NO推理、NO探偵? 謎、解いてます!(レビュー/読書感想文)
NO推理、NO探偵? 謎、解いてます!(柾木政宗)
を読みました。2017年の作。
メフィスト賞のミステリー作品で未読だった作品です。今回、2024年にして初めての文庫化であり、また、ノベルス版から大幅改稿もされているということで手に取りました。
まぁ、相当に実験的、前衛的な作品です。ミステリ好きのなかでも人を選ぶ、多分にそんな作風であり、万人には到底オススメ出来ません。
あらすじとしては、名探偵の女子高生がひょんなことから推理力を失ってしまい、相棒とともに推理を用いずに様々な事件を解決していくというもの。
では、推理を用いずにどうやって事件を解決するのかというと、まず、主役の女子高生ふたりは自身が小説内の登場人物であることに自覚的であり、作中では、いわゆるメタ的な会話が終始飛び交います。そして、事件の解き明かしかたもまた、そのメタ的な考察がもっぱら用いられるのです。
あえて伝わりやすそうな例をひとつあげますと、私たちがテレビドラマを見ていて役者さんのランク(失礼)を材料にしてその先の展開を考察するような――あの感覚に近いと言えます。これは論理に根ざした推理とは言えませんよね。
様々な(推理と呼べなさそうな)アプローチで真相に迫るテクニックは、それはそれで非常に技巧的であり、一個の作品としてまとめあげる手腕は相当なものです。
こうした構成の連作短編が四つ続き、最後の最終章(第五話)が大ネタとなります。
すべてが伏線――
他のヒット作品でも帯にこんな惹句があったように記憶していますが(女霊媒師的な)、本作においても、まさにこの言葉が適当です。四つの短編中の、何気ない描写や、おちゃらけた会話すべてに意味が附され、最後の謎解きに回収されていきます。
どこまでも、ゲーム的/パズル小説的な作風を貫いているため、上述のとおり、万人向けの作品でないことは否めません。が、それでもミステリとして技巧を極めた作品のひとつであることは間違いなさそうです。
ちなみに、私は、柾木政宗さんのデビュー作である『NO推理、NO探偵〜』は今回初めて読みましたが、2023年に発表された『まだ出会っていないあなたへ』は新聞の書評か何かで興味を持ち、新刊のときに読んでいます。
こちらは『NO推理、NO探偵〜』とはまるで(180度)異なる作風です。
胸を打たれるエモーショナルな群像劇ですが、メフィスト賞作家である柾木さんらしく最後にちょっとした驚きも用意されています。
こちらは、『NO推理、NO探偵〜』とは一転、万人にオススメ出来てしまう感動作です。
柾木さんがまだ自身の作風を模索されている最中なのか、あるいは作家としての抽斗の数が多いのかわかりませんが、
・NO推理、NO探偵? 謎、解いてます!
・まだ出会っていないあなたへ
続けて読むと、とても同じ作者の作品とは思えないことでしょう。