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浸透するバリューの策定方法

こんにちは、Spir(スピア)の代表をしています大山です。

前回、前々回のnoteでは、ミッション・ビジョン・バリューの意味と考え方僕が「創造性を解放する」というミッションにかける理由というタイトルでミッション・ビジョン・バリューとはどういうもので、どう考えるべきかということと、具体的にミッションをどうやって定めたかについてご紹介させていただきました。

今回は、Spirがバリューをどのように決めたのかという事例を交えつつ、僕がバリュー策定で大事だと考えるポイントをご紹介させていただきたいと思います。

「理想」のバリューは浸透しない

前々回のnoteに記載した通り、Spirにおいて定義するバリューは「ビジョンを実現する方法に対する価値観」です。山登りに例えるならば登り方の価値観であり、決めるならばボトムアップ・アプローチが良いと考えています。

チームとしてどういう山の登り方をするかという価値観がバリュー(最短ルートを目指すのか、最難関ルートを目指すのか、景色を楽しむルートを目指すのか)
バリューは、登り方の価値観なので、山登りのパーティー全体が腹落ちして納得し、共感していることが望ましいと考えます。山を登っている最中に経験する多くのことに影響を受けて、価値観は変わることもあるはずなので、折に触れて見直し、ボトムアップ的なアプローチでパーティー全体で対話をし、再定義していく必要のあるものだと考えています。

では、自分たちの価値観はどのように設定していくべきでしょうか?

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僕の経営に対する考え方は前職のユーザベースの創業者の思想に大きく影響を受けているのですが、ある時、創業者の1人である新野さんにバリューについて色々とお話を伺った際に、「バリューを決めるときに理想の姿じゃなくて、今の自分達が大事にしてきて実践できていることを言語化していったことがよかった。」と仰っていたのがとても印象に残っています。
※ 最近公開されたユーザベースのオウンドメディアでの新野さんと経営学者の宇田川元一さんの対談内容でも詳しく言及されています。

新野:
「完璧な組織じゃないけど、ここいいよね」という特徴を、できるだけ正確に、外からも魅力に思ってもらえるように言葉にしようとしたのが始まりでした。自分たちの中にある要素で、他人から尊敬される部分があれば、自分たちを愛せる要素になると思ったんです。

バリューは全員が腹落ちして納得していることが重要であると僕は考えているので、設定したバリューがメンバー全員に浸透することは必要条件です。時間にルーズな仲間から、遅刻するなよと言われても納得感がないように、バリューを浸透させるために色んな場面で仲間にバリューの徹底を要請しても、自分自身が守れていないと説得力がないので浸透することは無いです。

自分たちがこれまで生きてきた中で、判断に悩み、それでも下してきた決断の場面で大事にしてきたことこそが自分たちの等身大の価値観となります。地に足のついた自分たちの中にある要素を抽出することが重要だと僕は考えます。

自分たちの価値観の共通項を探る

自分たちの価値観を整理する方法は色々とあると思いますが、参考までにSpirでバリューを策定するために行った方法をご紹介させていただきます。

バリュー策定にあたって、Spirでは3人の創業メンバー全員が集まり丸一日かけて議論をしました。午前のセッションとして、まずは改めて相互理解を深めようということで、モチベーショングラフを使いながら各自がどんな出来事を経験してきたかとモチベーションの変遷をシェアし、その後に「ジョハリの窓」という心理学モデルを活用して自己認識と他のメンバーの認識のギャップを埋めていきました。

スタートアップの創業メンバーはお互いによく知っていると思いがちですが、意外と認識ギャップがあることを再確認することが出来ますし、価値観を引き出すためにも心理的安全性を担保できるように事前のこのようなワークショップなどは有効だと思っています。
※ カオナビさんがワークショップの方法を紹介されてます。

そして午後のセッションで、自分たちの価値観の共通項を整理しました。具体的には、これまで自分たちの価値観が問われたと感じる出来事をポストイットで書き出し(黄色)、それを見ながら、実際に自分はどういう価値観で行動してきたのかということを整理していきました(青色)。その中から全員に共通している要素は何なのかグルーピングし、それを表現するキーワードを抽出しました(ピンク)。

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▲ ワークショップのポストイット(途中経過)

我々の場合は、添付した写真のように5-6つ程度の構成要素がありそうだねということが見えてきました。

自分たちの価値観を各ステークホルダー向けに整理する

メンバー間に共通する価値観が色々と出てきたところで、次の段階としてはそれらをどのようにバリューに落とし込むかということを考える必要があります。

以前、スタートアップ向けのLINEのOpenChatでアルのけんすうさんが

バリューは作り方があやふやで浸透しないことが多くて、「なんとなく、社長がこうしたい」と思っているものをただ置くだけだと駄目なので、そこそこロジックを組んだほうがいい派です

と発言されていて、僕は首がもげるほど頷いて賛同しました。バリューは何個に設定すべきか?という議論もみかけますが、バリューの数も含め、何故このようなバリューに定められているのかということを共通認識として持てることが重要だと考えています。

ちなみに、アルでのValueの思考プロセスは株式会社インキュビットの北村さんが整理されたインテグラル理論をベースとした「組織文化を包括的に構造分解できるフレームワーク」を元に決められたそうですが、Spirではこのフレームワークを少し自己流に改変してバリューに落とし込んでいきました。

バリューは「ビジョンを実現する方法に対する価値観」であるため、誰に対する行動で価値観を体現していくかを整理することが重要だと考えます。

Spirではステークホルダーを自分、仲間(組織内)、社会(組織外)の3つに区分し、自分たちで抽出した価値観の構成要素がどのステークホルダーに対するものかという観点で整理しました。
※ インテグラル理論では、「個人↔集団」「内面↔外面」という軸で四象限のマトリックスによる整理をし、集団×外面をミッションとしていますが、Spirではミッションは「会社として社会で実現したいこと」という目標であるため、価値観と区別するためにこのようなフレームワークにしています。

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3つに区分したステークホルダーの関係性において、どのように価値観を設定するかと、Spirで策定したバリューは以下の通りです。

1. 自分に対するスタンス(自分自身)
自分自身がどうありたいかという価値観です。コトに向かって行動を取る場面でどういうスタンスであるかを定めるためのものです。

Think beyond | 創造的にいこう
その考えは固定概念に囚われてはいないか?本質的な問題を見つけ出し、新しい方法で取り組むことで生まれるイノベーションはきっと楽しい。ステレオタイプを排除して個別に向き合うことがその近道である。

2. 組織に対するスタンス(自分と仲間)
同じ組織に属する仲間に対してどうありたいかという価値観です。組織として仲間とチームワークする際にどういうスタンスであるかを定めるためのものです。

Open dialogue | 対話を諦めない
多様な視点を組み合わせることが想像以上の力をもたらしてくれる。その力を引き出すために、私達は仲間を尊重し、オープンにコミュニケーションすることを約束する。どんな時でも同じ目的に向けて対話することが新しい解決策にきっと繋がっている。

3. 社会に対するスタンス(自分・仲間と社会)
組織として自分や仲間が社会に対してどうありたいかという価値観です。Spirという組織として社会(ユーザー、取引先、株主などの社外の関係者)にどういう行動を約束するかを定めるためのものです。

Be accountable | 常に胸を張ろう
私達は聖人君主ではないし、悩む場面や失敗はきっと多いだろう。しかし、後ろめたい気持ちは全てを台無しにする。誰に対しても誠実であり、いつでも申し開きできる行動を選ぼう。将来、振り返っても大切な人に誇れる仕事をしよう。

このようにそれぞれのバリュー(価値観)は、誰に対する行動において問われるものか明確にしておけば、折に触れて自分たちはバリューを守れているのかということも振り返りやすくなるはずです。

バリューを口にする仕掛けで浸透を推進する

改めてバリューを見直すまでは、策定されたバリューを組織内外で浸透させることが大事になります。どのように浸透させるかは、正解のないものだと思いますが、バリューを本にするとか、Slackのスタンプを作るとか、色んな打ち手を見聞きしてきましたし、実際に自分たちで実践したこともありますが、これまでの経験上、最も力強くバリュー浸透を推進したと感じているのは、採用活動などを通じてメンバーの一人一人が自社のバリューを説明することでした。

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採用活動において、バリューの話をすることはカルチャーフィットを見極めるためにも重要なことなので、必然的にその話題になるのですが、自分自身が実際に説明のために内容を説明し、それに対して質問された際に具体例を交えて回答することになります。これは、学習においてインプットだけでなくアウトプットまで行うと習得効果が高いことと同様の効果があるということに加えて、言霊ではないですが、実際に口にしてバリューを説明するとどんどん自分ごととして捉えることが出来るようになります。

バリューの浸透に悩まれている方は、是非メンバーを採用活動に巻き込み、カジュアル面談の段階から自社のバリューがどういうものかを発信するということをお試ししてみて下さい。

まとめ

かなり長くなってしまいましたが、改めて整理するとポイントは以下の4点です。

1. バリューは理想像ではなく、自分たちが実践してきた価値観を言語化する
2. 自分たちの価値観の共通項を抽出する
3. 抽出した共通項としての価値観を、各ステークホルダー向けに整理する
4. 策定したバリューを浸透させるために一人一人の発信の場を作る

ミッション・ビジョン・バリューのあり方も答えはないものだと思いますが、これから検討しようとされていたり、見直そうとされている方の参考になれば嬉しいです。


Spirでは現在、創業期メンバーとしてエンジニア・デザイナーを絶賛募集しています。これまでご紹介してきたSpirのミッション・ビジョン・バリューに少しでも共感いただける部分があれば、まずはカジュアルにお話をさせていただきたいので、お気軽にDMなどでご連絡下さい。
Twitter: @s_oyama
Facebook: Shinsuke Oyama

▼ Spirの採用情報は以下のNotionのページでご覧いただけます


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