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【特撮】『戦隊』はなぜ大人になって語られないのか?(前編)

◾️はじめに

1975年(昭和50年)に放送開始した『秘密戦隊ゴレンジャー』を皮切りに、2023年現在も継続中のスーパー戦隊シリーズ。
昭和40年代以降に幼少期を過ごしたキッズたちなら一度は通った道のはずだ。

だが同じ特撮の代表的なシリーズである『仮面ライダー』、『ウルトラマン』に比べて、その知名度の割に大人が語っている機会が少ないように思う。
その要因について考察します。


◾️『ヒーロー』 としての記号

まず戦隊の世間一般のイメージから考察する。
『戦隊』の特徴だが、大きなポイントかつ強みはなんと言ってもそのわかりやすさにある。

複数のメンバーが異なるカラーリングのコスチュームを纏って『〇〇戦隊』や『〇〇ジャー』を名乗れば、それだけでコンセプトに基づいた集団であることがわかるのだから。

見よ!ゴレンジャー!

そしてそれはパロディのハードルの低さにもつながる。
営利、非営利問わず、コントや漫画などでのコメディ作品、ご当地紹介の広報、企業の宣伝で誰もが一度は目にしたことがあると思う。
『仮面ライダー』たらしめる要素の『バイク』や『ウルトラマン』の『巨大化』ではこうはいかない。
真似しようと思ってもなかなかできないからだ。

しかしそのわかりやすさ故に、陳腐な印象がつきまとっているように思う。
要するに単純、かつ真剣にみるモノではないというイメージだ。

ご当地戦隊

◾️『戦隊』 のイメージはいつ固まったのか

1作目『秘密戦隊ゴレンジャー』を基本のフォーマットとしている戦隊シリーズだが、『戦隊』の呼称については4作目の『電子戦隊デンジマン』から復活し、8作目『超電子バイオマン』、10作目『超新星フラッシュマン』を除いて現在まで継続している。

デザイン面では、同じくデンジマン以降の作品で基本デザインを統一するようになっているが、ビジュアルイメージの完成形は1987年放送の11作目『光戦隊マスクマン』だろう。

あまりにも戦隊らしい王道のデザインなので際立った特徴がないとも言えるが、そのスタイリッシュさは歴代でも群を抜いている。
あまり詳しくない人に『戦隊モノの絵を描いてください。』
と言えば高確率でマスクマンっぽい絵になるはずだ。

最新の戦隊といっても通用するデザイン

そして『〇〇レンジャー』の呼称は1989年に放送の13作目『高速戦隊ターボレンジャー』から復活し、こちらは断続的に使用されている。

現在のいわゆる戦隊のイメージというものが完全に固まったのはこの頃ではないだろうか。
『車』というコンセプトを踏まえつつ、初代の流れを汲む名称。
命名の法則が確立され、パロディが一気に普及したきっかけでもある。

◾️長寿シリーズ故のデメリット

戦隊のイメージが固まると同時に、毎年同じことをやっているシリーズ、としてのマンネリイメージも固まってしまっていた。

幼少期に一度観ていれば充分、『ゴレンジャー』で育った世代が大人になる頃でもあった。
こうなると年齢差が5歳もあれば視聴作品がかぶらない。

そのために同一作品でのエピソードトークも捗らない環境ができてしまったのではないか。
現行作が放送中のシリーズゆえ、『仮面ライダー』、『ウルトラマン』と比較して再放送の機会もそれほど多くなく、気軽にDVDや配信で視聴できるようになったのは2000年代からだ。

90年代まではこの手の傑作選がメインだった

◾️過去作ヒーローの客演

シリーズ継続視聴が捗らなかった理由がもうひとつある。
昭和における『仮面ライダー』、『ウルトラマン』の特徴といえば、シリーズであることを活かした過去作出演ヒーローの客演、すなわちゲスト出演だ。

最大のメリットはなんといっても既に人気を博しているヒーローが出演していることで、過去作の視聴者を取り込むきっかけができることだ。

後輩のピンチにはすぐ駆けつける先輩たち

現場では客演=負け、現行作の人気が出ない故のテコ入れという意識もあったようだが、当の視聴者である子供からすれば大好きだったヒーローにまた会えるのはたまらない展開だ。
橋渡し的に前作からシームレスに現行作に視聴移行できるというメリットもある。

ところが戦隊シリーズはつい近年までこれらの演出はほとんどなかった。
これは5人ものレギュラー出演者を再度集結させることが難しい等、キャスティング面での事情が大きいだろうが、結果として最終回には出演者と同時に子供たちも『卒業』してしまうのだった。

現在では恒例となったバトンタッチ共演

◾️『仮面ライダー』 『ウルトラマン』 とは何が違うのか

次は作品の根幹となる演出について考察する。
基本的に単独主人公をとりまく物語の上記シリーズと違い、チームとしての活動を描くことに主軸を置いている戦隊シリーズは、とにかくやることが多い。

等身大戦闘と巨大ロボ戦、そして変身!ロボの変形!合体!必殺技!といったシークエンスを20分程度の本編中にしなければならない。
そのためチーム各個人の描写がどうしても希薄になってしまう。

伝統の合体シーン

個人に焦点を当てたスポットライト回もあるにはあるが、年間で数回程度となると、視聴者が大人になった時に語れるほどのドラマが印象に残らなかったのではないだろうか。

生き様、人間性が(当時としては)細かく描かれた本郷猛やハヤタ隊員と比較しても、役名の知名度が低いと感じる。

変身前も忘れられない姿

◾️中編へ

前編では、シリーズの展開、演出面から『戦隊』の視聴機会の少なさ、印象に残りにくい要因といったことを挙げてきました。
中編では設定、世界観から考察しています。

つづく

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