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シリーズAに向かうシード・スタートアップが、組織トラブルを回避するために意識すべき3つのポイント

組織づくり。前職(サイバーエージェント)時代から通算すると、これまで100社を超えるスタートアップに伴走してきましたが、シリアルアントレプレナーを除き、大半の起業家にとってはじめての経験であり、いかに能力が高い起業家であっても失敗することが多いのが組織づくりです。

組織づくりは資本政策と同じで、一度間違った方向性に進めてしまうと軌道修正が難しいだけではなく、起業家に対して精神的・肉体的に極めて大きな負荷を与えることとなり、場合によっては会社清算に追い込まれることさえあります。なので、先人が歩んできた道からしっかりと学び、自社の組織づくりに活かすことがとても大切です。

それと同時に、組織づくりにまつわるトラブルは、ちょっとした心構えや意識を頭の中に持っておくだけで回避可能なものが多いとも感じています。

このような背景から、このnoteでは、
・起業準備中の方
・シードラウンドからシリーズAに向かっている起業家
に向けて、組織づくりで失敗しないために知っておくべき心構えや、経営判断する際に意識すべきことについて、ベンチャーキャピタルから見た視点で3つのポイントに絞って言語化
してみたいと思います。

1.経営チームの採用は妥協しないこと

組織づくりで失敗しないための一つ目のポイントは、経営チームの採用は妥協しないことです。そんなことは当たり前だと思われるかもしれませんが、起業家の方はぜひ改めて以下の問いを自分に立ててみてください。

ビジョンの実現に向けて、目の前に立ちはだかる数々のHard Thingsを乗り越えながら、今の経営チームで最後まで走り切れるイメージが持てているか?

なぜこのような質問をしたかといえば、よく発生する組織トラブルの一つが、創業初期の経営メンバーの能力不足や、(経営メンバー間での)目指すべき方向性や相性の不一致などによって、経営チームの刷新が必要になることを起因としたトラブルだからです。

では、なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか? 

創業初期における優秀な人材を獲得するための武器は、掲げているビジョンや起業家の魅力など、目に見えるものがほぼ何もないことがほとんどですが、このような持てる武器が少ない状況下で、以下のような不安が創業初期の起業家を襲います。

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その結果、経営チームとしては少し物足りない(不安が残る)と感じているにもかかわらず、その違和感を飲み込んで株式・ストックオプションを渡したり、CXOなどのタイトル付きで採用してしまうということが起こります。

このような経営メンバーの採用ミスは、シードラウンドは乗り越えたとしても、シリーズA以降で必ず顕在化してきます。

シリーズAを終えた段階では、シード期とは異なり、目に見えるプロダクトやトラクションがあることに加え、資金調達を完了して手許資金が増加することから優秀な人材が採用しやすくなるため、シード期と比較して組織の人材レベルが相対的に上がる傾向があります。

そのような中で、創業初期の経営チームに一人でも能力的に不足する人材がいる場合、求められる議論レベルや事業の推進スピードについてこれず、経営チーム内で不協和音が生じたり、メンバーから見た経営チームへの不信感から退職者が発生するなどの組織トラブルが低くない確率で生じます。

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とはいえ、経営チームを刷新するというのは簡単ではありません。なぜならば、創業初期の経営メンバーには株式やストックオプションを渡しているケースが多く、(創業者間株主間契約を締結していない場合などは特に)株式の買戻し条件などで揉めてしまい訴訟に発展してしまうケースや、ひどいケースでは組織崩壊に繋がってしまうことも少なくありません。

ぜひ改めて、「ビジョンの実現に向けて、目の前に立ちはだかる数々のHard Thingsを乗り越えながら、今の経営チームで最後まで走り切れるイメージが持てているか?」という問いを立ててみてください。仮にNOの場合は、できるだけ早めに対応策を考えたほうがよいかもしれません。

また、これから経営チームの採用を考えている場合は、とにかく慎重に検討するようにしましょう。株式・ストックオプションの付与やCXOなどのタイトル付きでジョインしてもらうかどうかについては、3か月、半年でも一緒に仕事をしてから判断するという時間的な猶予を持つだけでも判断ミスを大きく減らせると思います。

2.マネジメント人材をメンバークラスよりも優先して採用すること

組織づくりで失敗しないための2つ目のポイントは、採用における優先順位についてです。 理由は後述しますが、マネジメント人材をメンバークラスよりも優先して採用することをお勧めします。

しかしながら、前述した通り、創業初期における優秀な人材を獲得するための武器は、掲げているビジョンや起業家の魅力など、目に見えるものがほぼ何もないことがほとんどです。

そのような中でやりがちなのが、マネジメント人材よりも先に、比較的採用しやすいメンバークラスの採用を優先してしまうことです。

その結果、以下のような悪循環が発生しがちです。

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その結果、組織をほぼゼロから創り直しすることになり、その対応に経営チームのリソースが割かれることで、事業の推進スピードが大きく低下してしまいます。ひどい場合には、組織崩壊に繋がってしまうことがあるのもこのケースです。なので、原則はマネジメント人材をメンバークラスよりも優先して採用することをお勧めします。

3.スキルフィット以上にカルチャーフィットを重視して採用すること

組織づくりで失敗しないための3つ目のポイントは、スキルフィット以上にカルチャーフィットを重視して採用することです。よく発生する組織トラブルの一つに、カルチャーフィットを慎重に測ることなく採用してしまったことで、組織の雰囲気が悪化し、その対応に経営チームのリソースが取られてしまい、事業の推進スピードが大きく失速してしまう、というのがあります。少数精鋭でスピード感を持って事業推進することが求められるスタートアップにとって、これはとても致命的な悪影響を及ぼします。

然しながら、カルチャーフィットを測るためには、当然ながら自社のカルチャーについて言語化されていないと判断ができません。

自社のカルチャーについて言語化されていないとどうなるか?

自社のカルチャーにフィットする・フィットしないが測れないだけではなく、経営チームや面接者の好き嫌いなど、属人的な判断基準で採用することになってしまい、採用する方も採用される方も、お互いに大きなストレスを伴う結果になってしまいます。

このような採用ミスを減らすために、私たちが最も重要だと考えているのが、CI(Corporate Identity)、つまりVision・Mission・Valueといった企業としての存在意義や目指すべき方向性、大切にしている価値観などをできる限り早く言語化しておくことです。CIを言語化し、組織にしっかり浸透させることが出来ると、カルチャーフィットが測れるようになるため、驚くほど採用ミスを減らすことができるようになります。

尚、この記事では採用ミスを減らす手段として記載したCIですが、そもそもCIとは、社会における自社の存在意義を表現するだけでなく、関わる全てのステイクホルダーに対して、私たちの考え方や価値観を表現するメッセージであり、ビジョンの実現に向かう上で欠かせない、極めて重要な位置づけとして私たちは捉えています(私たちのCIデザインのヒストリーはこちら)。良かったらこちらもぜひ読んでみてください。

4.最後に

組織づくりは、起業家の思想や狙っている事業領域などによってもさまざまな選択肢があるので、何が正解というのは一概には言えません。例えばですが、ジェネシア・ベンチャーズでは、私たちが掲げているビジョンと個人の自己実現の方向性が合致した優秀な仲間を探すこと、及び(もちろん成果の最大化に向かうことが大前提ですが)ひとり一人が持つWILLに沿って、その人の自己実現やその人が考える豊かな人生につながる機会を最大化する環境を提供することを最も大切にしています。

しかしながら、有望な事業領域を選択し、筋の良い戦略を描いているにも関わらず、組織づくりの失敗で事業の成功確率を下げてしまうケースが多いのも事実であり、これまでの自分自身の経験を元に、組織トラブルの回避に繋がる再現性が高そうなポイントを3つに絞って書いてみました。

繰り返しにはなりますが、組織にまつわるトラブルは、ちょっとした心構えや意識を頭の中に持っておくだけで回避可能なものが多いです。だからこそ、起業時のシードマネーを調達する際にも、皆さんの良き伴走者として、本質的なアドバイスがもらえる、信頼できる投資家にご相談されることを強くお勧めします。皆さんの周りにこれから組織づくりにチャレンジされる方や、組織づくりで悩んでいる起業家がいれば、ぜひシェアしてください。

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