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氷川きよしはジャンルもジェンダーも超えて行く、の話。

何と呼べば良いのか。氷川君?氷川さん?きよし君?きーちゃん?……慣れていない(普段はフルネーム呼び捨て)ので、氷川さんで。
最近の「歌手・氷川きよし」は演歌という枠に収まり切らなくなっていますね。2月4日の『うたコン』を見て、それを改めて実感しました。

ボヘミアン・ラプソディ日本語版

『うたコン』でクイーンの歌を日本語で歌う、と知った時には正直なところ「この前、島津亜矢とデーモン閣下がメドレー歌ってたのに。しかも英語で。歌詞だってどんな風に訳されてるか……」と思ってあまり期待していなかったんです。

しかし、氷川さんは予想を軽々と超えて来ました。
その歌唱力で迫力満点に歌い上げ、歌に込められた生死と哀しみと寂しさを表現する姿はクイーンのファンも納得せざるを得ないものだと思います。
訳詞も秀逸でした。マイルドな表現にするのでは?と思った箇所もストレートに訳しているのは、本当に思い切っていてすごかった。

これは元々コンサートで歌っていたそうなのですが、テレビで聴けて良かったです。

演歌は古いジェンダーの世界

氷川さんが『箱根八里の半次郎』で演歌歌手デビューしたのは、20年前。演歌を歌い始めたのは高校時代、部活がきっかけだそうです。
彼自身はロックやポップスも好きだと言う事で、音楽番組で歌ったりしています。

そんな青年にとって、演歌の世界はどのように見えたのでしょうか。

演歌は昔の曲を歌い継ぎつつ新しい曲を発表してはいるのですが、これ程古いジェンダー感覚に縛られた世界もないと私は感じています。
男は男らしく、女は女らしく。
女性の私にはやはり女性の描かれ方が気になるのです。振られれば捨てないでと男の胸にすがり小指を噛み、男の面影を追って冬の北国へ旅に行き、贈る予定もないセーターを編み、今にも日本海へ身を投げそうな一途でか弱い女。

今時、こんな女性いますか?

一方の男性の描かれ方も、強くたくましく不器用な男一辺倒。愛を伝えられず別れた女にお前が最後の女と言い、妻になれば俺を信じてついて来いと三歩下がらせ、好きだとか愛してるとは口に出さなくてもわかるだろうと歌う。

こんな男性も、今時いるのでしょうか?

演歌も恋愛の歌だけではありませんが、親子愛や故郷を懐かしむ曲もどこか古いのです。子は親を愛するもの、人は故郷(と言うか日本)を愛するものと言う共通認識が透けて見えるからでしょうか。

ジェンダーもジャンルも関係ない

そんな世界で生きてきた氷川さんは、どこか息苦しさを感じていたのかも知れません。私より少し歳上なだけの青年(今は年齢的には壮年?)なのですから。

デビューして十年経たない頃でしょうか、『夜もヒッパレ』でB’zの歌を堂々と歌い上げていた姿を見て「演歌歌手なのに!」と驚いたのを思い出します。
そしてLUNA SEAやT.M.Revolutionが好きで修行時代にも良く聴いていたと最近も話していました。

インスタグラムのアカウントには、コンサートで着たというウエディングドレス風の写真を載せていました。驚きましたし、しかも似合っていて綺麗で、正直なところ度肝を抜かれました。

そして、ビジュアル系アーティストのようなメイクやヘアスタイル。タマホームのCMにバンドのボーカルと言う設定で出ていた時は誰かと思いましたが、これがまた似合うんですよね。

昨年の試みの集大成だった紅白。
ドラゴンボールのアニメ主題歌を思い切り歌い上げ、派手で大規模な龍に乗ってヘッドバンキングまで。終盤の歌唱でしたがおかげで目が覚めました。
「全王様もおったまげ」どころじゃないですよ、全視聴者がおったまげましたよ。

21年目の氷川きよしはどうなるのか

デビューからちょうど20周年になる記念日の放送となった、2月2日の『BS日本のうた』でのスペシャルステージ。
氷川さんは演歌のヒット曲ばかりでなく、徳永英明さんの歌やGReeeeNに提供された曲も披露してくれました。それはきっと、21年目からも新しい事に挑戦して行くという決意表明でもあったはずです。

「今時の若い子が股旅ものを歌うのも新鮮なんじゃないか」と言うアイディアがきっかけでデビュー曲を作って貰い、世に出た演歌歌手・氷川きよし。
それから20年、ジャンルもジェンダーも超えた歌手・氷川きよしの新しい試みはまだまだ続くと思います。演歌や歌謡曲に馴染みのない人々も、注目する価値はあるはずです。


※画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りいたしました。ありがとうございました。

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