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ソフトディバイス の歴史 連載第7回「業務の変遷」

この記事は、ソフトディバイスの創業者である高橋賢一が、社内報の連載記事向けに執筆したものです。ソフトディバイス の成り立ちから、高橋が代表を退きフェローとなるまでのストーリーが高橋の視点で語られています。

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プロダクトデザインからインタフェースデザインへ

ソフトディバイス はプロダクトデザイン事務所としてスタートした。当初は、大型の工業用機械、家電製品、オーディオ機器のデザインをしていたが、一方で広がりつつあった情報システムの企画、提案を請け負うようになり、数年のうちにそれがメインの業務になってきた。最初は手書きの提案書を作成していたが、趣味のパソコンが使えるようになりワープロやお絵かきアプリなどをパソコンを使ってのインタフェースや画面のデザインをするようになった。ハイパーカードやビデオワークスなどの対話的なメディアを扱えるようになり本格的なインタフェースの設計・デザインを開始した。SDオープンから5年くらいの間に大きく舵を切ったことになる。
当時、情報化時代の到来とその急速な変化に対応できたデザイン事務所はほとんどなかった。すでにパソコンに習熟していたことや、インタフェースの学会活動に参加していたことや、関西の大手家電がインタフェースに目覚めたこと、インタフェース研究の盛んな京都工芸繊維大学が近くにありそこからの学生バイトの供給が容易であったことなど多くの内外の要因がシナジー効果をもたらした。実績や成果の蓄積とともにポートフォリオが充実し、従来のクライアントだけでなく、エリア的にも、分野的にもさらに広いクライアントの仕事を引き受けることとなった。大手家電の中でもいろいろな事業部とかかわるようになり対象となる製品の種類も拡大した。メンバーも増え、プランニングやグラフィックデザイン、インタラクション設計、プロトの開発、スクリプティング、ハードの設計など多様な技能を獲得してきた。

業界が大きく変化し続ける時代へ

情報化が進むにつれ、市場は急速に変化した。例えば、家電業界では、映像技術やネット技術の高まりでテレビが進化するがしばらくすると海外との競争やユーザニーズとかけ離れて元気がなくなる、そのころには携帯電話が普及し始め、家電の大きな稼ぎ柱となるが、それも5年もすると採算が取れなくなる。情報技術がいままで縁遠かっただった洗濯機や冷蔵庫、炊飯器などの白物家電の世界でも、他社との差別化にインタフェースをが重要だと意識するようになるが、それもまた数年後には沈静化する。家電業界ではこのような変化が激しく、事業の再編や統廃合が数年のサイクルで起こっていた。家電業界だけでなく広く様々な業界の間でも同じことが起こっている。パソコン業界、ソフト業界、オフィス機器業界、車業界等の業界内部でも、業界間でも大きな変化が起こっている。

多様性が、変化に対応する鍵

このような急激な変化の波の中でも、設立以来ほとんど赤字を出すことなく事業を継続成長できたのは、いまから考えれば、変化する時代にうまく対応できる技能や人材などの多様な資源を持ち続けてきたからである。
長年にわたって事業を継続できたおかげで様々な業界、製品の仕事ができた。うまく時代の変化に乗り、デザイン対象も、博物館、オフィス機器、パソコン、テレビ、CDのコンテンツ、ホームページ、携帯電話 白物家電、スマホ、医療機器、車などに変化してきた。業務の内容も画面デザインからインタフェース、エクスペリエンスや作法、サービスへと変化し、拡大してきている。こうした変化への対応から得られた教訓は、今、元気な業界や製品、テーマばかりに目を向けていては数年後に苦労することになる。うまく乗り切ってこれたのは製品や業務内容、テーマが変化しても対応できてきたからである。幸いインタフェースやエクスペリエンス、ソフト、サービスなどは業界や製品横断的な側面が強いが、実際には人のつながりや業務の中で獲得した知識はそれぞれ固有のもので縦割り的な傾向が強い。日々の業務を行う上で欠くことのできない技能や人間関係は大切であるが、長い目で見れば、もっと幅広い横断的な資源を継続して育て、獲得してゆくことを忘れないようにしなければならない。新しい人や情報との出会い、リスクを伴うかもしれないが新しいことへの挑戦が今後も望まれる。

ユーザ、社会の要請に目を向けることの大切さ

従来は、クライアントあっての業務受託で生き延びてきたが、そのことで無駄なことと分かっていても引き受ける仕事も少なくはなかった。クライアントのリクエストとユーザニーズや社会の要請との齟齬に鈍感であったとの反省もある。クライアントのリクエストに応えて対価を得るというスタイルから、もっとユーザのニーズ、社会の要請に直接的に答えることを業務にできるようになることも今後の進化への大きな方向ではないだろうか。



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