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まだ見ぬ新しい価値を名護から世界へ —— 思い出書店 森石豊さん【地域と歩むまちづくりvol.4】

こんにちは。沖縄県名護市の「地域の公園」coconovaです。

このnoteでは、coconovaをキッカケにあたらしいことを始めてくれた人たちのインタビューをお届けしています。

過去のインタビュー一覧はこちら。

今回は、coconovaの2階で営業している「思い出書店」の森石豊さんをご紹介したいと思います!

※撮影のためマスクを外しています

森石豊
経営者。大学卒業後、ライター、動画メディアのディレクター、スタートアップでの事業立ち上げなど、さまざまな仕事に携わる。2020年に沖縄に移住し、企業のオウンドメディアへのコンテンツ提供やゲストハウス、出版社などを経営。SF作家としても活動している。
Instagram→@yutaka_ch
Twitter→@forestone05

Written by 平良海舟(スタジオユリグラフ

お金ではなく思い出を交換する古本屋

coconova2階の広いスペースにある古本屋「思い出書店」。名護市で唯一の古本屋として2022年4月26日にオープンしたこのお店は、ふつうの書店とは違うユニークな仕組みを持っています。

「思い出書店は2つの特徴があります。ひとつは、お金で買うのではなく、交換する書店だということ。もうひとつは、すべての本に、前の持ち主の『思い出』を書いた帯が巻かれてあること。本と一緒に、お客さん同士の思い出を交換しあう仕組みになってるんです」

※撮影のためマスクを外しています

そう語るのは店主の森石豊さん。森石さんは経営者として、企業のメディア記事の作成や、ゲストハウスの運営など、複数の事業を手がけています。
思い出書店という新たな事業では、あえて「お金を介さない交換」にこだわっていると言います。

「そもそも、人の大切な思い出に値段をつけたくなかったんですよ。だからお金で本を交換しない仕組みにしました。交換のたびにお客さんに思い出を書いてもらうことで、『思い出』という価値の付加された本がどんどん増えていく。思い出が添えられた不思議な本が名護という街に流通していったら、めちゃくちゃ面白いなと思ったんです」

悩み、活動する中でたどり着いたコンセプト

※撮影のためマスクを外しています

森石さんは、大学卒業後、ライターや編集者、動画メディアのディレクター、スタートアップの新規事業立ち上げなど、さまざまな仕事をしてきたといいます。

東京から沖縄へ移り住んだのは、2年前のこと。友人に誘われて、遊びにくるうちに移住を決めました。当時、森石さんは35歳。いまの会社を続ける道もあるなかで、「自分はこのままでいいのか」という悩みも抱えていたそうです。

「そのときちょうど、coconova共同代表の加納さんから『出版社とか本屋さんとかやるのはどうなの?』と言われて、ハッとしたんですよ。そうか、おれ、本屋とか出版社とかやりたかったんだ、って。その言葉がきっかけで、いろいろ動きはじめることになったんです」

最初に森石さんが沖縄ではじめたのは、ブックソムリエでした。屋台のような移動式の本屋をつくり、お客さんと話をしながら本を紹介・販売する、というお店です。
販売していた本の値段は、一律で500円。お客さんの気持ちの分、投げ銭をいただく、という仕組みでした。反応は大変良く、1日に3万円以上の売上に達したこともあるといいます。

「一万円の投げ銭をくれたお客さんもいたんですよ(笑)。新品の本を買うより高い値段を払ってくれる人がたくさんいました。で、『なぜ古本にこんな価値が生まれたのか』って考えたときに、ぼくの個人的な本の思い出を語っているからだ、と気づいたんです」

古本の新たな価値に気がついた森石さんは、自分の思い出を語るだけでは不十分だと感じたそうです。自分の思い出だけではなく、店を訪れるお客さんそれぞれの思い出を交換したい。そう考えてゆくなかで、たどり着いたのが、思い出書店のコンセプトでした。

「ぼくの目的は成功ではないんです」

※撮影のためマスクを外しています

思い出書店のコンセプトが決まると、LINEを使ったシステムの設計や、思い出を綴るための帯のデザインを模索しました。試行錯誤する毎日の中で、体調を崩し、鬱のような状態になってしまう期間もあったといいます。活動も中断し、自分自身と向き合い続けていた森石さんは、ある日、大切な気づきを得たそうです。

「ライターとしてキャリアをスタートしたのに、文章を読むことも書くこともできなくなった。そのときに、自分の人生の行動原理が『まだ見ぬ新しい価値を作り出すこと』だと気づいたんです。その原理に準じるのであれば、手段は文章を書くこと以外にいくらでもある。そう思うと、また動き出せるようになりました」

※撮影のためマスクを外しています

現在、思い出書店のほか、名刺サイズの紙とQRコードを使ったオンライン雑誌など「新しい本」をつくる出版社や、宿泊料のかわりに「ゲストがやってみたかったこと」を形にしてもらう紹介制のゲストハウスなど、複数の事業を展開している森石さん。それらはすべて、「まだ見ぬ新しい価値を作り出す」という自らの行動原理に基づいているといいます。

「ぼくの目的は成功ではないんです。新しいものを提供したり、今まで目を向けられていなかった価値を再発見したり、そういうプロダクトを通じて、世の中をちょっとだけ変えていきたいと思ってるんです。ほんとうに価値のあるものは、みんなの行動や価値観を変えていくと信じているので」

どんどん人の輪を増やしていく思い出書店

思い出書店は、6月中に100人の利用者を目指し、coconovaで店舗を構えつつ、車を改装した移動店舗も始めていく予定です。

「街に住む人たちや街を訪れた人たちの、顔がみえるような書店にしていきたいと思ってます。本を通じて誰かとつながって、その誰かもまた別の人とつながる。そうした人の輪をまずは名護に広げていって、将来的には、他の街にも広げていきたいです」

はじめて名護を訪れたとき、住んでいる人たちのエネルギーに励まされたという森石さん。「だからぼくも、なにかやりたいひとがいれば背中を押してあげたい」と笑顔で語ります。そんな彼に会うために思い出書店を訪れる人は少なくないはず。思い出書店では、いまこの瞬間にも、人々の出会いが積み重ねられています。

【思い出書店】
住所:沖縄県名護市宮里1004番地(coconova内)
営業時間:10:00~18:00(月曜定休)
instagram

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