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仙腸関節の理学療法Part2

パトリックテストを行って『仙腸関節が問題である可能性が高いな』と思っても、実際に何が痛くて何が問題になっているかまで理解することが難しいと耳にします
少しでも皆さんの治療や考えの手助けができると幸いです

Part1の概論を踏まえて
仙腸関節障害はニューテーション型、カウンターニューテーション型、不安定型に大別されます

ニューテーション型


カウンターニューテーション型



不安定型(図水平断)



仙腸関節を安定させる靭帯
前仙腸靭帯→梨状筋、腸骨筋付着
後仙腸靭帯→大半が仙結節靭帯に移行
骨間仙腸靭帯
仙結節靭帯→遠位で外側ハムストリングス、近位で大殿筋付着
腸腰靭帯→腰方形筋に付着
仙棘靭帯

などが挙げられます





仙腸関節を安定させる筋(キネシオロジー参照)
メインとして
脊柱起立筋
外腹斜筋、腹直筋
ハムストリングス

サブとして
大殿筋、広背筋、内腹斜筋

が挙げられています

胸腰筋膜の解剖を理解することは仙腸関節障害を理解する上で大切かと思いますが今回は省略させていただきます




問診

ワンフィンガーサインorパームサイン
→ワンフィンガーサイン

仙腸関節に加わる剪断力が原因で痛む場合の主訴例
→階段、開脚、座位、初動時痛、長時間同姿勢で痛い、腰の動きで痛い

不安定性が原因で痛む場合の主訴例
→側臥位にあまりなりたくない、歩行時痛(歩行により増悪するパターン、逆に筋収縮が得られてくることで寛解するパターンどちらもあります)



評価

・アシスト
→実際の痛い動きで仙腸関節をアシスト(ニューテーション、カウンター、※不安定型)することで疼痛が増悪、寛解するためどのタイプなのか判別できる
※不安定型は仙腸関節を圧迫しながら動作をする

・整形外科テスト

パトリックテスト
→両側骨間仙腸靭帯や後仙腸靭帯にストレスが加わる
腰に手を入れた状態でパトリックテストを行うと仙腸関節のストレスが減ります
そのため腰に手を入れた状態でのパトリックテストで痛くない場合は股関節性ではなく仙腸関節性疼痛を疑います


ゲンスレンテスト
→股関節伸展側の長後仙腸靭帯、屈曲側の骨間仙腸靭帯にストレスが加わる


ストークテスト
→後仙腸靭帯にストレスが加わる
体幹の安定性(跛行の影響など)、骨盤後傾能力の有無、仙腸関節をニューテーションにして動作のスイッチを入れられるかなどを目的に評価します
陽性の場合ASLRでもエラーが起こるケースが多いです
トレンデレンブルグは後仙腸靭帯の走行的に伸張ストレスが加わる為、跛行治すことで仙腸関節痛が取れる可能性もあると推測する
デュシャンヌで剪断力を回避しているパターンもあるので骨盤の傾斜には注意しておく。


P4テスト
→仙腸関節剪断ストレス



上記の他に
前方解離と後方圧縮(背臥位で骨盤を外へ押し広げる)
後方解離と前方圧縮(側臥位で骨盤前方を上から押す)
大腿スラスト
仙骨スラスト(ニュートンテスト)

4つのうち2つ以上陽性で仙腸関節痛の疑いという文献もあります。

余談ですが、興味深いことに後方解離と前方圧縮で疼痛が増悪する場合、コルセットも反対方向(背中でテープをとめる)に巻くと寛解する方もいます


基本的な治療

治療に関しては正直皆様の色だと考えます
上記評価を行い解釈することが大切です
例えば
ニューテーションアシストで疼痛が軽減した場合
もちろんROMやMMTを行なった上で
ハムストリングスや大殿筋ストレッチ
腸腰筋強化
することも良いでしょう
また逆にハムストリングスを強化し骨盤後傾方向にすることで相対的にニューテーションを促すことも手でしょう
さらに言うとトレンデレンブルグ様歩行やデュシャンヌ様歩行を改善することで仙腸関節痛が改善することもあるでしょう
ストレッチによって症状が増悪してしまっても良いと思います
それだけで終わらず、もしかしたら不安定性を助長してしまったのではないかなど考察できればむしろ増悪させてしまったこと自体が評価になるかもしれません


マルアライメント=疼痛ではありません
力学的にメカニカルストレスが増大するため改善する必要はありますが、正しい筋張力、筋出力を得ることが重要になります
ただ、側弯の有無や大腿骨頭の変位でも仙腸関節への荷重がかなり変わってきます
そこまで総合的に観ることができたら完璧だと思います
なかなかこれだ!と言う文献が少ない仙腸関節ではありますが皆さんのお役に立てると幸いです


〜以上、月末理学療法士/そう でした〜
こちらのコンテンツは「巨人の肩の上」という言葉があるように、文献などを参考に臨床経験(失敗体験も含む)も交えて発信しています
またメディカルに完璧な正解がないことをひしひしと感じます
そのため、あくまでも自身の治療の〝引き出しの一つ〟にして頂けると幸いです


参考文献、書籍

Donald A.Neumann(原著者)PaulD.Andrew 有馬慶美 日高正巳(監訳者)筋骨格系のキネシオロジー2018

Ricard L.Drake etc(編集)グレイ解剖学2007


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