、初めての定期券を手に入れただけで大人になった気分になってみたり。

それから秋になって、いよいよ本腰を入れて勉強するモードに学校のクラス全体がなってきたときのこと。

席替えをしたとき、隣の席になった男の子(通称:さくちゃん)と同じ予備校に通っていることが分かり、仲良くなりました。

一緒に予備校に行ったり、自習室で隣同士になったり…一緒にいる時間が増えるにつれ好きな気持ちも少しずつ芽生えることに。

志望は違うものの、偏差値レベルが近い大学だったので講座も被ることが多く、同じ空間に入れるだけでもうれしかったです。

さくちゃんは中型のバイクに乗っていてバンドマン、茶髪で見た目はヤンキーなんだけれど、つるんでいる友達は大人しいタイプでギャップがありました。

高校生でバイクに乗っていることが大人に感じて、背伸びをしている彼自体がかっこよく感じたものです。

年末年始は勉強の時間が多く取れるので受験生は追い込むものだと思ってましたが、さくちゃんは時間があるからこそ働くと言い、クリスマスもサンタの格好をしてピザーラの配達に励んでいました。

今思えば、口癖が「時間がない」「忙しい」だった彼は、勉強もバイトも遊びもやっていたものの、全てが中途半端。それでも当時のわたしは勉強一筋の友人たちと比べ「がんばってる姿が素敵」とまで思っていました。

センター試験の前日さえもバイトとギターの練習をしていて「仕事と学業の両立が出来てスゴイ!」とまで思い、たまに予備校で会えた時は彼を労い、励まし続けました。

そして運命の合格発表の日。二人して不合格になりました(笑)

予備校に通っているだけで勉強した気になっていたわたしと、予備校に通うためにバイトしてストレスをギターで発散していたさくちゃん。

はたから見れば想定内な結果だと思いますが、今まで学校の試験は何とかなってきた我々からすると、そこで初めて受験勉強の厳しさを知りました。

結局、わたしは最初の受験に落ちた後に「恋なんかしてる場合じゃない!」と本腰を入れて勉強し、志望校に何とか滑り込むことが出来ました。

彼はと言うと、どこかの大学には入ったようですがその後について全く覚えていない始末。

なぜならいつの間にかバイト先の人と付き合い、よりバイトに励むようになったと聞いてから、氷点下レベルに彼への熱が冷めてしまったんですよね。。

今回「受験」というテーマで考えた時、まっさきに思い浮かんだのが勉強ではくて彼でした。

受験と恋愛という誰もが共感してくれる話題ならきっと書きやすいと思ったからかもしれません。

一緒に通えたから予備校も楽しかったし、反面教師になったからこそ本腰を入れて勉強できるようになった。無駄じゃなかったあの恋心。

今回の原稿、書き終えてみるとなんだか不思議な気持ちです。受験と聞いてまっさきに思い浮かんだ彼の存在は、わたしの中で思いのほか大きなものなのかも……?


編集:円(えん)

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