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恋するけんかは、運命の赤い糸のせい


くたりと天井を見あげる。いつもは居心地のよいこの場所がとても苦い。


あたま、いたいなぁ。


保冷剤をくるくるまいたタオルをあたまに当てる。


おおきな声をだしてしまうと、どうしてもあたまが痛くなってしまう。いつもが小さな声だから、身体がびっくりしてしまうんだろうな。


圧迫されるようなあたまのズキズキと、眠たさと、だるさ。


これは、心の痛みでもあるんだろうな。わたしとぶつけてしまった彼の。
しんどいながらも、ほんの1時間前のことを思いかえした。


感情的になって、どんどんおおきくなっていった声。伝えたいことが伝わらない。もどかしさから、早口になって、余計にことばにつまってしまってた。


頭ではわかっていたのに、吹き出してしまった想いの勢いは、なかやかおさまってくれなかった。
悲しそうな顔の彼を一方的に責めてしまった。


わたしもつらかったの。


それを伝えたかったのだけど、本音はちがう。


さびしかった。そばにいたかった。
もっと、もっと、ふたりで笑いあう時間がほしかっただけなのに。どうしてこんなにこじれてしまったんだろう。

目のふちにたまった涙がながれるのをかんじながら、目をつむった。



大人になるにつれて、おおきな声をだして、ケンカしなくなった。そうしなくても、和解する方法があることをしったから。


ガマンしたらいい。
目をつぶっていれば、いい。
笑顔でさえいたら、いい。


本当に大切な人にはしちゃいけないんだって。やっとわかった。


向き合うために、相手との距離をちぢめていく。知らないこと、わからないこと、たくさんあって、つまづいていく。


どちらかがつまづいたら、手をさしのべられるけど。ふたりがコツンとぶっかってしまうことだってある。


それが、ケンカの正体。
悪いことじゃないんだよね。

運命のふたりは、赤い糸で結ばれる。
結んでいるからこそ、結び目につまづいて、ぶつかることもあるんだよ。

お休みエンドロールのメッセージが心の中でひびく。悲しみのどん底にいた昨日にもらったメッセージがいまになって心に届いた。


ねぇ、もういちど、やりなおせるのなら、今度はちゃんと、あなたと。



「だいじょうぶかぁ。」


ガサガサとビニール袋をぶらさげた彼がそばにいた。そのまま、眠ってしまったらしい。


「つめたくて甘いもん、買ってきたよ。」


トントンとテーブルにおかれる、バニラとチョコミント。わたしのすきなやつ。
おおきなチョコモナカをぱっとだして、半分こして、ひとつをわたしの手ににぎらせる。


「ごめんね。おおきな声だして。」


「いいや、オレもごめん。なかな…」


「仲なおりしたい。ちゃんとね、向き合いたいの。大好きだから。」


いつも彼が先に謝ってしまうからと、あわてて言った言葉の最後に、本音がでてしまった。


彼はどちらにびっくりしたのか分からないけど、目を細めて、あたまに保冷剤をあてる。


「はい、ちょっとかじって。」


あまいバニラアイスとチョコレート。
彼のすきなおおきなチョコモナカは、仲直りの味がした。


いつも読んでくださり、ありがとうございます♡