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企業経営は一人一人のフォーキャスティングから始まる

「来期いくらできる?」ーシンプルながらも答えづらい質問であることは営業経験者ならわかると思いますが、企業経営をしていく以上、将来の見通しは欠かせません。特にトップラインである「営業収益」がいくら見込めるのかは企業の舵取りの仕方も変わってきます。その営業収益を正しく予測すること、すなわち精度の高いフォーキャスティングが経営の生命線といえます。では、このフォーキャスティング、一体誰のミッションなのでしょうか。改めてフォーキャスティングの重要性について考えるとともに、経営から現場までどのような視点で関わっていくべきか、整理して行きます。

日常に溢れる未来を先取りする力 = フォーキャスティング

フォーキャスティングとは一般的には日本語で未来予測を指します。未来予測??と思うかもしれませんが、未来予測するというこの行為はすでに日常に溢れています。

たとえば私はゴルフが趣味で週末によくゴルフ場に行きますが、大抵自宅からは車で1-2時間と遠く、スタート時間に確実に間に合うように車での所要時間がどれくらいになるかをいつも予測してから自宅を出ます。

具体的にはGoogleマップをナビとして使い、複数のルート計算、渋滞予測などのインサイトをもらいながら、確実にスタート時間に間に合うにように、また帰りは夕方の渋滞を避けて最も効率帰宅できるように、出発時間やルートを最適化しています。また天気の行方も超重要です。

予報によってはスタート時間をずらしたりコース変更をしたり、キャンセルして別のインドアの楽しみを見つける、などデータから未来を先取り(フォーキャスト)し、そこから逆算(バックキャスト)して現時点の行動を最適化しています。

このように日常に溢れているフォーキャスティングという未来を予測する活動ですが、それに対して「肝心なB2Bビジネスの世界においてその重要性の理解や方法論がまだ最適化されていないのではないか」としばしば感じることがあります。ということでこちらのブログを通じて私の経験を元にフォーキャスティングの重要性や方法論についてまとめていきたいと思います。

フォーキャストにより”人、物、金”の経営リソースを最適化

ビジネスの世界でフォーキャスティングというと、定めた期間において営業収益がどのくらい達成できるのかを将来予測していくことです。その予測については、過去の売上実績や現在の案件状況、そして市場の状況などのデータを分析したうえで算出が行われます。

企業にとって、このフォーキャスティングに基づいて、経営の意思決定をすることも多いはずです。事業計画の修正、新規事業への投資の判断、人員の増員ないし削減、生産や在庫の調整など、事業の将来予測に応じて、経営者は企業の人、物、金のリソースの最適化を図っています。経営の視点で見れば、将来を正しく見通せていることは、健全な経営にとって不可欠なのです。

さらに、フォーキャスティングは対外的にも重要です。特に上場企業は決算時に来期や再来期の売上予測を発表しますが、投資家など外部の人間はこの予測に対する実績に注視しています。フォーキャスティングと決算の内容に大きな振れがあれば、市場の信用を大きく落とすことに繋がるでしょう。したがって、会社のブランド力・信用力を高めるためにもより正確なフォーキャスティングが必要不可欠です。

精度は下振れ5%、上振れ10%以内に抑える

このフォーキャスティングへの注力度合いは企業によってばらつきがあると思いますが、一般的にグローバル企業では営業一人一人に週次など定期的にフォーキャストを提出させ、できるだけ全社として精度の高い売上予測になるようあらゆる努力をして取り組んでいます。

あくまで私の慣れ親しんだIT業界においてですが、下振れ5%、上振れ10%以内に抑えるべし、という不文律がありました。「え、上振れって目標を上回るんだから多い分にはいいじゃん!?」と思う人がいるかもしれませんが、もし上振れしてしまった場合、企業としては売上予測を見誤り投資を控えていたのではないか?逆に投資を十分にしていたらもっと高い業績を上げられた可能性が高いのでは?ということになりビジネス成長に遅れや機会損失もたらしたということになります。
もちろん下振れした場合には売上予測を見越して投資した設備や人的資本が、回収できないリスクが高まるため、当然経営にはマイナスです。

ちなみに、、、某大手外資系IT企業では営業のフォーキャストデータを収集しつつ、それとは別にAIベースのフォーキャストデータを出し、両者を比較しながら最終的に精度の高いフォーキャストを固めているということをすでに数年以上前から取り組んでいるそうです。それくらい世界のトップ企業らはフォーキャスティングについては熱心に取り組んでいるということです。


営業目標に対するギャップをどう埋めるか、常に意識する

経営的な意義がある一方フォーキャスティングは営業現場においても大変意義のある活動です。先程述べたようにフォーキャストとは「ある将来の特定期間で売上がどの程度達成できるかを予測すること」ですが、予測しっぱなしでは意味がありません。その目的としては目標とのギャップを明らかにし、必要な計画の見直しと対策を先手先手で講じることです。

例えば、4-6月第一四半期の営業目標が5000万円だったとします。4月の期初の時点で着地予想として3000万円は狙える、とフォーキャストできていれば残る2000万円をどうするか、を残りの3ヶ月で考えながらアクションをしていくことができます。平均受注サイクルが3ヶ月程度の商材であれば新規案件を作ることも場合よっては可能です。しかし着地予想がいつまで経っても見通せず、6月後半になってようやく2000万円がギャップになりそう、ということがわかっても残り2週間では時すでに遅し、でもはや天変地異を願うしかありません。

このようにより早いタイミングで、よりクリアに見通せていれば、目標までのギャップに気づき、それを埋めるためにどうやって時間を使うべきかを計画できます。渋滞予想や天気予報と同じように最初から予想がわかっていれば、現在の行動の最適化を可能とし、実際にはある程度の目的は達成できていくのです。

一人一人がセルフフォーキャスティングできるようになる

ということで営業にとってのフォーキャスティングは目標達成のための手段であると考えます。昨今はジョブ型雇用が叫ばれていますが、いわば営業職にとってこのフォーキャスティングスキルはジョブ型時代に求められる営業としてのマネージャ、担当者問わず必須スキル項目であると思います。
企業によっては営業活動=担当者、フォーキャスティング(管理)=マネージャの仕事というような役割分担をされている企業もありますが、マネージャのみがギャップを意識している組織と、一人一人がギャップを意識して日々活動に取り組むとではどちらが強い営業組織でしょうか。

個人の予測の下振れを看過してしまうと、、

結局会社全体の営業収益は営業一人一人の積み上げです。自分一人くらい予測がブレてもいいだろう、という甘い考えの人が出て来れば企業としてトータルで積み上げた場合には致命的なビジネス影響が出てしいます。一人一人がセルフフォーキャスティングできる組織にしていくこと、これこそが常勝営業軍団の大前提と思います。



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