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《創曲》第3篇 『萌芽』

文字の羅列られつに血がかようかのよう

人よ、言葉をあなどるなかれ

言葉は自身なり、境涯きょうがいの成せる生きた鼓動こどうなり

呼びいだせ、五体の脈動のままに

うたえ、喜びのままに

うたえ、悲しみと怒りままに

流れでよ、その口から、その指先から

無作むさなる生命はときに字体となり

現象げんしょうなる世界へ現れで、実体たる心を宿すが如くに

それは時空のくびきを断ち、本然ほんねんなる実在の波間に溶ける

人はそれに触れるとき、新たな律動りつどうを我がものとし、多様なる心象しんしょうを分かち合う

喜怒哀楽なる人間たる喜びよ

今を生ききる喜びよ

つなげ、心と心を

相反目する争いをしず

視線と視線の合わさるそらの向こう

深淵しんえんに根を下ろす待望の萌芽ほうが

平和なる価値を奥底おうていに打ち立て

未来に真実の歓喜を飲み干せ





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