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9点【感想】経済的徴兵制をぶっ潰せ! 戦争と学生(雨宮処凛他)

とんでもなく高い学費.ヤミ金まがいの奨学金.稼ごうと思えばブラックバイト.勉強しようにも就活に追われ,教員の側の雇用も不安定.いま,大学・大学生が直面させられている切実な問題は,すべて連動している.その先に確実に待ち受けるのは,教育の崩壊と戦争ができる国だ.気鋭の論者たちが危機に際して発した,熱い抵抗の声.
出版社HPより)

オススメ度 9/10(貧困が戦争を産む理由について知ることができるから)

▷基本データ

(けいざいてきちょうへいせいをぶっつぶせ! せんそうとがくせい)

【著者等】
 雨宮処凛 入江公康 栗原康 白井聡 高橋若木 布施祐仁 マニュエル・ヤン
 (あまみやかりん いりえきみやす くりはらやすし しらいさとし たかはしわかぎ ふせゆうじん まにゅえる・やん)

【出版社・レーベル】
 岩波ブックレット

【読む前の独断と偏見によるジャンル】
 奴隷をやめる本?

【その本を選んだ理由】
 「貧困」で検索して、すぐに借りれる新しいめの本やったから

【貸出日・購入日・もらった日】
 2020/11/21貸出

▷感想

 この本は、2016年4月30日に早稲田大学で開催されたシンポジウムをまとめた本やねんけど、今、日本に住む者が知るべきこと、目指すべきことが書かれている本やった!

【経済的徴兵制とは?】

 日本では、勿論、徴兵制は布かれてへん。せやけど、経済的な理由から自衛官を選択してしまう若者が少なからずおるってのが、この本で言うところの経済的徴兵制やねん。

 もうちょっとかみ砕くと、

若者「大学の学費が高いから行かれへんし、行っても奨学金のローン返済が大変やから困るわ」

自衛隊「自衛官になれば、民間と同じ給与でも生活費は不要やからたくさん貯蓄が可能やし、転職に有利な資格もようさん取れるで~。しかも、自衛隊出身は忍耐力があるから転職先の企業からの評判もええんや!」

若者「よっしゃ!いっちょ自衛官になったろ!」

という流れで、貧者ほど自衛官になってしまうという話。
 これは、本の中で布施祐仁さんが提示しているデータでも明らかで、高卒者の自衛隊入隊率が高い都道府県の上位15県(主に北海道、東北、九州)のうち、13県は一人当たりの県民所得が下から15位以内に入ってるねん。
 また、ネットカフェ難民の支援団体に自衛隊がリクルートに来たり、非正規雇用で奨学金の返還に困っている人に任期付き自衛官になってもらってはどうかという提案が文部科学省の奨学金に関する会議で発言されたりしとる。

【経済的徴兵制の何が問題か?】

 で、何がまずいかと言うと、富裕者が貧者にという流れで一部の人間に不平等に戦争という大きなリスクを押し付ける形になってしまってることやねん。

 まず、前提として自衛隊やったら戦地に行かへんから安全ってのも昔の話で、今の日本は積極的平和主義ってことで、同盟国のアメリカと連携を取ったり、国際社会での立場の向上やったりを目的に自衛隊やそれに関連する民間企業の社員も戦地に近い海外に派遣されとる。
 ほんで、対テロだったり、内戦への干渉などの非対称戦が中心の現代の戦争では、国民を総動員する必要はなく、戦地に行かない多くの国民にとっては平和な日常が何の問題もなく続く

 こんな社会は絶対に健全やないってワイは思う。
 でも、自己責任論が蔓延る現代日本なら、万が一自衛隊員に被害者が出ても、「自身が選んだ仕事なんだから仕方ない」と他人事のように流されてしまうんとちゃうやろか。それに、無職とかワーキングプアとかお金に困っている人ほど、平和な日常が苦痛になり、希望を無くしてしまって、戦争を望んでしまうってのも想像に難くない。
 せやけども、公平に徴兵制で戦地に行かせればいいって話ではなくて、やっぱり、経済的徴兵制をぶっ潰して戦争自体が起こらん社会・戦争する意味がない社会にしてかんとあかんと思う。

【経済的徴兵制をぶっ潰すには?】

 何よりも行き過ぎた資本主義を正して、貧困を無くさんとあかん!

 この本やったら「戦争と学生」っていうテーマやから日本の奨学金制度をやり玉に挙げてるねんけど、これがホンマに酷い!
 名前ばかりで実態は高金利のローンになってるから、学生は大学を卒業した途端に何百万円もの借金を背負った状態となって、貧困から始まってる。
 しかも、労働者の非正規化が進行し、賃金が上がらへんから、奨学金を返済したら生活が成り立たない程、窮する人もたくさん出てきてるらしいわ。
 また、大学の授業料も昔から上がり続けてるから、学生は昔以上にアルバイトをして学費や生活費を捻出しようとするし、奨学金を返すために少しでも良い企業に入ろうとして、就職活動に多大な労力と時間をかけて、学生の本分である自由な学問の追及ができんくなってるって問題があるねんてさ。
 また、個性でしかないコミュニケーション能力の高い低いで苦しんでいる若者もようさんおるのも問題。そらある方が資本主義の役に立ちやすいやろうけど、無い人間をダメな奴と見なすなんてとんでもない話や。
 他にも研究者になろうと思っても、お金のことを常に気にかけんとあかんから、少しでも資本主義の役に立つ研究をしようとなって、ここでも自由な学問が阻害されとるらしいわ。
 こんなんやったら、袋小路にはまって、日本が衰退していくばかりやのに、ほんまアホちゃうかと思うわ。
 奨学金じゃなくて、奨労金になってるんちゃうかって思うわ。
 せやからこの本では、奨学金制度を一から見直さんとあかんって言うてる。

 更にこの本では、エキタスっていう団体の訴える「最低賃金1500円」運動によって、物価が上がらないから売り上げが増えず、賃金を上げられないという悪循環を断ち切るべきって書いてる。そこには賃金をいきなり上げるのが難しい留保のない中小企業への支援もセットやねんけど。

 せやから奨学金にしても、最低賃金にしても、放っといたらええようにされるから、ちゃんと運動して働きかけていかんとあかんと思ったわ。働いてもまともに暮らせない社会ってのは、本人の努力が不足しているんじゃなくて、そんな労働条件しか出せない社会も悪いんやし、誰しもが生存する権利はあるねんから、社会を作り替えていくのがあるべき姿勢やと思う。

 暗い話で、感情的な長文になってしまって、感想文かどうかもわからへんけど、面白い本があったら、今後も感想含めて、紹介とかしていきますんで、ほなまた!

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