外から見る日本と日本人~日本の中から見る世界と日本の外から見る世界(4)日本人と外国語
(写真)世界の都市への方角と距離。マレーシア・ペナン島。
長い旅行へ出る前は、日本人でも海外を自由自在に旅行するような人達は、みんな、当たり前に、英語や現地語はペラペラなのだろう、と思っていました。
確かに凄く言葉が達者で驚かされる日本人にも数多く出会いましたが、そうでもない人も、また多かった。
そして、外国語が達者な日本人というのは割に特殊な存在で、一般的には、日本人は外国語ができない、特に英語が苦手、というのが世界的な認識だということを知りました。
海外へ出て、欧米人旅行者との高く厚い壁を感じましたが、その原因は、日本人の外国語下手に加えた国際的なコミュニケーション能力の低さと、日本人とはコミュニケーションが取れない、という世界的な共通認識というか、先入観ができあがってしまっていることでした。
私自身の語学力はどうなのかと言うと、
この旅行記の期間(1994~2000年)以前の1992年に、全く英語が喋れない、聴き取れない状態でアメリカへ1ヶ月間行って、全く話が通じないことに衝撃を受けた後(しかし気の良い旅行者とか、または道端で会うホームレスとかは話し相手になってくれた)、
1994年インド・ネパールへ行くと、現地の人達はやたら話し掛けてくる。元英植民地だったせいで英語が達者な人も多いが、発音はインド流。その方が、日本人にとっては聴き取りやすい。また、分かりやすい言葉を選んで喋ってくれたり、日本人の下手な英語でも聴いてくれる人が多かった。
↑インド・カルカッタ。リクシャワーラー。
彼らと会話を繰り返すうち、少しずつ英語での最低限の意思疎通はできるようになってきて、その後は、宿などで一緒になった欧米人旅行者と話したりするようになりましたが、ある程度のコミュニケーションは可能になった時点で感じ始めたのが、欧米人と日本人の間にある高く厚い壁のようなものであり、両者の根本的な違いでした。
そうした体験を踏まえて、一時帰国中は言語学関係の本を読むことを面白く感じて読み漁るうちに気付いたのが、言語というのは、世界地図通りの距離がある、ということでした。
よく言われることですが、英語とドイツ語の違いは、北京語と広東語の違いよりも少なく、同じ言語の方言、と言えなくもない。
実際、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、からロシア語、ヒンディー語、ウルドゥー語に至るまで、広く、インド・ヨーロッパ語族という大きな言語集団であることが分かっています。ルーツを辿ると、元々は同じ一つの言語(祖語)だった、ということです。
では日本語は、というと、東洋では西洋に比べて昔の文献が残っていないので、何とも言えないらしい。しかし、日本語、アイヌ語、韓国・朝鮮語、モンゴル語、トルコ語からハンガリーのマジャール語、果てはフィンランド語までをひとくくりにして、ウラル・アルタイ語族と考える説もあるようです。
確かに、韓国語と日本語は聴いた感じが似ており、共通の単語もたくさんあるようです。
↑韓国・ソウル市街
翻って、英語と日本語というのは、語順も反対で発音形態も全く異なるので、遠い言語、と言わざるを得ません。
欧米人旅行者は、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、スペイン、イタリア…、と国は違えど、言葉は同じインド・ヨーロッパ語族で共通点がかなりあり、これらの国々の人々が英語を、あるいは互いの言語を習得しようとすることは、さほど難しくはない。頭の中の母語を英語に置き換えるだけで良い。
日本語の場合は元になる文法がが大きく違っていたりすることもあり、私自身の経験ですが、英語を話そうとする時は、日本語を頭の中から追い出す必要があります。
手順としては、頭の中の日本語を、まず言葉のないイメージ、言葉以前の映像に変換します。
その映像を、自分の数少ない英語の語彙に変換していく感じです。
または、初めから日本語抜きで脳内のイメージをいきなり英語にします。
当たり前ですが、小学校に上がる前ぐらいの子供は語彙は少ないと思いますが、自分の言葉で好きなことを喋っています。
知っている単語や表現はごく限られていても外国語を喋ることはできるし、会話をすることはできる、ということを、こうした経験で理解したように思います。喋り方は子供のように拙く聞こえるかも知れませんが。
日本語を英語に置き換えていると会話のスピードについていけないので、そのように発想を転換しないと、音韻構造の全く違う英語を日本人が喋れるようになったり、それ以前に、喋る勇気を持つようになるのが難しいように思います。
会った日本人旅行者で、欧米人とも臆さずコミュニケーションを取っていた人達は、確かな語学力と同時に、外国語で会話する時、日本語を頭から追い出す脳内作業をやっている人達だったように思います。
↑中国雲南省に残る「東巴文字」の解説書
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