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感情労働(3)サービス品質が過小評価されてないだろうか?

ホックシールドは「感情社会学」において、「感情労働」では「感情の商品化」が求められ、「感情規則」に則った「感情管理」が必要になっていると説いています。現状を見渡すと、この論には疑う余地がありません。

一方で社会学者の岡原正幸先生は自著の「ホモ・アフェクトス」で、感情社会学は詐欺的商法だと非難しています。管理された感情表現や心のあり方は、生きられた(自己の)感情経験に不誠実で、そこに感情はないとの論が展開されました。相反する論ですが私はこちらにも同意します。

現実社会の業界を見てみましょう。

レジャー業界ではディズニーランドが、ホテル業界ではリッツ・カールトンが、航空業界では日本航空が、頻繁にサービス品質の模範として扱われ、高品質の接遇が消費者に満足感を与えます。その支出がたとえ高額でも、それを超える機能的価値もしくは情緒的価値を消費者が実感できれば需給関係は成立するのです。

従って、偽りの感情であっても、その演出された感情は商品になりえると考えます。

ただ、その価値を生み出す労働者個人の努力が正当に報われているのか疑わしい。

仕事の成果物は技術とセンスと労力の積が品質の程度を形成します。その品質と報酬のバランスが、肉体労働や頭脳労働の労働市場ではある程度取れていると思うのですが、感情労働の労働市場においては正当に評価されているのか疑わしいのです。

高品質の接遇(高いサービス品質)を生み出すための感情管理(表現の質、心の管理)とその労力は数値化するのが困難なので、組織成果のために個人が持ち出した"管理コスト"とは扱えない。せいぜいメンタルヘルスケアの対象になるくらいしか報いがない。

顧客満足のために生身の本心を抑える感情管理。その労働負担に報いを。

<参考文献>

管理される心:感情が商品になるとき
 (出典:石川准先生 ウェブページ@静岡県立大学)

ホックシールド『管理される心─感情が商品になるとき』(PDF:656KB)
 (出典:日本労働研究雑誌 2016年4月号(No.669) より)

トーク内容「非社交と脱社交から医療・福祉を考える」
 (出典:ゆき.えにしネット)

「ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか」(武井 麻子 著)

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