【随筆】責任


責任を口実に他人を批判する人ほど、無責任だと思う。あなたは自身で口にしたその言葉の責任をどう取るつもりなのだ。時間は一方向にしか進まない。エントロピーは増大するしかない。世界はカオスになる一方だ。


確かに、人には責任がある。けれども、究極的に社会に対する責任なんてものは無い。哲学的ゾンビの話でも、マトリックスの世界観でも、方法序説の「我思うゆえに我あり」でも、とにかく何でもいいんだけれど、他人なんか認識できる範囲でしか存在しないし、社会なんてモノはもっと認識できない。個人が背負う責任なんか本当に小さいモノで、社会に対してとか、組織に対してとか、家族に対してとか、友人に対してとか、表現できるけれど、そんな責任は実際のところ自分の人生に対する責任ってだけでしょ。


交通事故が起こったとして、自動車の製造した人とか、道路の設計をした人とかが責任を問われることは殆ど無い。だって、責任の割合が小さいし、それを取る手段も無いから。福島原発とか、笹子トンネルとか、製造から期間が経っていれば管理する者が攻められる。そういう時は大抵、組織として責任を取ることになる。組織の長が責任を取るのかもしれないけれど、その責任は形式上のもので、社会全体として折り合いをつけるための責任だ。


とにかく、誰かに責任があるとすればそれはそいつ自身の人生に対してってだけだ。社会とか家族とか友人とか、そんなの表現上のものでしかない。


自身の人生に対して責任を持つってことは這いつくばってでも生きるってことだと思う。最後は怒りだ。そこに愛があるなら怒るべきだった。でも優しいから、怒りたくなかったんだ。

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