5段階評価の感覚
生徒に5段階評価について質問されました。なかなか鋭い突っ込みでした。そのやり取りについては学校規約で書けないのですが、代わりに、今日は高校の5段階評価について、お話ししましょう。
以前、「評価について」の中で「②成績」として成績の出し方について書いたのですが、学校の内規や学校のレベルが関わるので、それぞれの学校で状況が違います。
結局のところ、評定5というのは、大学側から見れば、その学校でどれぐらい勤勉だったかを示すものに過ぎないのですが、個々人にとってはそういうものではないことは、いくら頑張っても自分の出来の悪かった理系科目を思い出すとよく分かります。
だから生徒たちが、評定5や指定校入試でよく要求される評定平均4.2がどんなものか知りたい、という気持ちも、理解できます。
ただ、厄介なのは、今、評価の変わり目だということです。
高校は昔、相対評価でしたが、一時期、文科省の方針で絶対評価になりました。この件は、「初めての観点別評価」でこれまでの歴史を書いています。
とりあえず、ここには⑴相対評価、⑵絶対評価、⑶観点別評価を説明してみます。
⑴相対評価
相対評価というのは、上から何%が5で、というように、パーセンテージで切っていくものです。
評定5は相対評価では上位5〜10%(学校の内規によって異なります)4は20%ぐらい、3は30〜40%ぐらい、2は20〜30%ぐらいだったでしょうか。1は欠点で単位が取れない範囲なので、救済も含めて、別に規定がありました。
⑵絶対評価
絶対評価は、90点以上が評定5で、85点以上が4、などと決めて行く(点数の区切りは学校による)ものです。
ただ、平常点で調整して平均点を 60±10ぐらいにしても、近年はなかなか正規分布にならないので、学校によっては5の乱発(小学校中学校にこういう噂がありました)か、ないしは5が出にくい(高校は大体こちら)か、という問題が起こりました。
もちろん補正はされたと思います。
⑶観点別評価
観点別評価は、高校では、最終的に三観点のミックスで評定が付くのですが、観点①が知識技能、観点②が思考判断表現、①②は考査点で付きます。
観点③は学習に対する態度をABCで付けるのですが、後で三観点で合わせて5段階にするために、元の点は百点法または5段階です。
で、この三観点を、最終的に高校内では相対評価にせよ、という話です。2023年度はまだ2年目で手探り状態です。
ところが、小学校では観点別は絶対評価との文科省の通知があるとのことです。小学校では4観点だそうですし、成績処理だけで大変です。あまり上手くいっているようには見えません。
★これまでの評価と成績分布
これまでの経験では、⑴の相対評価にしても、⑵の絶対評価にしても、元の成績が正規分布なら(あくまでも正規分布ならの条件つきならば)あまり大きな問題はありませんでした。
けれども、今、正規分布をしていません。以前は経済的な問題から、今はコロナ禍やゲーム等による学習意欲低下の問題から、同じ学校の中で二極化しています。
同じクラスでも上位集団と下位集団に分かれているため、試験問題の難易度を上げにくいので、上位集団の中で差が付きにくく、いつでも下剋上、の状態なのです。
★教員側から見た5段階評価
指定校推薦は、評定平均で縛られ、4.2以上、3.8以上などという条件がついていました。
評定平均は、個人が取った5段階の成績を全部足し、科目数で割って平均します。
入試や就職採用試験の調査書には三年間の直近の考査までの成績を載せていました。
このため、高校三年生の担任は、①一学期末まで、②二学期中間まで、③二学期期末まで、④最終、の合計4回の評定平均を、成績が出たら、その都度、出していました。クラスの生徒全員分を算出する場合と、必要な人にだけ算出する場合がありました。
不思議なことですが教員側から見ると、評定平均4.2は、オール5ではないものの、それに限りなく近い感覚があります。
何故かというと、5や4のつく点数幅が小さいため、何かの拍子に5になったり4になったりするので、狙ったように4ばかりという生徒が稀なことや、逆に3がいくつか混じると、なかなか4.2にはならないからです。
3はボリュームゾーンで、なかなか脱出しません。
指定校で要求される評定平均3.8は、当然ながら3ばかりでは付かないので、4や5をいくつか取っている、それなりの優等生です。
多様化のためにさまざまなレベルの学校から真面目な生徒が欲しい大学は4.2を要求してきますが、進学トップ校では4.2あれば、東大京大を目指しますので、この指定校評平均4.2は中間校が狙います。
一部の大学や看護専門学校の指定校推薦で3.8が多かった、と記憶しています。
★今回の振り返り
生徒からの質問で、実際に計算してみて、4.2だったら、4がいくつで5がいくつ、と算出してみたら、意外と5が少なくても4.2になることが分かりました(総科目数を仮の数字で考えたので、ここには挙げませんでした)。
しかし、何故、担任として持っていた感覚とこんなに違うのか、考えてみて、成績分布の問題に行き当たりました。「いつも4」という人はあまりいない、これは実感です。
つまり、教員は、成績上位層について、4か5をうろうろしているか、5を取り続けるか、という人々を見続けているわけです。
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