見出し画像

AR(拡張現実)とMR(複合現実)の違いに関する考察

ことのはじまり

結論から言うと、Microsoftのマーケティングワードではありませんでした(ごめんよAlex Kipman)。しかし学術的な定義はみつけられませんでした。

画像1

そこで、そろそろこのARとMRの違い問題に(個人的)終止符を打つべく、ググったり論文読んだりして本題について考察してみようと思います。

「AR MR 違い」でググってみる

とりあえず検索上位に出てきたサイトを引用
https://time-space.kddi.com/ict-keywords/kaisetsu/20170316/

AR(拡張現実)
次にARは、現実の世界に仮想の世界を重ねて「拡張」する技術である。CGでつくられた3D映像やキャラクターなどを現実の風景と重ねて投影することで、まるで現実の世界にCGキャラクターが現れたような体験ができる。
MR(複合現実)
ARをさらに発展させたのがMRという新しい技術だ。
AR技術を使った「ポケモンGO」では、ポケモンに近づくことはできない。しかしMRならカメラやセンサーを駆使することで、それぞれの位置情報などを細かく算出し、たとえばキャラクターの後ろ側に回り込んだり、近づいて自由な角度から見たり、目の前の空間にさまざまな情報を3Dで表示させ、そこにタッチし入力もできるようになる。現実世界と仮想世界をより密接に融合させ、バーチャルな世界をよりリアルに感じることができるのがMR(Mixed Reality)というわけだ。

多くのWeb記事では、「ARの発展型がMRである」や「ARは現実を拡張して、MRは現実とバーチャルを融合する」といった結局よくわからない解説が溢れていました。

中にはARはスマートフォン、MRはHololensのようなヘッドマウントディスプレイやメガネ型のものといったデバイス依存による分類をしているものもありました。(下記リンクは正直ツッコミどころ満載)
https://www.soumu.go.jp/ict_skill/pptx/ict_skill_1_3.pptx

また、学術的な定義もこれといって見つけることはできませんでした。この手の分野はコンピュータビジョンなどの知覚情報学術領域だと思ったのですが、特に定義されていません。

MRが提唱された論文を読んでみる

Mixed Realityという単語が最初に登場したのは、Paul MilgramとFumio Kishinoが提案したA TAXONOMY OF MIXED REALITY VISUAL DISPLAYSという論文です。

本稿ではMRを次のように特徴づけています。

原文
In this paper we focus on a particular subclass of VR related technologies that involve the merging of real and virtual worlds, which we refer to generically as Mixed Reality (MR). 
日本語訳
この論文では、実世界と仮想世界の融合を含むVR関連テクノロジーにおける特定のサブクラス(継承的意味)に焦点を当てます。これらを総称して複合現実(MR)と呼びます。 
画像2

つまり、MRとはARとVRを内包したそれぞれの上位概念であるということです。
上位概念であることから、AR(現実)とVR(仮想)のそれぞれの空間を主体が行き来するイメージですね。

これらのことから、ARとMRの違いという議論がそもそも間違っていると考えられます。概念のレイヤーが異なるのに比較はできませんよね。

主体を現実空間に置いてMRを考えるとどうしてもARとの比較になりますが、Oculus QuestをかぶってMRのことを考えると、主体が仮想空間になるのでよりイメージが掴めるかと思います。

画像9

まだよくわからない?

じゃあみんな大好きソードアート・オンラインとアクセル・ワールドで例えましょう。

ARはオーグマー
主体は現実空間

画像3
画像4

VRはナーヴギア
主体は仮想空間

画像5
スクリーンショット 2021-07-31 21.15.53

MRはニューロリンカー
主体は現実空間であり仮想空間でもある。

それぞれの空間を行き来するイメージ。主体が現実空間の場合はAR、仮想空間の場合はVR(バーストリンク)のようになる。

画像7
スクリーンショット 2021-07-24 20.55.11

最後に

結論として「AR(拡張現実)とMR(複合現実)の違い」は、そもそも議論が間違っていると考えられます。

なぜならMRはARの上位概念であり、MRはARを内包するからです。
あくまでもMRは抽象概念であり、ARやVRは具体概念であると言えます。

本記事はあくまでも考察ですので、ご意見等あればコメントでお願いします。

参考

本記事を読んだあとにMicrosoftの「Mixed Reality とは」を読むと理解がより深まったり深まらなかったり。
https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows/mixed-reality/discover/mixed-reality

Mixed Reality は、物理とデジタルの世界を融合して、自然で直感的な 3D の人間、コンピューター、環境間の相互作用の扉を開きます。 この新しい現実は、コンピューター ビジョン、グラフィカル処理、ディスプレイ テクノロジ、入力システム、クラウド コンピューティングの進歩が基になっています。 複合現実という用語は、ポール・ミルグラムと岸野文郎による 1994 年の論文『複合現実のビジュアル表示の分類』で初めて紹介されました。 この論文では、"仮想現実連続体" の概念と、ビジュアル ディスプレイの分類が研究されていました。 それ以降、Mixed Reality の応用は表示の範囲を超え、以下が含まれるようになっています。
・環境の把握: 空間マッピングとアンカー。
・人間の認識: ハンド トラッキング、目の追跡、音声入力。
・立体音響。
・物理と仮想の両方の空間における場所と位置。
・複合現実空間における 3D 資産のコラボレーション。

よければTwitterフォローお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?