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Doseの詩

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詩 | 愛の形をしたゲーム機

詩 | 愛の形をしたゲーム機

 伸びた麺を啜って、落ちた日を追いかける妄想をする。決してシンプルではない色らが、僕の後ろに立って並んでいる。

 色らはみな一様に、たった一つの抽象的な欲望を持っている。それが背中に当たる物質的な熱でわかる。その欲望の始まりを辿れば、僕の人生は終わらなくなる気すらする。

 カーテンを開ければ、そこには単色の世界が広がっている。パソコンの光が照らす机の一部は、それに慣れてもう光っていない。ここは

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【詩】りせい

【詩】りせい

ずうっと、細い綱を渡っているようだ

わたしは大人になってゆくにつれて、何かを上達させないとまずいのだろうか

歳をとるにつれて人生のけだるさは増すいっぽうであるのに、それに抗って、人間として強くならなければいけないのだろうか

この世界で生きるため、社交的で好戦的な理性を獲得しなければならないのだろうか、その理性を発揮させるための概念的な筋肉をみるみる肥大させる他、いのちをつなぐ術はないのだろう

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【詩】俺が嫌いなもの

世界が間伸びしていくような、それでいて必ず閉まっているような、妙なことを気にかけていて、きっとどこかに最果てがあるのに、自分に目隠しをしていつまでもそれを見ない

それを自ら選んでいる感覚はないのに、誰もそれに全然違和感を抱かない、どこかで無くしてきちゃったのかなと心配になって、でもそのビー玉を投げたりする勇気はなくて、解(ほど)けたアイスみたいにわたしと世界は距離を見失って、そのままになっている

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【詩】突然の話

数秒先は突然やってくる。そしてこのように、いつも僕たちは、「突然」という言葉にいろんな黒くて重いものを背負わせている。表には出てこないけれど、それは少しずつ時間をかけて積み重なって、いつか耐えきれなくなった「突然」が突然失くなる。そうしたら僕たちが代わりにその黒くて重いものを持たないといけなくなって、その時初めて、「突然」がすごく便利で優しい言葉だったんだってことに気がつく。静まり返るとかえってう

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【詩】長針

波のように迫ってくる長針は、僕のことを知らない。でもそれを、知らないふりをしているだけなのかもしれないって思うと、少しは頑張ろうと思える。高層のビルに屋根があったり、川に道があったりすることを想像して、僕の心は長針を飛び越えて走り出していく。本当に今、歩いているこの地面とは遠くへ、僕の心はとっくに行っている。そうして鳥になってまだ人間の僕をみて、テストの点数ばかり馬鹿にする。鳥もそうなのかと思って

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【詩】メモ書き

明日にとっての、他愛のないメモ書きに今日がなればいい

誰だって外に出したい不定形な内容を脳に負っていて

喉の形が脳の性格と相性が悪いと、

壊れたスペースキーみたいに全然ダメなだけで、

それはその人が悪いのではないと

そう教えてくれたいつかの先生の手のひらが

今私の喉の形を決めている。

でも肝心の脳はもちろん、私だけのもの。

誰かに喉を奪われても、脳は私だけのもの。

例えばそういっ

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【詩】転生

公園で砂遊びをしている少年に

もうすぐでお前は死ぬよ、これは絶対だよ

と言ってみたら

造っていた城を壊して、泥人形を造りはじめた

痛いだろうに、自分の髪の毛や歯を抜いて泥人形に混ぜていった

そうして大きな泥人形が出来上がった

僕が死んだらこの人形に、朝だよ、と言ってあげて

少年はそう言うと、灰になっていた

私は泥人形を抱き上げて、泣いた

もう朝はこない

【詩】おじいちゃんの性格

山と空の境目が大きく口を開けて

目にとまった電波塔を食べにくそうに食べるようなことがあったら

その奥に見える黒と深紫の喉の写真を撮って

おじいちゃんの遺影の前にそっと飾ろう

そうすればもしかしたら

おじいちゃんは驚いて

少しなら目を覚ましてくれるかもしれないから