詩 月夜〜下弦〜
長い夜の帳が下りる
頼りない月明かりが昇る
目に涙をためて
灯りのない狭い箱の中
ものみやぐらは暗闇の中
思い切り伸ばした
手に虚を浮かべて
重ならない人の肌
冷たい地面に触れる肌
手探りで這う夜は哀しい
ひとりと感じる夜は寂しい
視界を覆う夜はキライ
探り探り冷たい指先で
人の温もりをみつけたら
抜け出そうとはしない
ただ時が経つまで
手を重ね合うだけ
存在を分かち合うだけ
顔も見えない闇の中では
それだけでいい
温もりのある人の肌なら
それだけでいい
頼りない月明かりが落ちる頃
何者でもないその人は
目を合わせずに声を出す
「明日の夜は月もない。
今日より暗い夜が来る。」
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