【微積物理の落とし穴】『理論物理への道標』を検討する会

むずいねん


経緯

微積物理に憧れてたし、それを義務だと思ってた。イキりたかった。それはもう心底。



某ブログとか動画の影響で、「良問の風からの接続いけなくもないか。。???」とか思い始める。
離散とか脅威の人のルートはだいたい苑田の影が見える。我々凡人が実践するには脳みその皺が足りなさすぎるのでやめておいたほうがいい。

道標の価格は上巻だけで2200円+税。
両巻揃えると5000円は下らないのである。
やっぱりやめておいた方がいい。
受験産業に呑み込まれ東進にたっっかい金を払っているあなたには理解できないかもしれないが、5000円というのは結構いろんなことができる額なのである。
安い参考書でいえばゴロゴが5冊買える。
美味しい肉も買えるし、ゲームソフトだって1,2本は手に入れられるはずだ。
彼女がいたらアクセサリーでも買ってやればいい。間違っても彼女に道標をプレゼントしてはいけない。

買って帰るやいなや、いい画角を探して写真を撮る。こいつ、ファッション参考書としての性能は無駄に高い。
表紙に変な図形が書いてあったらそれはもう確定演出なのである。
おまけに道標はA4版だ。置いただけで威圧感を醸し出す、まさに受験物理のラスボスといった風格を感じさせる。
もし流行が変化してファッションで参考書を身にまとう時代が来たら彼女に道標をプレゼントするといい。間違ってもゴロゴをプレゼントしてはいけない。

サイズの大きさ故風格があるというのは、裏を返せば持ち運びにくいということである。
名問の森や重要問題集を持ち歩いて学校や塾で解くというのは時間的にも効率が良く、見栄えもなかなかのものだ。
だが道標はA4版だ。
まずチャックに挟まって端っ子が千切れ散らかす。
机いっぱいに道標をおっぴろげた姿は狂気の沙汰だ
きみたちだってそこの机でストレートネックの苑田が物理やってたら逃げ出すでしょ?それと同じだ。

ようやく本文を読み始める。
xを2回微分したやつがミッフィーみたいでかわいい。
それ以外の情報が記憶に残らなかった。
書いてある内容がいちいち小難しい。その上、たぶん解法に直接は結びついてこない。コラムを延々と読まされている感覚だ。
道標の著者杉山忠男氏は主に物理オリンピックと大学物理の本を手掛けている。でしょうね。
2月を捧げて力学の講義部分を読破した。
2月を無駄にした、その実感があった。

3月。演習問題を解き始める。
ここで理論物理への道標という本の性質について触れておく。
この本は講義編と演習編という2編に分けられる。そしてこの2編、それぞれで毛色が全くもって違うのである。(もちろん講義部分がまったく演習の手助けにならないわけではないが)
演習編ではインテグラルがほとんど登場しない。一般的な物理の参考書とあまり変わらない解説だった。
その実、問題自体に少なからず癖がある。
問1はスカイダイビングを題材にした問題なのだが、⑴でパラシュートが開かなかった場合について考察させられる。理論物理に道標はあっても道徳はないようだ
空気感を推し量れないまま問題を解き進めていく。私は5問くらい解いて挫折したが、そんな中でも数Ⅲの微分ガリレイ変換をやらされた。
1問解くのに2時間かかり、危機感を感じ始める。

朝10時にはっと目覚め、道標が無理だと悟る。
そのまま寝る。

名問の森やり始める。イマココ

“物理学”に拘る必要はなかった

難関大を目指すにあたって物理に微積を必要視する人が多いが、大学受験の範囲なら大抵の受験生は手を出さない方がいいと感じでいる。

まず費用対効果が小さすぎる。
試験中に微積がまともに適用できるのって多分力学と電磁気の一部分野に限られてくる気がする。でもその問題、たぶん難系やれば解けるようになる。
私たちはせいぜいx=Asinωtを微分したら速さになった!!!とか言ってキャッキャウフフしてればいいんだ。高校生なんてそれくらいの存在だ。
dtやらdxといった発音もままならないアルファベットたちを追いかける時間より、英単語帳を読んでいる時間の方がよっぽど価値が高い。

演習量が不足しがちになるのも難点である。きみが相対運動エネルギーの説明を解読している間に、ライバルは名問の森を3問解いている。
その後の演習で相対運動エネルギーを活用できればいいのだが、意識的に運用できるのは上位層だけだ。どうせ忘れる概念の説明を目でなぞっている時間など、それこそ台車におもりを乗せて走らせるくらい無駄な時間なのである。
名問やれ。

そもそも微積物理で中途半端に物理学に足を突っ込もうとするのはどうしてなのか。
じゃあなんで数学と化学は大学範囲でやらないのか。試験場で極限の問題をε-δ論法から考える人はいない。いたら距離を取り、警察に連絡するのがよい。

まともな使い道を考える

ここまで散々道標のことをこき下ろしてきたわけだが、実際使い方が悪かったのが半分である。
正しく使えば火を噴く参考書なのも事実なので、ここからは使用するべきシチュエーションについて考えてみる。

真正面から使っていい場合

隅から隅まで読み、流れにまかせて演習問題を解くためには相当なレベルが要るし、時間もかかる。少なくとも過去問を差し置いて取り組む代物ではない。
名問の森などを終わらせてなお入試本番まで1年以上の余裕がある人や、駿台もしくは苑田の授業を受けている人なら十分に吸収できるくらいのものではあると思う。
読んでいて思うこととして、「難しい書物の読み慣れ」が重要になってくる。ベースが大学物理学の教科書なので、漆原で初学を乗り切った人々には厳しいものがある。その点競技科学の経験があれば心強いことだろう。

演習問題のみ→分野強化用

問題が奇妙だと書いたが、実際その分野で出題された良問なのである。名問で運動方程式をやったら仕上げとして道標の演習問題に挑戦してみるのは良い選択かもしれない。問題数を抑えてあるのは評価すべき点である。
でもその役割は難系にも果たせる。難系だったら量を積める。解説は圧倒的に道標のほうが詳しいので学ぶことは多いが、手に馴染むのは難系の方かもしれない。

演習問題のみ→実践演習型

東大なんかの大きな大問を切り崩していく感覚を養うには良いかもしれない。過去問を研究するくらいの実りを得られる可能性がある。
たぶん勧めるならこの使い方。
だが実際東大物理にガリレイ変換が出るかどうかは疑問の余地が残る。
この文章に書いてあることは模試の過去問でやった方がいい

総括

微積物理で2ヶ月を棒に振った一受験生の意見でした。
敷居は相当高いので、無理だと悟ったらすぐ引き返すのが得策だと思います。
幸いファッションにはなります。額縁にでも入れておきましょう。
とりあえず私を寝かせてください。

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