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彼とお笑い

私には3年付き合ってる彼氏がいる。そして今その彼氏は私の目の前にいる。大きなため息。彼が話がしたいとか言って私を喫茶店に誘ったくせに中々話そうとしない。仕方ない、こうなってしまっては私が話を振るしかない。振りたくないけどね、どうせあれでしょ?心臓がぎゅっと締め付けられて目の前が真っ白になる現象を引き起こすあの話でしょ?
別れ話でしょ?
「あの、どうした?話って何?」
「ごめん、好きな人ができた。だから別れてほしい。」
やっぱりか。話なんて結婚か別れだろうなとは思ってたけど、最近彼が私から離れようとしているのが何となく伝わってたから後者の話だろうなとは思ってたけど。愛してるよとか幸せにするとかベタなことを一切私に言わなかった彼がまさかこんな時にドラマや小説に出てくる恋人たちがよく使うベタなセリフを使ってくるだなんてちょっと感心した。
「そっか。わかった。じゃあ今までありがとね。あのさ、一つ聞いてもいい?」
「いいよ、なに?」
「その好きな人っていうのはどんな人?お笑い好きなの?」
一瞬戸惑った顔をした彼。さっきまでずっとコーヒーをかき混ぜてたのに手を止めて私の質問に答えた。
「うーん。好きではなさそう。まだわからないや。」
「そうなのね。」
少し勝ち誇った気分になってしまった。お笑いに興味がない女が彼と付き合おうとしてるだなんて鼻で笑いそうになってしまった。だって彼はお笑いが大好きでそれを一緒に楽しめる女じゃないと彼とは釣り合わないし仲良くなんてなれるはずがない。その女と彼が付き合ったとしても私と彼を超えることはできない。よし、勝った、私の勝ちだ、と自分に言い聞かせた。でも正直もうこの勝負は負けている。彼の心は私にもう向けられていないのだから。彼が私に別れ話を持ちかけた時点で私はもう負けている。だけどそんな事認めたくないし、少しでもその女に勝ちたかった。こんな時でさえも負けたくないという想いが芽生えてしまう自分の性分に腹が立った。

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