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慈悲の瞑想

 おはようございます。これまで呼吸の瞑想について何度かお話ししてきましたが、今日はもう一つ別の瞑想として「慈悲の瞑想」のお話をしたいと思います。呼吸の瞑想が仏教における「智慧」を習得するための修行だとすれば、慈悲の瞑想は「慈愛」の心を育む修行だといえます。簡単な瞑想ですが、毎日続けると自分の気持ちが変化して穏やかな気持ちになれます。呼吸の瞑想に慣れてきたら、並行して慈悲の瞑想もぜひ行ってみてください。

 慈悲というと他の人々へ優しい気持ちを持つことだというイメージがあるかと思いますが、この瞑想の大事な点は、まず自分自身に慈愛の心を向けるところから始めることです。自分自身を大切にできなければ、他者を大切にすることはできません。ですから、最初に自分を愛する心を持つことが大切なのです。それを十分に感じてから、徐々に自分の周囲の人へと慈愛の心を広げていきます。

 では早速はじめましょう。まずいつも通り、呼吸の瞑想から入ります。鼻から入る息、口から出ていく息に注意を向けましょう。しばらくして落ち着いてきたら慈悲の瞑想に入ります。まず最初に自分に慈愛の心を向けます。呼吸を続けながら、心の中で以下のように唱えて下さい。

 「私が苦しみから解放されますように。
  私ができる限り幸せで健康でいられますように。
  私が安心して生きられますように」。

これを三回繰り返します。優しさと思いやりの感覚を自分自身に向けてください。自分が苦しみから解放され、幸せになれるようにと、労わりの言葉をかけてあげてください。自分への愛情をはっきりと感じ取り、リラックスできるようにゆっくり唱えてください。

 自分で自分自身に愛情を向けるというのは最初は難しいかもしれません。そういうときには、両親や先生、ペットなど自分のことを無条件に愛してくれた人のことを思い浮かべてみましょう。その人の自分に対する愛情を感じてください。それができたら、自分自身へその愛情を向けてみましょう。あなたも無条件に自分へ愛情を向けて良いのです。うまくいかないときには、いつでも呼吸の瞑想に戻ってください。落ち着いたら、また自分へ思いやりの感覚を向け、それを感じるように訓練します。頭の中のリミッターを外してみてください。誰かを愛するときのように、自分自身を優しく包み込んであげてください。

 次に、自分の親しい人、大切な人を1人思い浮かべてください。その人を思いながら

 「その人が苦しみから解放されますように。
  その人ができる限り幸せで健康でいられますように。
  その人が安心して生きられますように」

と三度繰り返します。大切な人の幸せを心から願ってください。自分の心に慈愛の心が満ちていくのを感じてください。人によっては自分自身へ愛情を向けるよりも、こちらのほうが簡単にできるかもしれません。一つ注意していただきたいのは、あまり大切な人を強く思いすぎて、それが執着心になってしまわないようにすることです。何がなんでもその人を幸せにしなければ、というのは逆効果です。むしろ、少し離れたところから優しく見守る感覚が良いでしょう

 次に、顔は知っているけれどあまりよく知らない人、例えば近くのお店の店員さんなどを一人思い浮かべて上と同じ瞑想を行います。おそらくその人のプライベートなことについて何も知らないでしょうし、考えたこともないでしょう。でもその人の幸せを願うことで、その人にもその人の生活があるのだ、その人にも幸せになる権利があるのだということを理解します。あなたの想像で構いません。その人が幸せに生活するイメージを思い浮かべてそれを願ってください。

 次に、自分の苦手な人、嫌いな人を一人思い浮かべて同様の瞑想を行います。最初はとても難しいかもしれません。嫌いな人の生活を思い浮かべるなんてしたくもないかもしれません。でもこれは「修行」ですから、ぜひやってみてください。その人にもその人の人生があるのです。何日か繰り返すうちに、徐々に自分の心に変化が見られることと思います。

 最後に「地球上の生きとし生けるもの」に対して同様の瞑想を行います。

地球上の生きとし生けるものが苦しみから解放されますように。
地球上の生きとし生けるものができる限り幸せで健康でいられますように。
地球上の生きとし生けるものが安心して生きられますように

分け隔てなく、地球上のあらゆる生命に慈愛の心を向けてください。心に平穏が訪れるはずです。特定の誰かの幸せを願うというのは「愛情」ですが、あらゆる対象の幸せを願うという分け隔てのない愛情になったとき、それは「慈悲」に変わります。穏やかな心の広がりとともに自分の中に力がみなぎってくるのを感じてください。穏やかな心の広がりとともに自分の中に力がみなぎってくるのを感じてください。

 十分に慈悲の心を感じられたら、呼吸の瞑想に戻って終わります。

 いかがでしたでしょうか。悟りの心は「智慧」だけではありません。それをもって世の中の人々を救おうという「慈悲」の心も欠かせないと仏教では教えています。智慧と慈悲の心をバランスよく育てることが、より良く生きることにつながるのです。

 本日も最後までお読みいただき誠にありがとうございました。


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