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指導する上で最も大切にしている「寄り添う」姿勢【CB基準の守備分析講座講師 清水智士インタビューVol.3】

元J1コーチの2倍早く守備の穴を見抜く『CB基準の守備分析講座』【動画解説】」の講師をしていただいている清水智士さん(サガン鳥栖、ベガルタ仙台でコーチを歴任。育成年代の指導もしたい!と考え現在は大同大学大同高校サッカー部コーチ)のインタビュー第3弾です。
Vol.1:つくばで肌で感じた学ぶ姿勢の重要性
Vol.2:勝つことを知り尽くしたユンジョンファン監督との仕事

サッカーアナライザー:ユンジョンファン監督がセレッソに行って、清水さんはベガルタに行きますよね。監督もJで初めて違う方で、Kリーグを経験してからのJリーグ。どう感じましたか?

清水さん:まずやっぱりJリーグは色々揃ってると思いました。というのと、2年間Jリーグを離れて戻ってきてみると、試合の強度が違いました。

サッカーアナライザー:Jのインテンシティが高くなってたってことですか?

清水さん:そうですそうです。インテンシティが高まったことと、あと戦術的にも高まってるなあっていうのが第一印象でした。素直に、「あっ2年間いないだけで進化するんだな」って思いました。

サッカーアナライザー:へぇー!なるほど。

清水さん:自分もKリーグにいながら、Jリーグも見てたつもりですけど、でもやっぱり中に入って色々仕事をする中で、それは感じました。

サッカーアナライザー:それはベガルタだけじゃなく、他のチームも含めたJリーグ全体が、ってことですよね。

清水さん:そうですそうです。

サッカーアナライザー:それはちょっと嬉しいのと、安心とがあります。
ちなみにベガルタで仕事をして、苦労したことや学んだことはありますか?

清水さん:当たり前ですけど、まず監督に求められることが違ったので、1人の監督とだけ仕事してわかったつもりにならなくて良かったなって思います。違う監督のもとで、違うサッカー観の中で仕事をして、チームの積み上げ方、アプローチなどすごく勉強になりました。

サッカーアナライザー:具体的に話せそうなことはありますか?

清水さん:自分たちを高めていくところと、次の対戦相手への準備をするところのバランスとか。次の試合までの時間の使い方とか、準備の部分も違いました。どっちが良いとか悪いとかではなく、また1から学んだ感じです。だからその分大変でしたけど、すごい勉強になったと思います。

サッカーアナライザー:ベガルタでここはすごく求められた、みたいなことってあるんですか?

清水さん:役割が違ったというか、ユンさんとやっていた時には映像を使ってというのがメインでしたが、ベガルタではピッチの上でも対戦相手の情報を伝えることがあったり。

サッカーアナライザー:なるほど。そして今、また育成で、高校年代を指導されてますよね。そこの指導をする中で、プロと違う部分がありますか?
また、意識してることやこだわっていることはありますか?

清水さん:一番大事にしているのは、選手たちと寄り添うことですかね。
選手たちに上から「サッカーってこういうことだよ」って言うつもりは全くないです。もちろんある程度、「本当に目標達成するんだったら、こういうことが必要だよ」という基準は示しますが。

上に立つっていうよりも、まずは自分が前に立つ。でも引っ張っていってるようで、ちょっと自分が後ろに下がって一緒に歩いてるような感じで。選手たちが何を考えていて、どうなりたくて、どういう判断があって、どういう日常があって…

そういう選手たちのペースというか、そういうことを見たり感じたりしながら進めていっているつもりです。
本当に選手たちから教わることばっかりなんです。自分の言葉に対して、どういう反応をしているかとか。自分の言葉がどう伝わっているのか、はっきり出るので。

それで「ああちょっと違ったな」とか「こういう風に伝えたら進むんだな」とか、選手たちが教えてくれる、選手たちの中にある答えを探しているというか、上手く言い表せないですけど、そんな感覚を持っています。

サッカーアナライザー:素晴らしいですね。寄り添う。その選手に寄り添う、というのはプロの時もありましたか?

清水さん:もちろんありました。最初は僕の話なんて聞いてくれないと思っていました。だから自分の話はポジティブに終わらせよう、というのはずっと心がけてました。

サッカーアナライザー:というと?

清水さん:例えば、「これができてない」っていうネガティブな伝え方をすると、多分聞いてもらえないだろうなって。だから「これができるようになったらこうなるよ」っていう、未来のイメージと言うか、ポジティブになれるような伝え方を心がけてました。

サッカーアナライザー:伝え方、大切ですね。

清水さん:それは韓国に行ってからも同じで、そういうコミュニケーションができて信頼を掴んで、というのは国は関係ないんだなってことも感じました。そもそもポジティブに考えた方が楽しいなと。

サッカーアナライザー:間違いないですね。

清水さん:楽しいと、自分からどんどんやるじゃないですか。そういう経験をプロチームの中で経験していたところから、今は高校生たちの指導をすることで、自分もより素の自分でやってるというか、背伸びせずにやれているのかなという気はしています。

サッカーアナライザー:うんうん。

清水さん:背伸びせずに素の状態で選手たちと接している方が選手たちともより深く関われている感じはしますし、逆にこっちの考え方も深く伝わってるんじゃないかと。

プロの中でやってきた4年間とはまた違う成長や気付きが、高校生を指導する中ですごいあるなと思ってます。

サッカーアナライザー:いいですね、楽しそう(笑)

清水さん:だから、よく「プロの後、高校生を見ていてレベル低く感じないの?」とか聞かれるんですけど、レベルが高いとか低いとか、あんまそういう見方をしていないんです。

同じサッカーだし、何を選手たちが欲してるか、どうしようとしているかなどが違うだけというか。それぞれの立場で、状況に合わせて伝えようとしている、やるべきことをやっている、そういう意味では自分自身の幅も広がってるのかなと思っています。

サッカーアナライザー:めちゃ良いですね。ちなみに今までで、これは苦労したなー、という経験ありますか?

清水さん:話が戻ってしまいますが、苦労したのは最初にサガン鳥栖に入った時ですかね。ものすごいプレッシャーを勝手に感じていて。ユン監督も既に3、4年指揮をとり、チームがある程度成熟してる中で、プロの世界の右も左もわかっていない自分だけがポンって入ったような状況だったんですよね。

サッカーアナライザー:なるほど。

清水さん:周りの選手たちはプロの意識で当たり前にやっている。でも自分はプロのことを何も知らない。でもとにかく自分が穴にだけはなっちゃいけないんだとか、そういうのを勝手に背負いこんで、精神的に自分を追い込んで仕事をしてました。

サッカーアナライザー:それは大変だ。

清水さん:当然最初から認められるわけがないのに、「来る場所間違えたんじゃないかな」とか、今思えば過剰なほどあの時にはプレッシャーを感じていました。

サッカーアナライザー:おお、マジですか。

清水さん:その年、W杯があったんですけど、その中断期間まではかなりきつかったです。サポートしてくださるスタッフの方がたくさんいてくださったにもかかわらず、もうなんか、もがいてましたね。作業効率も悪かったので、睡眠時間も削って…

サッカーアナライザー:そこから解放されたのは、何かきっかけがあったんですか?

清水さん:W杯中断で、1回立ち止まって色々整理して落ち着きましたね。色んなことを客観的に考えられるようになりました。あとは中断期間で監督やスタッフ、選手たちとコミュニケーションをとる時間が増えたりしたのも大きかったです。

後から振り返れば、W杯の中断がある影響で、その年は例年にも増して連戦が多かったんですよ。ただでさえ仕事効率が悪い中で、試合が次から次に来る状況で、そのプレッシャーを感じながらやっていたんです。

サッカーアナライザー:それはエグい(笑)

清水さん:だから、最初はそれまで楽しかったJリーグを楽しむ余裕などは全くなく、ただただ必死でした。中断期間後は慣れていった部分もありますし、信頼も少しずつ感じ始めました。

サッカーアナライザー:1年目からいきなり大変な年ですね。乗り越えましたね。

清水さん:非常に良い経験でした。

サッカーアナライザー:ちなみに、FIゼミの特別講座「CB基準の守備分析講座」の講師をしていただいていますが、CB基準を意識的に見るようになったのはいつ頃ですか?

Vol.4 CB基準に守備を見た時のピッチの景色
に続く
FIゼミ特別講座「元J1コーチの2倍早く守備の穴を見抜く『CB基準の守備分析講座』【動画解説】」講師、清水智士インタビュー
Vol.1 つくばで肌で感じた学ぶ姿勢の重要性
Vol.2 勝つことを知り尽くしたユンジョンファン監督との仕事
Vol.3 指導する上で最も大切にしている「寄り添う」姿勢(本記事)
Vol.4 CB基準に守備を見た時のピッチの景色

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