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11/16開催レポート「健常と障害の間~私たちの知らない世界。~」

11月のセッションは「私たちの知らない世界」シリーズ第5弾!
最近メディアや身近なところでも聞くようになったボーダーやグレーゾーン。ことばは聞いたことがあるけれども結局のところよく知らない、分からない人も多いのではないでしょうか。

ゲストの特定非営利活動法人ミヤギユースセンター代表の土佐昭一郎さんから話題提供をしていただき、健常と障害という一見区別されたような言葉のその曖昧な部分を考え、話してみることで見えてくる間(あいだ)について参加者同士で意見交換をしました。

ゲスト 土佐昭一郎さん
気仙沼市出身。
東京での企業経験を活かし、2001年高校中退者・不登校生等の学習と進路支援を目指した特定非営利活動法人ミヤギユースセンターを設立。
元家庭裁判所委員会委員、前NPO法人せんだい・みやぎNPOセンター代表理事。現在、一般社団法人Dream Forest Supporters役員、私立高等学校非常勤講師(社会科・商業科)、産業カウンセラー、教育カウンセラーなど。

土佐さんは発達障がいの専門家ではありませんが、発達障がいと診断された子どもたちと多く接し、相談や指導の経験があります。


ミヤギユースセンターについて

ミヤギユースセンターは、不登校など問題を抱える生徒への情報提供や無料相談 (年間250~300件)、高校を中退させないための支援、不登校生の学校復帰のための学力支援などを行っています。

今までは高校中退や不登校の相談が多かったですが、最近は小学校低学年の児童の相談が増えています。
「健常と障害」とありますが、私自身、メガネがあれば健常者、メガネがないとほとんど見えないため障がいがあると考えると、健常と障害の境目はどこにあるのだろうと思います。

個別指導による「学習とこころ」のサポート行いながら進学や就職で悩む若者の自立支援を実践。『特性を活かし得意を伸ばす、社会適応能力を育て、生き抜く力を培う』を教育目標に、生徒の自主性や自立を育む指導を行っています。

ミヤギユースセンターを利用する子どもたちは、大勢の人の中にいることが苦手だったり、生活リズムが不規則だったり、個性に寄り添った指導を必要とすることが多くあります。
子どもたちの持っている特性を生かして、いかにいい学びにつなげるかを意識しながら支援しています。
みなさん進級や進学、就職など多種多様な進路を歩んでいます。

会場で話す土佐さんの様子

特性・個性を理解することが大切

例えば、電車に乗っているとき、そわそわしてしまうな子どもには、そわそわしそうになったらキャンディーや飲み物などを口に含んで落ち着きを取り戻すように伝えています。

忘れ物が気になって何度も確認をしてしまう子どもには、携帯電話で写真を撮って、確認するよう促しています。これは習慣であり、自分にとって何が心配かをきちんと解決してあげれば済むことが多いです。

コミュニケーションがうまく取れない、集団生活などが難しい子が大学や専門学校などに行くと自分で時間割を選べたり、隣に座る学生が毎回違ったり、自分の好きなことだけ勉強できる環境に身を置くことで学校生活が楽しくなる傾向があります。

個性を理解することも大切です。
強いところを伸ばし、強いところを上手く使いながら弱いところを少し補充してあげるような思考を持てば、当事者も支援者もストレスがかからず良い関係が築けるのではないかと思います。


参加者のみなさんからの質問

(質問)
2001年にミヤギユースセンターを設立した経緯を教えてください。
(回答)
当時、仙台には不登校の子どもを支援する団体がありませんでした。
発達障がいという言葉は2000年前後から日本に入ってきましたが、実際にそういったケースに当てはまる子どもに接する中で経験を積み、研修も受ける中で、情報提供や指導をするようになりました。

(質問)
30年~50年ほど前は、発達障がいや知的障がいのボーダーにいるような子どもたちはそこまで問題にならなかったと思いますが、いかがでしょうか?
(回答)
もともと日本は農業や漁業、林業中心に動いていた社会でしたが、ここ30年ほどでサービス産業が増えて、コミュニケーション能力が必要とされるようになってきました。
学校に行くことが当然な世の中だったのが、今は学校に行かないという選択を子ども自らするようになり、親もそれを受け入れる傾向にあります。
また、昔は工場のラインなど単純作業の仕事もありましたが、今はロボットに代わり、障がいを持つ人たちができる仕事が減っているという現状もあります。

(質問)
発達障がいや知的障がいのボーダーの子を持つ親はどうすればいいですか?
(回答)
昔は自分の子どもに「障がい」があると言われるのが嫌だという親が多かったのですが、今は障がいがあると判定されることに抵抗がない傾向があるように感じます。
もし、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を取得することを検討されているようなら、手帳の取得は早い段階で良いと思います。二年に一度の更新制なので、発達の段階で手帳を返納することも可能だからです。
手帳を持っていても大学に進学している子どもは多く、手帳を持っているかどうかなどは聞かれないので、手帳を有効活用してもらえればと思います。
ちなみに、宮城県内で精神障害者保健福祉手帳を取得している人は約22,000人いて、宮城県の人口の約1%です。
<宮城県HP参照>
各種統計情報について - 宮城県公式ウェブサイト (pref.miyagi.jp)

(質問)
健常とは?普通とは?その定義は、誰が決めるのか?どこで確認出来るのでしょうか?
(回答)
検査という手法で確認ができ、外部の支援を受けないと生きていくのが難しい場合は障がいと言えると思います。

(質問)
障害者手帳取得などにいたらない制度の間にある方々に対し、細く長く寄り添うサポート(必要となったときに速やかに支援に入れるような)が、どうしたら実現するでしょうか?
(回答)
10年20年のスパンで長く支援する人の存在が必要です。
ミヤギユースセンターでは、二世代にわたって不登校の相談に乗ったり、卒業生の結婚の相談に乗ったり、長い期間で支援しているケースがあります。行政施策として、国がボーダーとも言えないあいまいなところにいる子どもの支援に乗り出すそうなので期待しています。

土佐さんの話を聞いて、参加者同士少人数のグループで話をしました。
さいごにグループで出た話題を共有する時間もありましたのでいくつか紹介します。

(参加者から)
個人の個性を伸ばしながら社会に新しい風穴を開けるようにするのか、既存の社会に合う形で支援をしていくのか、どちらがいいのでしょうか?
(土佐さん)
私たちとしては、どんな社会であっても自立できるようにという想いで支援をしています。
個性を伸ばすためにも長く付き合ってよく会話をして個性を理解するということを心がけています。ミヤギユースセンターでは、学校のような机ではなく、一般的な会議室のような机や椅子を使い勉強やプログラムを行います。自分の隣に他に生徒がいてもいなくても先生の話に耳を傾けながら勉強をしていて、そういう「空気感」があって、そこに「自分が居る」「空間に居られる」という認識が大事だと思っています。

(参加者から)
高校の教師をしているが、生徒が卒業後に就職などでどこかに所属したけれどうまくいかず悩みを相談してこられるケースがあります。
(土佐さん)
卒業しても会社勤めがうまくいかないなどで悩んで相談を寄せる卒業生はいます。一番は、悩みをよく聞くことと、自分から結論を出す道筋を作ることだと思っています。
ミヤギユースセンターでは10年前や15年前の卒業生も相談に来ます。いつでも来ていいよと話をしていますし、大学に進学した後を見据えての支援もしています。


12月は久々にテーマを設けず、情報交換会を開催します。
仙台・宮城で活動している皆様の近況や課題感、他都市の注目すべき活動の情報など、なんでもお聞かせください。

日 時:12月21日(木)19:00~20:30
会 場:仙台市市民活動サポートセンター6階セミナーホール、オンライン(Zoom)にて開催
対 象:仙台・宮城で活動している方、興味のある方、どなたでも参加できます。みなさん情報交換に参加いただきます。
参加費:無料
申 込:申込フォームから申込お願いします
2023/12/21セッション申込フォーム (google.com)

みなさまのご参加お待ちしております!


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