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エジプト考古学者 河江肖剰先生 特別講演


講演の概要

2024年8月2日(かでる2.7)にて
主催:札幌市清田倫理法人会
今回、札幌市清田倫理法人会2周年記念の特別講演として河江肖剰さんが講師となり講演されました。

河江肖剰先生のプロフィール


研究者詳細 - 河江 肖剰 (nagoya-u.ac.jp)

古代エジプトのピラミッドの研究調査を行っています。2004年から2012年まで米国古代エジプト調査協会(Ancient Egypt Research Associates, Inc、以下AERA.)のメンバーとして、ギザのピラミッド時代の都市遺構であるヘイト・エル=グラブ遺跡(通称『ピラミッド・タウン』)の発掘調査に従事。2005年から、多国籍分野横断プロジェクトとして、AERA、エジプト考古省、チェコ・エジプト学研究所(Czech Institute of Egyptology)などと、メンフィス地区のピラミッドを中心とした巨石建造物の3D計測調査を推進。これまでギザの三大ピラミッドとスフィンクスならびにケントカウエス女王墓、エジプト最古のピラミッドであるサッカラのネチェリケト王の階段ピラミッド、アブシールの第5王朝時代のピラミッド群の3D計測調査を完遂。アウトリーチ活動としてTBS『世界ふしぎ発見』、NHKスペシャル、日本テレビ『世界一受けたい授業』などメディアにも多数出演し、エジプト文明について広め、YouTube「河江肖剰の古代エジプト」の登録者数は27万人(2024年4月)。

名古屋大学HPより

研究と調査の合間にテレビ番組『世界ふしぎ発見』にも20回くらいは出演されていたとのこと。見たことあったような気も・・・。そしてYouTubeが面白い!映像もカッコイイ!
上記のプロフィールには書いていませんが、ナショナルジオグラフィックのエマージングエクスプローラー(研究員のようなものだそうです)にも選出されているそうです。


お話もとても上手で聞きやすく興味惹かれるお話ばかりでした。
研究者として調査した確かな記録を積み上げてわかってきた貴重で専門的なお話。
けれどほぼ何も知識のない私にもとてもわかりやすかったです。

考古学者というと「何かすごいものを発見したのですか?」と聞かれることが多いそうですが「ものを見つけることが仕事ではなく大事にしているのは記録」と冒頭にお話されたことに研究者としての真摯な姿勢が感じた。
 ピラミッドタウンのお話の時も「記録、観察、観測」という言葉をおっしゃっていました。テレビ出演なども多く華やかな雰囲気もお持ちでしたが、本当に気の遠くなるような地道な調査をコツコツとされていることを感じました。

以下は私がメモしたことですので、講演者の意図と違う受け取りをしている場合があります。また私はエジプトも考古学も知識がないので間違いがある場合があります(調べられる範囲で調べて書いていますが)

ピラミッド研究最前線

来月からまたエジプトに調査に向かうという河江先生。現在はプロフィールにもあったように2003年~2009年にかけて発見された『ピラミッドタウン』の調査を行っているそうです。
ピラミッドの建造については以前謎が多いそうですが、ナイル川の東側から通って作っていたという以前の説が、ピラミッドタウンの発見により覆されたそうです。
2013年に最古のパピルスに、メレルという人が書いたギザのピラミッド建造時の日誌も発見されたそう。
そのようなものの解読やピラミッドタウンの遺跡から当時の生活の様子などを調査しているそうです。

ピラミッドは奴隷や季節労働者が建造していたという説もあるそうですが(私のイメージも奴隷がムチで叩かれながら石を運んでいるイメージだった。どこからきたイメージなのか。漫画かな)ピラミッドタウンの遺跡を調査する限り、彼らの生活はとても裕福であったようです。
研究の一環として当時のパンを日清製粉さんのラボで再現して作った時に、とても高カロリーであったこともわかったそうです。
牧場の跡もあり動物の骨もたくさん発見されたそう。レバノンからワインやオイルを輸入していた記録もあるとのことで、奴隷とはかけ離れたとても豊かな暮らしを想像できました。
現在で云えば東京やN.Yくらいの世界の中心の都市であり、2~3万人が建造に従事していたとのこと。

ピラミッドタウンは街の中心に長屋のようなものがあり、一般人の小さな家もたくさんあり、穀物庫も10個もあったそうです。現在は部屋が27個もある大邸宅を調査しているとのこと。サッカー場が上にあったのでなかなか発掘が進まなかったそうです。

古代エジプト人の正義・倫理観

倫理法人会主催とのことで、古代エジプト人の正義や倫理観について理解することにつながる「アマト」という概念を説明されました。
「アマト」とはなんとも翻訳がし難い言葉ではあるが「調和」「正義」「真理」というような意味であるとのこと。
ファラオ(王)の役目は「アマト」を維持すること。
クフ王の父であるスネフェルは「ネプアマト」(アマトの王)と呼ばれていたそうです。
王として相応しい人はアマトがある人、世の中を「アマト」がある状態で統治できる人という認識があったようです。

ピラミッドの計測について

ピラミッドの計測でも大きな成果を出されている河江先生。最近はドローンでの調査が可能になり調査も大きな転換期を迎えているそうです。
計測が許されない時代もあったそうですが「アラブの春」の混乱期に許可が降りるようになったそうです。当時の混乱は現地でも急に携帯やインターネットが使えなくなったり停電になったりと大変だったそうです。

『世界ふしぎ発見』のクルーがクフ王のピラミッドの北東の角に登る許可を得て、河江さんが上った時の動画を見せていただきました。
そしてこちらにその時のニュースをみつけました。やはり特例だったようです。

『世界ふしぎ発見!』番組史上初ピラミッド登頂 エジプト政府が特例許可 | ORICON NEWS

スクショです

とんでもない高い場所にみなさん命綱もつけずに上っていました(遺跡を傷つけたりできないので)今ならコンプライアンスで少なくともテレビでは許されないかも。危険すぎる。ミステリーハンターの竹内さんも命がけ。
でもテレビの時だけではなく、こうやって危険と背中合わせで調査をされてきたのだろうと思いました。

心に残った場面

講演中、河江さんが1枚の写真を見せてくれました。
クフ王のピラミッドとカフラ王のピラミッドの間に、スフィンクス、そして太陽がちょうど真ん中に沈んでいく写真です。
夏至の時だけに見ることのできる光景だそうです。もちろん古代エジプト人は計算して建造しているとのこと。暦も把握し、精密な計算や建築もこなすとても高い文化を持ってたことを1枚の写真からもあらためて感じました。
似たような写真がないかな…と検索しましたが見つけられませんでした。

とにかく時間いっぱい最後までお話いただきとても楽しかったです。
1992年に初めてエジプトにわたり、16年間住んでいたという河江先生。
とても話題も豊富です。YouTubeもコツコツ見ていこうと思いました。

ちなみにピラミッドの中に入れるのは1日300人までと決まっているそうです(保護のため)なのでエジプトにピラミッドを見に行く方はご予約を(レストランに行くみたいに軽く書きましたが)
私はきっと一生行けないと思う。見てみたいけど体力に既に自信がない。治安も一時はとても心配でしたが今は落ち着いているようです。
ピラミッド見てきた方はぜひお話聞かせてくださいね。

最後に

今回企画してくださった札幌清田倫理法人会の田村会長をはじめみなさまありがとうございました。とても楽しく知的好奇心が刺激される時間となりました。








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