見出し画像

【連載台本・世にもになるまで書いてみた・49作目】審査員①

これまでの話はこちら!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


○ テレビ局・スタジオ

 暗めの照明。
 スタジオ中央には大きな階段のセット。オーディション番組の収録中。
 階段の前に審査委員長である主人公が凜々しく立っている。

主 眠れる才能達よ。この高く聳えるスターの階段があるだろう。
  駆け上がってくるがよい!!

 主人公 高笑いをしながら階段を上っていく。

○ セット裏の階段

 収録終わり。
 主人公 セット裏の階段をプロデューサー達と会話しながら降りる。

主 おい。このセットもうすぐ改修したらどうだ? 
  ギシギシ音がして怖い。
プ かしこまりました! 
  (ディレクターに)おい!大道具に指示出しとけ!
デ はい!
主 頼むぞ。ったく・・・

 主人公 楽屋に戻っていく。
 主人公のナレーション。

主 (ナレーション)俺の職業は音楽プロデューサー。
  自分で言うのも何だが「成功者」だ。
  俺が目を付けたアーティストは、揃いもそろって売れっ子に育った。
  例えばそうだな・・・ 
  あのシンガーソングライターもそうだし、
  あのグループもそうか。
  どれもこれも俺の「センス」のおかげさw

主 あれ?次回の台本は?
プ もちろんございます。
主 おう。じゃ目通しとくわ。

 番組プロデューサー 主人公に台本を渡す。
 主人公 受け取り満足げで楽屋に戻る。
 主人公のナレーション。

主 (ナレーション)今収録したのは、
  このテレに曲が誇る超人気オーディション番組「○○」。
  俺は審査員の1人・・・
  いや、ほぼ俺の一存で挑戦者達の合否を決めている。

○ 主人公の家・書斎

 主人公 台本に目を通しながら頭を悩ませている。

主 コイツは「音楽に対する情熱が感じられない」でいっか。
  コイツはどうしようか・・・

 主人公が考えていたのは「不合格の理由」。
 台本が映る。出場者の顔写真の横に合否が既に書かれている。
 主人公のナレーション。

主 (ナレーション)人を審査する仕事は楽ではない。
  私の意見一つで人生を決めてしまう。だからこそ人一倍気を遣う。
  この番組も最初は断ろうとしたが、
  熱意に押され仕方なくオファーを受けた。
  え? 台本があるじゃないか。これやらせだろって?
  バカを言うな。これはやらせではない。
  番組を円滑に進めるための「準備」だ。

 ドアをノックする音。

妻 失礼します。あなた、ご夕食の準備ができました。
主 ん。今行く。

 主人公 台本を閉じリビングに向かう。

○ 主人公の家・リビング

 主人公 不機嫌そうに箸を置く。

主 塩辛い。
妻 ・・・申し訳ございません。作り直しましょうか?
主 いや、いい。(ため息をつく)

 主人公 嫌々ながら再び食べ始める。食器の音がうるさい。
 妻 意を決して主人公に指摘する。

妻 あの。

 主人公 腹を立てているのかシカト。

妻 あの! 
主 なんだ。
妻 ・・・・・・いえ。何も。お風呂は何時頃になさいますか。
主 いつもと同じに決まってるだろ。
妻 ・・・かしこまりました。

 妻 少し落ち込みながら再び夕食を食べ始める。
 無言の食卓。淀んだ空気に包まれている。

○ 主人公の家・自室

 バスローブ姿で自室に入ってきた主人公。
 棚に飾ってある写真立てを手に取る。
 映っているのはバンドマン時代の主人公。
 主人公のナレーション

主 (ナレーション)審査員を断っていたのには理由がある。
  それは俺自身が「審査される」のが大嫌いだったからだ。
  俺らのセンスを分かるはずもなく、ただ年上なだけのオヤジ達に
  なんで審査されなきゃいけねぇのか・・・と尖っていた。
  ・・・今の俺の立場はそのオヤジ達だが。
  とにかく「審査される側」は二度とごめんだ。

 主人公 写真立てを置きベッドに向かう。
 電気が消える。写真立てのアップ。
 タイトルテロップ『審査員』


この記事が参加している募集

スキしてみて

眠れない夜に

ご覧頂きありがとうございます! よろしければサポートお願いします・・・!