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「夜、やれませんかね?」の一言が生み出した年間1,000名が利用する「夜のユースセンター」、その舞台裏で苦悩していること

はじまりは、職員の一言から

いまから一年と少し前、僕が踊り場で休憩をしていると、キャリア20年に迫る職員の阿部くんが来ました。

普段はニコニコしているんですが、このときは真面目な表情だった記憶があります。

「夜、やれませんかね?」

若者が仕事に就くことを応援する「ジョブトレ」のリーダーである阿部くんは、コロナ禍以降、若者たちのためにやれることが狭まっていくことに悩みながら、それでもやれることをやり続けていました。

電話やオンラインで、卒業生やジョブトレ生と頻繁にコミュニケーションを取り、オンラインゲームをつないで話したり、車で若者がいる場所まで出かけて、距離を取りながらも顔を合わせる機会を作っていました。

だんたん社会的にひとの交流ができるようになってくるなかで、ずっと考えていたのが「夜の時間帯」に若者たちが集まれる居場所の必要性でした。

いつどこで何をするのか。誰が対象なのか。人材や資金はどうするのか。そういう質問をしようかと思いましたが、やめました。きっと、そういう話ではなく、日常的に出会っている若者たちや、なかなか顔を見て話す機会が取れない若者たち、そして長い時間、ひとと一緒に活動をしてない若者たちと話すなかで、夜に集まれる場所が必要だと感じたのだろうと。

孤独な夜を照らす光。若者たちの居場所・夜のユースセンター担当者インタビュー

初日に足を運んだのは10名

手元にあるデータを眺めています。2022年5月7日土曜日、その日に「夜のユースセンター」を訪れた若者は10名、若者たちを待っていた職員は5名。利用者が多かったのか少なかったのか、ニーズに応えることができるのか、まったくわかりませんでした。

しかし「はじめたからには、まず一年やってみよう」と、毎週土曜日の18:00-21:00に居場所を開き続けました。試行的なものであっても、季節や感染症の状況次第でどう若者たちの様子が変動するのかわかりません。それであればやはり一年一回転してみてから考えるしかありません。

2022年5月7日から2023年3月25日まで、2022年度での開催は44回、台風のための中止などはありましたが、ほとんど毎週開所しました。7月後半から8月くらいには、20名から30名の若者が来るようになり、年度内で延べ831名となりました(年間で1,000名を越えました)。

外部の見学・視察も31名となり、国や自治体関係者、ビジネスパーソン、近隣の学校の先生、NPO関係者などが、若者たちとご飯を食べ、ゲームなどをしながら、交流してくれました。

ーー夜だからこそ

夜の時間帯、若者たちは日中とはまた少しだけ違う表情を見せます。階段で座りながら悩みや不安を吐露したり、大画面のゲームで普段おとなしい若者が熱狂したりします。

熱量のある空間と、静かに時間の流れが小さな事務所に同居します。働いてる若者も、そうでない若者も、自宅にひりでいるよりいいこともあるでしょう。一方、もともと地域や自宅に居場所がなく、逃れるように夜のユースセンターを利用する若者もいます。

若者たちの穏やかな側面だけではなく、こんなにも虐げられ、日常を過ごすことができない若者とつながれるのも、夜だからこそ、ということもあるでしょう。

ご飯を食べれる、食糧や生活用品も渡せる、でも、それは前面に出さない

若者たちは、育て上げネット以外の支援機関や学校などからつながってきます。夜のユースセンターでは、お弁当を準備し、明日以降の生活のために食糧や生活用品を渡せる機能も持っています。でも、私たちはそれを全面に出していません。

実際には、お弁当をたくさん食べたり、食糧を多めに持っていく若者もいます。しかし、若者たちはそのためにここには来ていません。夜のユースセンターという居場所を利用しにきており、そのついでに食事をしています。

僕も夜に足を運んで、若者たちの話を聴かせてもらいますが、やはり、みんな食事のために来ているというより、職員と話したり、ひとり黙々とオンラインゲームをしたり、楽器を奏でたり、仲間と遊んだり、そういう場所として来ていると言います。

ーー今後10年、続けていくために

たった一年しか開けておらず、それも試行的にやっている状況です。しかし、一年をやってみて思うのは、小さな夜の居場所でも、若者たちにとっては、孤独な夜を照らす光になりえるということです。そして、このような取り組みが、もっと社会に必要であり、そのためには仲間を増やしながら、今後10年継続してみてやっと振り返って、言えることが出てくるのではないかと考えています。

毎回、20名から30名、多いときは空間目いっぱいの若者が集います。たくさんの若者と出会うことができる場所でありながら、そのコストは流れ続けています。若者たちの状況を見れば、いくばくかのお金をいただくこともできず、交通費分のサポートをしてやっと来れている若者もいます。

社会的に苦しい若者たちに、追加の負担を背負わせることもできません。一方、成果も見えづらく、価値を数値で示すことも簡単ではありません。そのため私たちは、寄付者を募ることで、夜のユースセンターを続けていけないかと考えています。もちろん、継続的な活動のためにはもっと努力も必要ですが、他方で若者たちが集える、逃げ込める、遊びに来られる夜の居場所を支えてくださるひとたちがいらっしゃると信じています。

先日、私たちは月額1,000円から、夜のユースセンターを応援していただけるサイトを立ち上げました。たくさんのひとたちが、この場所を支えてくれている。若い世代を応援してくれている。「だから、大丈夫だ」と伝えていきたい。

そのために、夜のユースセンターの運営を支えてください。みなさまの応援、ご来訪を心からお待ちしています。

孤独な夜を照らす光を―家にいたくない若者の居場所をみんなで作りたい

育て上げネット 理事長
工藤 啓

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